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魔女恋  作者: 葛葉
11/14

10.現在08

よろしくお願いします。

あと2話くらいで終わる予定です。

 


 用意されたやたらラブリーな寝巻きに着替えて、ベッドに入る。

 ローブや脱いだ元々の服は洗ってくれているところで、明日には返してくれるそうだ。

 もう何も気にしない。うん。

 今度はちゃんと、あぁ眠いなぁ、と思う間くらいはあった。




 何だか寝心地が悪い。

 夢うつつで良いポジションを探すが、動きが制限されてイライラする。

 そうしているうちに意識が浮上してきて、誰かに乗り掛かられていることに気づいた。

 脚の間に胴を挟まされ、体重はさほどかけられていないが上半身は密着し、首筋に顔を埋められている。


 ザッと冷水を浴びさせられたように背筋が凍り、心臓が爆音をたて始めた。

 上に乗る男もその気配に、私が起きた事に気付いたらしい。


「アナイス」


「え?アレク?」


「俺以外の誰だと思うの?」


 ちょっとムッとしたように言われるが……いやいやいや、誰かとか言う前に普通に怖いわ。

 また彼は私の首筋に顔を埋め、唇で肌を辿り始めた。


「ちょっとアレク…何?待って。」


 身を捩りながら声をかける。

 だが彼は私の抵抗をものともしない。


「アナイス、往生際が悪いよ。もう待つのは無理だ。いいかげん俺の物になって。」


 感じる違和感。

『もう』?『いいかげん』?


「……え?なに?記憶、戻って?」


「最初から無くしてないし。」


「なっ!?」


「アナイスさ、どんなにアピールしても、外堀埋めても、既成事実作っても、恋人同士の空気から逃げようとするんだもん。なら囲い込むしかないよね。」


「……は?」


 いつだ?全く覚えがない。

 アレクは生温い笑みを浮かべて滔々と語った。

 曰く、聞くも涙、語るも涙の物語。


 まずは贈り物。元々ちょっとした物は贈っていたが、本気の恋人に贈るようなアクセサリーも贈った。

 しかし反応があまりなかったため、生活に食い込むべく色々な物を贈り、塩・小麦などの重いものを差し入れるようにした。

 男手を重宝しそうな件は進んで手を出した。

 その後お薬の用がなくても足しげく通うようになり、その度に肉や魚などの生鮮食品も小まめに持ち込み、生活レベルを引き上げた。

 目指すはアレクなしの生活へは戻れない状態にする事。


 既成事実を作ったのは言わずもがな。

 なのに翌朝すっ転んでちょっと直前のことが思い出せないでいると他人行儀に挨拶される。追い討ちをかけてなかったことにされる。

(タライを呪いながら、真意を問いただすべく記憶喪失設定に乗っかる。)


 その後吊り橋効果を狙って、2人で困難を乗り越えるべく獣や魔獣避けの(まじな)いアイテム全外しの森越え。

 全裸で密着ドッキドキイベントのため敢えての行水。

 2人の関係性に会話の方向性を向けてみるも、『恋人じゃない』ときっぱりはっきり。

(婚約者のことを知られているとは思わなかったが、でも一度は受け入れてくれたのだし、何か別の理由があるのでは?と眠れない夜に考える。というかここで熟睡されるとか普通にショックを受ける。)


 ならばと場所を変えて普通の恋人同士のようなやり取りをして楽しんでもらい、再考してもらおうと決行した街中での密着デート。

 …確かに思えば森の中を歩くのと同じように街中も歩いたわ。

 食事中のあーんや耳元囁き、ボディタッチ、ショッピング、乗馬+絶景ポイントデート、夕食も普段と違う雰囲気を演出し……


 全部策略だったと言われるも、全部引っかかってはいるが…そういうんだとは気付かなかった〜


 だが、それでも私は森に帰ることに微塵の揺らぎもなかったため、この夜這いに至った、と。



「本当は魔女とどうこうなる気なんてなかったんだ。このまま恋人とか夫婦になれなくても、一番側で、一番一緒にいれたらって。」


 アレクがいつもの強者のオーラを全く感じさせない、伏し目がちの切なそうな顔で続ける。


「でもアナイスはこのまま俺のお薬係の時期が終わって会えなくなっても、次の係と普通に会話して、『ああ、そんなヤツもいたな』って思い出すか出さないかくらいでこれからを生きていくんだろう?

 そんなの嫌だ。

 時の流れが違う俺にいつか見切りをつける時が来たとしても、それまででいいからアナイスの時間が欲しい。」


 再び合わせられたアレクの瞳の奥に、確かに温度の高い炎が燃えているのが見える。その炎の美しさ、激しさに感動しながら私は答える。


「いいよ。あげる。私の時間でもなんでも、好きなだけ。

 でも1つ訂正させてほしいんだけど…私、もう魔女じゃなくなるんだ。だから、これから歳をとるよ。」


 彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。



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