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魔女恋  作者: 葛葉
10/14

09.現在07

お読みいただきありがとうございます。

お待ち頂いていた方お待たせしました!

…あまり進んでいないような……?

いえいえ、気のせいです!(キッパリ)

 


「馬?」


「そうだね。」


「何で馬?」


「乗って行ったら楽だろう?」


「何でたかが数分離れてただけで馬!?」


「『俺の知り合い』という人に会い、今から城に行くと話したら『自分は街ブラついて帰るから』と貸してくれた。」


 後で餌をやって騎士団の馬房に返しとけばいいらしいと言うこの男は、こっちの衝撃を物ともしない。


「馬乗れない。」


「2人乗りすればいい。」


 片言しか話せなくなった私を魔法のようにするすると馬に押し上げて乗せ、アレクは後ろに乗った。


「アナイスは初めてだろう?ゆっくり行こう。」


 そう言ってポクポクと坂道を登って行った。


 慣れてしまえば馬上は快適だった。

 目線が高くなり、景色が良く見える。

 私は周囲に注意する必要もないから、登るにつれて街の見え方が変わっていくのを楽しみながら見ていた。


 アレクはここまで来るともはや会うのは知り合いしかいないので、適当に挨拶と一言二言会話を交わしていた。

 器用なヤツめ。


 城門前まで来ると一度馬を止めて、馬首を街の方へと向けてくれた。

 平野や関所、を越えて魔女の森。左手には隣国の平野の広がりが見えた。

 流石に王都は目を眇めつしても見えなかった。


 城内に入っても、アレクは適当に声をかけてきた人に馬を預け、

「お帰りをお待ちしてました!」と駆け寄ってきた人に「俺の大切な方だ。おもてなしをしたいが、まずは休んで頂いてくれ。」とか私を預け、

「また後で。」と去って行った。


 本当に如才ない対応をしている。誰も彼に記憶がないなんて思いもしないだろう。

 ……なんか私が要らなかった感がヒシヒシする。



 まずは客室に案内され、先に休むか湯浴みにするかと聞かれた。

 落ち着くと思った以上に疲れが出て、顔と手足を濡れたタオルで拭いて、簡単なワンピースに着替えさせてもらいベッドに横になった。


 するとすぐに肩を揺らされ、起こされる。

 何かあったのかと思えば、窓から夕日が差し込んでいた。

 疲れすぎて自分が寝たことすら知覚できなかった…!

 かえって疲労感を感じるようになった身体に鞭を打ち入浴。

 シンプルだが明らかにドレスな品物を着付けられそうになって、抵抗する……が、やっぱり着付けられた。

 フリーサイズの既製品で、首元のリボンと胸下から腰まで何回も胴に巻ける紐である程度の大きさを調整できるドレスで誰のでもないとのこと。

 婚約者のじゃなくて安心し、私の為だけに用意されたことにはいたたまれなさを感じる。



 そうして連れて行かれた食堂は、ザ・晩餐会みたいな長テーブルや燭台や花が飾られたホールだった。

 かろうじてそのテーブルの端と端ではなく、角のところに固まって席が用意されていたことは良かった。


 いや、もう一つ。

 アレクが正装(多分)をしている!

 いつもの旅装でも格好良さは疑いようがないが、この場でキッチリとした服を着て髪も整えていたりすると、もうキラキラしさハンパない。

 眼福です。と、別のところが満たされながらながら食事を頂いた。


 食事も材料が何かわからないほど美味しい。

 え?ホント?ホントにコレ鶏肉?って感じに驚きの連続でした。

 形も食べやすい形で出してくれたみたいで、場所にも雰囲気にも慣れない私でもアレクとの会話も楽しめた。

 庵で交わしていた会話を彷彿とさせる和やかな雰囲気で、彼は記憶をなくしても変わらないんだなぁと思った。



「さっきからじっと見てる。何か?」


「うん、そういう格好初めて見たけど似合うね。」


「アナイスはこの格好の方がいい?」


 うん?それは森を抜けるとき大変そうじゃない?

 そう告げるとアレクはニッッッコリ笑った。



 デザートまで終え、食後のお茶を飲みながら


「今日は急で時間を取れなかったが、明日父に会って欲しい。」


 と言われた。

 また晩餐でとの事で、もう一泊する事が決定してしまったが、もう今更気にすまい。

 今度こそふかふかのベッドを堪能しようと心に決めた。



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