うちゅう人の独り言 いつかの事 3-2
いつかの事 3の続きです、少し、お話として、続かせて頂きます。
物語は、いつも唐突に始まる、色々な思いの詰まった、作者の記憶、伝えたい思いから始まる。
伝えたい事、話したい事が、溢れ出すと、物語が、始まる…… はず。
「わっちもね、この前、地球に帰って来るのに、使ったんだ、【ワースドラゴン】(次元を渡るモノ)、使い勝手がいいのよ」
「アタイも、使わせて貰ったワ、【セキリュウオウ】(黒色の汎用龍)、意外に従順ねアレ」
「ぼくは、【グリュンデル】(草風を司るモノ)が、すき、あの優しそうな目が、印象的です」
「あれ、眼って、有ったか?」
「あったよ、角の生え際に、つぶらな瞳が…… 」
「有っタッケ? ドレだ、あっ、これか」『ぎっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、あっぁぁぁぁ、さっさわるな、見えなくなるだろう』
「セキリュウオウ動くな、良くミセロ、ああ、成るヘソ、眼ダナ此れは」
「わっちの使った龍は、煙のように実態が、無かったから、眼なんて、見てないよ」
「グリュンデルは、時々、色んな処に連れて行って、遊んでくれるから、すき」
『私も、貴方を載せて、運ぶのが、心地よい、何処か行きたい場所は、有るかな』
『儂は、力の根源、此れが、身体で、眼でも在る、全て、見通せる』
三体の龍が、人格を持って、人らしき者たちと、触れ合っている。
◇□ 暑い暑い炎天下のカフェにて □◇
「う~ん、ネタ切れだ、樹さん、やっぱり、ぼく才能ないです」
《カフェ・ろまりあん》のオープンテラスで、頭を抱えながら、ノートパソコンにのめり込んでる、ぼく、一一あっ、ペンネームですってば。
「その姿勢が、既に才能在りきって、思いませんか、一一さん」
向かい側の白木の椅子に座って、ぼくを優しく導いてくれる、飲み仲間であり、つい最近友達に成った、とある本屋の編集員、樹一さん偽名との事、同じ名前のよしみで(本名は、お互いに違う)、同人誌から始めてみましょう、との誘いが有り、軽い気持ちで、書き始めたものの、心が文字に蹂躙そして、侵略され、〔才能が、有りますよ〕との、言葉に翻弄されて、つくづく、言葉の使い方がうまい人だな、勝てないと、思ったんだけど、乗せられて、つい書き始めてしまった。
「本の出版って、普通自分で、持ち込みが、主流ですよねぇ、如何して、樹さんは、ぼくに書かせたいんですか、何となく、待ち構えていた様に思えるのですが、ぼくの考えすぎではないですよね」
既に、氷が解けて、水と珈琲に分離した、アイスコーヒーだった物が入ったグラスを手に持ち、煽る。
樹さん、質問には答えないで、にっこり、あの笑顔に騙されたんだと、思う。
「其の珈琲美味しいですか、替わり頼んでおきましょうか、今度は、ホットにして」
樹さんは、ホット派ですって、このくそ暑い時期にオープンテラスで、ホット珈琲、幾ら天幕があろうとも、暑いものは、暑いのです、気が飛びませんか、見ているぼくの方が、参ってしまいそう。
「い、いや結構です、そこのおにいさん、み、水下さい、暑くて、気が飛ぶぅぅぅ」
ダレて来た、パソコンも熱暴走寸前、画面が、ぶれ始めた。
ふと、涼しくなって、「うん、あり、何処だ此処、病院じゃない、あれ、樹さんは、何所行った」
ぶるっと、身を震わせる、冷たい風が、首元を吹き抜けて、足元に漂う。
風が、白い渦を巻いて、ぼくと同じ背の高さに成る。
《いらっしゃいませ、一一さま》
樹さん、こんな所で、何やっているんですか、それに、その恰好は、何ですか。
樹さんにしか見えないが、白い詰襟の長ランの学生服、おおっ、白い長ランって在ったんだねぇ。
ぼくは、学生時代、長ラン派に居たから、黒が主流だと思っていた。【短ランも流行り始めていました】
《怪訝なお顔の様子、混乱していると思われますが、あまりの暑さにこの地に飛んできたのは、あなた自身の力ですよ》
「えっ、ぼくの力」
驚きを隠せない、力も能力も文才も無い、でも、空想力、アニソン、一人遊びは、天才的…… むなしい。
《地球に帰してあげたいのは、山々なのですが、貴方の後ろの方々が、他の次元も旅させろと、おどしをかけてくるので、そうそうに別次元にお送りいたします、がんばってくださいね》
そう言うと、左手にいつの間にか持っていた聖書の様な物を開いて、右の掌を当て、何やら唱えだした。
「ちょっと、待ってください、異世界転生モノであれば、スキルの一つも頂けないでしょうか」
何も言い返せないでいると、どこかに飛ばされようとしている事が分り、焦って、大声で、頂きものをしたいと願い出たが。
《既に、持っているのに、この上何を欲しいと抜かさりますの》言葉が、変に成っていますよ。
「ぼく、何も持っていませんが、何の事ですか」えええっ、何があると言うの、何処に放り出されるの。
《ですから、後ろの方にスキル等、教えて頂いて下さいと、言っています》
右の掌を閉じて、人差し指で、ぼくの後ろを指す。
「後ろの方って」後ろに振り返ってみた。
あっ、後ろのカタダ、居ましたね、薄っすらとした、影の様な存在が、そこに居た。
消えそうだな、出来れば、此のままでも、話が出来るようにして頂きたいなぁ。
《それ位であれば、干渉させて頂きましょう》右手を聖書の様な物の上で開いて、呪文の様な物を唱え始めた。
で、また、転移、辺りを見渡す、あれ、どこかで見たと言うか、話に出て来たと言うか、あれ?
「そんなトコで、何してるんヤ」ヤンキーぽい声、文字、さっき始めたばかりの物語の登場人物かとか、まさかぁ~ねぇ~。
相槌撃ってくれる人もいない、少し悲しい。
「どうしたんですか、まいごですか、それなら、おねえさん、この子、届けてあげましょうよ、ぼくは、グリュンデルと旅をしています、ちょっとの間でしたら、付き合っても良いですよ」
緑色の龍に乗って居る、緑色の柔らかそうな髪の少年と黒い鱗の龍に乗って居る、赤髪のヤンキーぽい少女、紫色の煙の様な龍に乗って居る、漆黒の長髪で、前髪ぱっんの色白の美少女。
やっぱり、あの物語だ、如何しよう、始めたばかりで、挫折した物語の主人公に在ってしまった。
「わっちの使い龍は、ワースドラゴン、色々な所に行けますのよ」微笑みが、可愛い。
「こんらんしてられますか、ドラゴンに乗せてあげたいけど、皆さんのドラゴンは、一人乗りと言うか、パートナーで無いと乗せられないのですよ」
緑色の髪を揺さぶって、考えてくれている様だ。
『同じ匂いがするぞ、ドラゴンか』『その様ですね、同族のようです』『儂は、人型のドラゴンなんて、見た事も聞いたことも無いぞ』
一様に、ドラゴンたちは、首をかしげて、ぼくを見ている。
【後ろの方々、多分あなた方の事ですよね】ぼくは、後ろの方々に、メッセージを脳内で送る。
後ろの一人が、大きく手を広げた様な感じがしたら、ワースドラゴンが、『これは、我の力の一部か』と、言って、一空間後ろに下がった。
ぼくの背中から、金色と赤色と黒色の鱗で、どの龍よりも大きい翼が、三対生えた。
「すごいな、ホントに人なの」、「新種のリュウか」、「金色の鱗、赤銅色の鱗、漆黒の鱗、きいたことが、ありますえぇ」
『えっ、あねさん、聞いた事有るって、いつの時代の事や』
セキリュウオウが、ワースドラゴンの後ろの黒髪の姫に頭を寄せる。
「【白き平原に現れし、七色の龍、愁いを拭い、目覚めの地へ全てを連れ帰る、初めに金と赤と黒の龍が、目覚める】と、言う、アストラーゼ星系、ここより、八十一京五千百十四兆六千五百七十二億八千九百四十二万三千九百四十二光年、離れた地の言い伝えですぇ」
途方もない距離のどこぞの星系の物語を聞いて、うんと頷けるものは、居ないと思う。
『『その様な話、何処で聞いた』のや』ワースとセキが、突っ込む。
「こんな風に頭を近づけると時々、耳元に聴風として、流れて来るんですぇ」と、ワースドラゴンの頭に寄り添うように耳を近づける。
『私には、その様な力は無い、頭に寄り添っても、無駄だ』緑色の髪が、グリュンデルのあたまにくっ付ける様に寄り添っている。
後ろの人が、何か叫んでるような感じがする。
「やばい、何か、凄い勢いで、こちらに接近していますよ」
ぼくは、口に出して、警戒を発してみる。
ワースが気付いた、『皆、儂の後ろの影に入れ、やり過ごすぞ』
セキ(リュウオウ)とグリュンデルとパートナーたちが、影に入り込む、「あなたもはいりゃ、せんのか」
「たぶん、あれは、ぼくの客だと思いますので、此のまま、待ってみます」
大きな、星の様な存在が、近づいてくる。
【重力振が、酷いなぁ、せっかく作ったのに、また壊れちゃうよ、あれ、なんだ是、作った覚えないよ】
ぼくを突っつく、風の指、【なんだ、何処から入って来た、ここはアタイの箱庭、別の次元から侵入しちゃだめだよ】
うしろの人が、存在に語り掛ける、《@~A、‘@!#~$%&’》【分かった、通りすがりなのね、じゃぁ、直ぐに出てって】
金色の羽が、大きく羽ばたいた、続いて、赤銅色の羽が、真っ直ぐ後ろに伸び、漆黒の羽と共にワースドラゴンたちを包み隠した。
【お帰りは、こちらだよ】赤色の風の指で、押しながら指し示す、始まりの黒い穴(渦)吸い込まれた。
また、転移ですか、何処に流されるやら、異世界は、合わせ鏡の如く、幾らでも連なっております。
次の世界では、探索してみたいなぁ、何て、考えていたら、もう次の世界、光の玉に成って、大地に降りる。
もう少し粘りたいですが、なにぶんにも身体次第ですので、気長めにお付き合いして頂きたいと思います。