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  作者: 梶島
『Fairy Tale』
8/19

虹色×青年

その人は趣味の悪いド派手な虹色のスーツを着ていて、白い肌にさらりと流れる金髪、青い瞳……どう見ても、外国人だった。

外国人は大概大人びて見えるものだからわからないが、年頃はたぶんあたし達とそう変わらない。

暫くこちらを見て目をぱちくりさせていた彼は、やがてぱあっと表情を明るくさせる。

それからよいしょと言わんばかりに身体全てを扉から抜き出して、あたし達の前に立った。

さっきは気付かなかったが、左手に傘を2本ひっかけていて、身長はバクより少し低いくらい。

バクがかなり長身の部類なので、彼も平均よりやや上といったところだろうか。

彼はそわそわしながら、感激するように声をあげた。


「ああ、こんなに広い広い夢の世界の中で、自分以外の精霊に会うのは初めてだよ!」

「……精霊?」


バクがすぐさま聞き返す。

そう言うと彼はちょっとだけ目を丸くして、それからぶんぶんと首を振る。

ここのところずっとバクしか相手にしていなかったので、こうして仕草が大袈裟な人を見ると違和感すらおぼえた。


「おっと、いや、それでは語弊があるね。自分はいい子に楽しい夢を、悪い子につまらない夢をプレゼントするのが仕事なのさ。北欧あたりの精霊がベースらしいから、自分は精霊になったのだと割り切っているんだ」

「……ええと、とりあえず君のやっていることは分かった」


放っておいたら延々と語りだしそうな彼を軽く手で制し、バクはどこかうんざりしたように止めた。

貘になった瞬間に流れ込んだ知識の中にもあったが、『貘』も、もともと中国の伝説上の動物だ。

だからおそらく彼も同じように、元々は人間だったけれど、何らかのきっかけでその『妖精』にされてしまった……ということだろう。


「俺たちは……『貘』。悪夢に入りこんでそれを食べるのが、そうだね、君の言うところの『仕事』かな」


相手が説明してくれたから、それに応じるつもりだったのかもしれない。

バクはあたしたちについてを淡々と彼に伝えた。

すると金髪の彼は不思議そうな顔をして腕を組み、右手は顎を抑えるようにしながら首を軽く傾げる。


「……へぇ、悪夢に入りこむ、か。それはなかなか大変そうだね」

「そーそー。毎回超大変だよ」


当事者であるあたし達以外の誰かからそういう労いの言葉を貰ったことが初めてで、あたしは思わず愚痴るように言葉を零した。

楽しい夢を与える、だなんて。

毎度毎度悪夢に入りこまなければならないあたし達からしたらずっと羨ましい役割だ。

悪夢を食べるなんて地味で辛いだけだし……彼のように明るくて、文字通り夢のある仕事ならどんなによかったか。


「っていうかドハデなナリしてるわりには日本語上手いんだね。何人?」


それに重ねて疑問を投げかけると、彼はからからと笑った。

 

「あはは、自分は両親がドイツ人だけどばりばりの日本育ちだったんだ。といっても、今となっては関係ないことだね。暫く喋っていなかったが日本語を忘れていなくてよかったよ」

「あなたはどれぐらい……その、『精霊』なの? あ、えっと、西暦で」


日本語を忘れそうなほどに誰とも喋らないだなんて……バクの言う名前を忘れたなんていう嘘よりよっぽどひどい。

驚いたあたしは、思わず不躾な質問を飛ばしてしまっていた。

しかし彼に気分を害した様子はなく、うーんと唸りながら首を捻りつつ答えてくれる。


「どうだったかな。確か1980年かそこら、だったと思うけど。もうそれすらも曖昧だよ」

「げ、30年も……!?」


桁が違う。

そもそもあたしやバクが生まれるよりも前の話だ。

30年もずっと一人ぼっちでは、確かに言葉を忘れてしまってもおかしくないかもしれない。

それだけ長い間、この生活をしろと言われたら……あたしだったら、きっと耐えられないよ。

しかし彼はそんなことまるでどうでもいいと言ったように、相変わらずからりとした笑みを浮かべたままで続けた。


「おや、外はもう21世紀なのかい。怖いねぇ。一カ月経ったあたりで日数を数えるのをやめたんだよ。ずっと夜だからしょうがないし」

「それは同感。俺は4年、こっちはつい最近。これに『今の年』を教えてもらうまで、感覚がすっかり麻痺しちゃってて……自分がどれくらい貘だったのかもよくわからなかったよ」


似たような境遇、しかも先輩である存在に会ったせいだろうか。

バクは普段より幾分か饒舌になっていた。

さりげなくあたしのことを『これ』呼ばわりしたことについては黙っておいてやろう。


「そうかそうか。どちらも自分からしたら大差ないね。どれ、ここはひとつ仲良くしようじゃないか」


彼はそう言って肩を竦める。

その朗らかな笑みからは純粋に友好的な関係を築きたい気持ちが伝わってきた。

バクも同じように感じたのか、珍しくふっと笑って、少し首を傾げる。


「……そうだね。俺もまさか、自分達以外にも夢に干渉する存在がいるとは思わなかった」


それはあたしも全くの同感。

てっきり、この夢の世界の中でバクと二人っきりかと思ってたのに。

『仲間』がいると知って舞いあがったあたしは、はやる気持ちを抑えられずに尋ねる。


「ねね、あなたはこの夢の世界……っていうか、あたし達みたいな存在の仕組みについて何か詳しく知ってたりする? 実はあたし達わかんないことだらけで……」


そこまで言いかけたところで、バクにぎろりと睨まれた。

バクはいつも懐疑的で保守的だ。

外の世界の『今』についてだとか、あたしが現実で生きていた頃の話をしようとしても、嫌がるように断る。

もう戻らない世界を知っても意味がない、っていうのと、元々新しいことを知ることがあまり好きじゃないらしい。


その理由としては、いつも『知らないほうが良かった』と後悔するからだとか。

バクが人間だった頃に何かあったことが原因みたい、だけど……。

しかし金髪の彼も苦笑で応じる。


「そうだねぇ。ま、諦めて一生夢の世界で過ごすしかないんじゃないかな」

「そんなこと……ね、あたし達は、特定の条件を満たすと、誰かに『貘』をバトンタッチして人間に戻れるんだけど」


そう言いかけたところで、彼はくくっと声を出して笑った。

それは今までのものと全く違う。

快活でさっぱりした、という印象だった彼が初めて見せる、『嘲り』の表情だった。

それからにいっと口角を上げると、どこか小馬鹿にするように肩をすくめて両手を上げてみせる。


「まさか、ありえないよ。自分たちは意識だけの存在。カラダから切り離された『魂』だけが揺らいで、人々の意識の中に紛れこみ泳いでいるだけなのさ」


少しオーバーなくらいに抑揚をつけて付きつけられた絶望。

反射的に、あたしは切り返す。


「……それって、どういうこと?」

 

聞かなければよかったかもしれない。

これが、バクの言うところの『知らなければよかったこと』なのかもしれない。

触れてはいけないところに、触れようとしてしまったのかもしれない。


だけどあたしは、口を開いていた。

尋ねてしまっていた。


あたしはただ、認めたくなかったのだろう。

だけど彼が続けた言葉は、あたしに与えられた絶望をさらに色濃く改めて塗りつぶしていくようなものだった。


「ユーレイと変わらないんだよ。意識『しか』ないんだ、もう死んだも同じさ。これだけ意識が離れていて、肉体が朽ちていないと思うかい? ……バトンタッチ? おおかた、『次に貘を任せて消滅できる』って程度なんじゃないのかなぁ?」


がつん、と。

なにか堅いもので思いきり頭を殴られたような気すらした。

もちろん誰もそんなことはしていないし、強いて言うなら、彼の言葉があたしの心を強く、ひどく、したたかにぶん殴ったのだ。

目を背け続けてきた可能性と、現実。

それを付きつけられた、衝撃。


「そ、そんな」

「うーん、そうだねえ。自分の憶測を話してもいいかい?」


うろたえるあたしを見ながらそう言って、彼はこちらの返事も待たずに語りだす。

バクの表情は、見えなかった。


「君たち『貘』は悪夢によって苦労するというし、その唯一自分を保つことのできる『意識を守る』ために代替えが早い……んじゃないかい?」

「……なるほどね。辻褄は合う」


どこか感情を忘れてきたような声で、バクは応じた。

あたしはそれが信じられなくて、彼のパーカーを掴んで引っ張って、揺さぶる。


「バクっ! 納得しちゃっていいの!?」

「つまり、俺たちは貘になった瞬間本能的に知るシステム……刷り込まれた知識が既に間違っていて、すべてから騙されていた……」


まるで自己完結をするように、自分の中で渦巻いていた絶望と答え合わせでもするように、バクはぽつぽつと呟いた。

――あたしを無視したまま。


「騙され……って。なんで、バクってそんなんばっかなの。っていうか、そう決まったわけでもないじゃない」

「そうじゃないと決まったわけでもない。なにが本当かなんて誰にもわからないよ、今更」


こうなるとだいたいバクはもうだめだ。

楽観的にものを見るってことが、壊滅的なまでにできない。


それに……一度疑い出すと、止まらない。


「もし、俺たちが既に死んでいるのなら……尚更、貘を『渡し』ちゃいけない」

「そう、偉いね。ならば受け入れるしかない。幸い、君たちは孤独じゃない」


虹色のスーツの彼は、真剣な表情でバクを見てそう言ったあとに、あたしに目をやった。

受け入れろ、と。

言葉と目線の二重でそう訴えている。

あたしはそのもの言わぬ言葉を受け止めることが出来なくて、目を逸らした。


「……だね。正直悪夢は食傷気味だったけど、これが来てから若干マシになった」


しかしバクはそう言って、今度はちらりとあたしを見る。

……あたしが来て、マシになった?

その言葉の意味を尋ねることもできないままで、二人は勝手に会話を進めていく。


「自分達は夢に……いや、世界のシステムに『選ばれた』んだよ。僕のように楽しい夢をもたらすのも、君たちのように悪夢を食べてあげるのも、きっとどちらも必要な存在だ。だから、『選ばれた』」


そんなものは諦めた人による都合のいい解釈だ、としか思えない。

選ばれたからって、それを受け入れる権利はどこにあったんだろう。

だから『選ばれた』んじゃない。『選ばれてしまった』んだ。

そこに拒否権とか、決定権は無かった。


事情を中途半端に聞いて飛び込んだあたしは自業自得でもいい。

だけどバクは違う。

騙されただけなんだから。

そんなの、納得していいわけがない。


「自分だって、最初は嫌だったさ。本能的に理解した、夢のコントロール……何故こうなってしまったのかもわからないまま、夢の世界に取り残されてしまった」


少し眉根を寄せて、金髪の彼はまるで独り言のように語り続ける。

それから、諦めたことを示すように軽く首を振った。


「だけど、受け入れるしかないと思ったんだ。諦めたと言ってもいいかもしれない。楽しい夢の中で笑う子供を見守るのも、悪くないかもしれないと思うようにしたんだ」

「……なるほどね」


それに応じるバク。

二人とも、諦めてしまっている。

30年もずっとこのままだった彼は、確かにもうどうしようもないのかもしれない。

だけど、本当にそれを受け入れて、望まない生き方を続けて――いいの?


今度は、それを口に出す事ができなかった。

二人が勝手に諦めた人間同士の会話をしているところに、何らかの具体的なアイデアもないままむやみに前を向こうとするのは逆効果だと思ったからだ。

前を向ける、はっきりとした理由がなければ……バクは前を向かないだろう。


金髪の彼はさっきまでの真剣な表情から、最初のようなからりとした笑顔に一瞬で戻った。

それから片方の傘をぽんっと開いて、まるで舞台役者の口上のように、歌うような口調で告げる。


「さて、自分はそろそろ仕事に出かけなければ。こうして一度会ったのだから、近場をうろついていればまた会うこともあるだろう。それじゃあね」


手を振りながら、彼は3つ先のチョコレート色のドアを開けてひらりと中に入っていった。

バクはそれをただ黙って見ていただけで、何を考えているのかわからない。

こうなってしまったときのバクに、なんて言えばいいのかあたしにはわからなかった。

だからいつも、バクが喋るまで待つ。


だけど、そうもいかなかった。

黙って、あたしに何も言わずに歩き出してしまったから。


「……ねぇっ! どこ行くの? 悪夢、見つけたの?」


その答えが返ってくるより前に、あたしはバクがやろうとしていることを理解する。

金髪の彼が入っていったドアの前で、立ち止まるから。

後を追いかけたあたしに振り返ると、バクはいつもの冷たい目であたしを見た。


「ちょっとした気まぐれと気分転換だよ。増えるものもないけど減るものじゃない。俺達以外の存在がどういう仕事ぶりをするのか見学するのも悪くないと思ってね」

「それは……いいけど。なんで黙って行っちゃうの。おいてかないでよ」

「俺の個人的な興味だから。存在を維持するために必要な悪夢を探すための行動じゃない。だから、亜紀を連れて行く必要がない」


ぷい、と目を逸らされる。


――拒絶、された。


「……あたしが、いらないってこと?」

「そうなるね。別に付いてこなくていいよ。来るのは亜紀の勝手だけど、フォローはしない」


どうして……。

あたしは立ちすくんで、金髪の彼と同じようにひらりと扉の中に飛び込んでいくバクを見送ることしかできなかった。


戻って来る時は、このドアからなんだ。

ひとりぼっちでも、ここで待ってさえいれば……バクは、帰って来てくれる。

そう思いながらその場にしゃがみこんで、あたしは膝を抱えた。



――遅い。

もうずっとこの言葉ばかり頭の中で繰り返している。

バクが戻ってきてくれない。

どれぐらい時間が経ったのかなんて、この空間じゃわかりやしない。

常に真っ暗なのに、ものが見える不思議な空間。

現実でならばありえない光景だけど、あたしにとってなにが常識だったのかすら忘れていきそうだ。


どうしてあんなにも冷たく、バクはあたしを突き放したんだろう?

基本的に、バクは優しくない。

でも本当は優しい人なんだって、あたしは知ってる。

そうだと思ってた。


だけどさっきのバクはあたしを突き放して、まるで荷物かお邪魔虫みたいなものを見るような目で見ていた。


「……ごめんなさい……」


何に対する謝罪か分からないけど、あたしはその言葉を口に出す。

ぎゅっと膝を抱える力を強め、顔をそこにうずめた。

思わず目頭が熱くなるのが、わかったから。


――ねえ、さっき会った妖精さん。

あたし、ユーレイなんかじゃないよ。

そうでなければきっと、こんな感情沸くはずないんだから。

心があるうちは、あたしはきっと生きているんだ。

それが無くなった時が、本当にあたしが死んだ瞬間だと思う。

だからまだあたしは、自分が死んでしまったなんて諦めたくない。

 

「……何してんの」

「っ!?」


聞き覚えのある、呆れたような声が上から降ってくる。

あたしは慌てて顔をあげようとして、いや、やっぱりあげられないことにすぐ気が付いて服の袖で目元を拭いながら立ち上がった。


「泣いてたわけ?」

「な……泣いてないし」


バレバレの嘘でも、認めたくなかった。

バクの顔が、まともに見られない。

どんな顔をして彼の顔を見ればいいのか、わからないから。


「……嘘だね」


はあとため息をついてから、バクはあたしの顔に手をやって、上げさせた。

否が応でも、彼の顔が目に入る。

と同時に、あたしの顔も見られてしまう。


「目が赤いんですけど。どうしたの?」


無表情のままだけど、口先では一応心配してくれてる……んだと思う。

ただでさえ何を考えているのかわかりにくいバクは、近いのか遠いのかいつも分からない。

だから時々、不安になる。


「……泣いてたくせに、何もないわけないでしょ? 言えばいいじゃん。泣かれてるとこっちも気分悪い」


あたしの沈黙を、回答拒否と受け取ったらしいバクが僅かにむっとした顔をする。

手は放されたけど、あたしのすぐ目の前に立ったまま動こうとしない。

口調こそ棘々しいが、彼なりにあたしのもやもやを聞きだしてくれようとしてくれるんだと……思う。たぶん。

あたしはどうしたらいいか分からなくなって……またじわりと涙が滲んできたのが分かった。


「お、置いていかれて……」


そして、正直に話すことを決めた。

たどたどしく言葉を紡ぐあたしを半ば引っ張るようにして、バクは自らの隣に座らせた。

二人で隣同士に座りながら、あたしは涙声交じりに話し続ける。


「あたし、やっぱり邪魔だったのかなって、思って」


それに、バクは答えない。

感情の奔流が止まらなくて、あたしはただひたすらに、思うがままに言葉を口から吐き出していく。


「バクに置いて行かれたのが、すごく怖くて、バクがいなくなっちゃったらどうしようって、でも、あたし、いつまでも何にもできないから……」

「危ないと、思ったからだよ」


そう言って、バクはぽんぽんとあたしの頭を叩いた。

それはあやすような、慰めるような、そんな仕草。

普段バクからあたしに対して何かしらの行動が起こされることは少ない。

だから、すごくびっくりした。


「俺達以外で、夢に干渉できる存在が……果たしてどれだけの力を持っているかわからない。俺はすぐに逃げられるけど、亜紀はそうもいかないでしょ?」


――暖かい。

普段のバクの言葉よりも、なんだか……『暖かく』感じられる。

トーンの低い落ち付いた声が耳朶を打って、それが少しずつあたしの不安を溶かしていくのがわかった。

 

「フォローしきれるかわからない。だから、連れて行くのは危ないと思ったんだよ。ただでさえ存在が曖昧なんだから、俺達」


……つまり。

バクはあたしの身を心配して、連れて行こうとせずにわざと置いて行ったんだ。

冷たくされたんじゃない。


あたしを――想っての、行動だった。


「突き放すのも優しさって、知ってた?」

「……自分で、優しいとか言っちゃうわけ?」


不器用なんだ、このひとは。

優しさの表現がヘタで、それであたしを誤解させてしまっただけ。


きっと、バクのことは信じていいんだと思う。

広い広い夢の世界でたった二人の『貘』。

あたしが頼れるのは彼だけで、また、あたしの痛みを分かってくれるのもきっと彼だけだ。

ぶっきらぼうだけど、その芯はとても暖かくて、優しい。


「……ありがと」


彼がなかなか素直にならないのなら、あたしだけでも常に素直でいよう。

そう思ったあたしは、真っ直ぐな言葉をバクに返すのだった。


「ねぇ、バク」


もうバクに対して意地を張るのをやめて、隠し事はしないようにしようと思ったあたしは、ずっと燻らせてきたものをぶつけることを選んだ。

相変わらず反応が薄いが、一応はこちらに意識を向けてくれたらしいので話を続けることにする。

最初はその無反応ぶりに戸惑ったが、慣れてくればなんとなくだが察せるようになってきた。



「怒らないで聞いてほしいの。あたしの話」

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