炎を断つ力
バルガレイドが咆哮すると、地面が赤く変色し溶けていく
地面を蹴り、高く飛び上がる
「サミル!」
[承知しました!]
サミルの体が無数の雷となり、俺の胸の中に飛び込んでくる
「行くぜ、神様よ!」
「来いよ!狼野郎」
バルガレイドが口を開くと、喉から大量の溶岩がせり上がってくる
バルガレイドを大きく息を吸い込み、溶岩と空気を混ぜて溶岩のブレスを吐く
「はあっ!」
神器を一閃し溶岩を両断すると、地面に着地する
「レナ。合図したら上からの攻撃を防いでくれ」
「任せて」
「ああ、頼むぜ」
[今のを凌ぐとはなぁ。やれば出来るじゃねえか]
「一応ウェルフィン(狼獣人)だからな」
[ならこいつはどうだ!]
バルガレイドは残った溶岩を短く息を切りながら連続して発射する
俺の周囲に大量の溶岩が降り注ぎ、溶けた岩の欠片が飛んでくる
「狙いはよく定めろよ!」
頭上から落ちてくる溶岩を一閃し
「雷よ 我が敵に光を!」
バルガレイドの鼻先を指し、魔法を発動すると、その目の前に青白い球体が現れる
[あ?]
「やれ!」
球体が乾いた音と共に破裂し、バルガレイドの視界を焼く
[ぬあっ!?。前が]
周りが見えなくなったバルガレイドは、冷えた溶岩に覆われた足をばたつかせる
「今だ!レナ、頼む」
「うん!」
レナがペンダントを天に向けて掲げると、ドーム状の光の幕が彼女を包む
視界を奪われ、混乱したバルガレイドがそこに足を振り下ろすと、幕がその攻撃を阻み、逆にバルガレイドがバランスを崩す
[なっ!?]
体勢を整えられなかったバルガレイドは右の前足を折って倒れる
「これでどうだ!」
俺はバルガレイドの目前に迫り、鼻先に剣を突きつける
[クソッ。目が、目が見えねえ]
閃光代わりに使った雷の爆発が相当効いたのだろうバルガレイドは何度もまばたきをして、必死に視界を取り戻そうとしていた
..........
「それで、お前は何故こんなことを?」
[誰が人間なんかに教えてやるかよ]
「それは俺じゃない」
「ちょっと!私にも教えてよ」
[やなこった]
「レナ、さっきのペンダント借りてもいいか」
「良いけど、どうするの?」
レナからペンダントを受けとると、それをバルガレイドに見せる
[お前っ!?それをどこで!]
途端にバルガレイドの目の色が変わり、物凄き目付きで俺とレナを睨む
「ひっ!」
「大丈夫だ」
怯えるレナを下がらせると、ペンダントの持ち主がレナだと言うことをバルガレイドに伝える
[待てよ。それならマスターはどうなったんだよ。あいつは今どこにいるんだよ]
バルガレイドは鋭い目付きを緩める事なく質問を続ける
「随分前に死んだ。お前の主についても調べたが、彼は人間だったからな」
[何言ってんだよ。俺は1ヶ月前に寝ただけなんだぜ?それなのになんであいつが死んでるんだよ]
「こっちの世界じゃもう何百年も過ぎてる」
[冗談なら止めとけよ。ここでお前を喰ってやるからな]
「魔力の量が変わってるのは気付かないのか?」
[魔力の量だ?。それが何だっ........何だよこの魔力の量]
「人間が好き放題に魔力を使ってるんだ」
[神との契りを忘れやがったってのか!?あのクズ共!]
バルガレイドが一層声を荒々しくする
「俺は歴史から消されたお前達の存在を探してる。お前達の役目の為にも、俺に協力してくれないか」
[俺はここの守護を任されてんだ。そこの狐とは違うんだ]
[バルガレイド。どういう意味です?]
[まんまの意味だよこの田舎狐ー!]
[あなたも火口にいるだけではありませんか!]
[なんだと!?]
[なんです!?]
「仲がいいのはわかったから後にしてくれないか」
[ああっ!?。なんだこのチビ狼!]
「そうか.....よくわかった。レナ」
「神様。ごめんなさい!」
レナがペンダントをバルガレイドに向ける
[てめえ!?。おいチビ狼!卑怯だぞ]
「ちょっとぐらい休んだっていいと思うぜ。少し世界を見て回ろう」
[.......チッ]
バルガレイドは観念したのか、話をしぶしぶ了承する
「レナ。バルガレイドと契約を」
レナの契約を待つ間に、最後の水の瓶が空になった。レナの助けがなければ確実に死んでいただろう
「アルトー。終わったよー」
「よし、じゃあ村に戻ろう」
俺はレナを連れ、村に戻る
村に到着する頃には、火山の活動も完全に停止し、暑さも無くなっていた
「おお!レナが帰って来たぞ!」
「あの子は村の英雄だ!」
「お手柄だぞ!レナ」
村人の祝福の声がレナに雨のように浴びせられる
「行って来いよ。レナ」
「うん!」
俺はレナを見送ると、宿に戻る
この村を救ったのはレナだ。彼女の力がなければ確実にバルガレイドには敵わなかった
宿の自室に戻ると、今回の出来事と、炎の神獣『バルガレイド』について記録する
王国に戻ってから資料にまとめるために分かりやすく記録するには工夫が必要で、試行錯誤している内に既に夕方になっていた
「さて、次の街に行くか」
[主よ、お休みにならなくて良いのですか?]
「ああ、お前の仲間に早く会いたくて仕方ないんだ」
[ふふ、そうですね。私も楽しみです]
サミルと会話を終えると、レナから借りた革袋を持つ
「さて、これを返したら出発だ」




