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24.悪かったとは思うが反省は特にない

 動けなくなったゴブリンを踏み付けながら、二匹の青い虎、イミティタイガーが近づいてくる。

 大きい方のイミティタイガーに乗っている少女が俺達を見て、不思議そうに首を傾げる。


「お兄さん達、だぁれ? ここまで潜ってこれるような人がいたら、お婆ちゃんのメモに載ってるはずなのに……」


 少女は広間に散らかっているゴブリンの山を確認し直してから、ふにゃっとしていた表情を少しだけ引き締める。

 警戒した方がいいと、そう判断したようだ。


「お、おい……アイツ、多分かなりヤバイ奴だ。あの歳であんな魔獣従えられる実力があったら、俺様が知らねぇわきゃねぇ。ギルドに隠して禁魔獣飼ってるってより、根っからの裏の人間だぞ」


「マジかよ、やっぱルーファの忠告聞いときゃよかったな」


 エドガーはぐっと表情を顰め、俺を睨む。

 まるで『テメェが挑発してこなけりゃ、俺様は素直に引き下がってたわ』とでも言いたげな。

 プライドが邪魔して口に出来ないんだろうが。

 つっても、挑発に乗る方も悪いと思うんよ俺。


「向こうも探索目的だろうし、争う気はねぇんじゃねぇのか? オッサン、脅して追っ払ってくれよ。そういうの得意だろ?」


「否定できねぇけどその言い方は心外だぞ!? テメェ着実に俺様を軽んじてやがるよなぁ!?」


 俺の物言いに反感を示しながらも、エドガーは一歩前に出る。


「おい聞け、クソガキ! テメェが違法魔獣を使役してようが、わざわざチクる気はねぇ! だが、んな物騒な魔獣ウロつかせられてたんじゃこっちも落ち着かねぇんだよ。とっととターンして、他のところ行くこったな」


 エドガーがナイフで宙を切りながら、魔獣に乗る少女を睨む。

 あの動作、小物臭いから次からやめてもらおう。


「お兄さん、だぁれ?」


「俺様は、B級冒険者エドガー様だ! 私闘を仕掛けてきた性悪A級冒険者を下し、そしてたった一人でゴブリンキング率いる魔物の群れを殲滅した生きる伝説よ! 言うこと聞けねぇってほざくんなら、俺様が相手をしてやっても……」


「お兄さん、アトラと遊んでくれるの?」


 ペロリ、少女が舌なめずりをする。

 あ、これ、駄目なパターンだ。


「オッサン、目潰し!」

「闇魔法、『闇の霧アトラ・ネーブラ』!」


 俺が言うまでもなくエドガーもこれしかないと思っていたようで、行動が早かった。

 広間を闇が包んでいく。


「チョコちゃん、クッキーちゃん、周りに警戒して! ゴブリンの様子から見るに、あの人体術が得意みたい!」


 多分エドガーのことを言ってんだろうが、残念だったな!

 ゴブリンの討伐してるとき、あのオッサン何もしてねーぞ。

 別に俺も格闘特化じゃねぇし、そもそも戦う気なんてサラサラねぇっつーの。


 俺は闇の霧に乗じ、エドガーを背負って全力疾走で広間を出る。


 別に戦えなくはなさそうだが、戦うメリットがない。

 俺が表立って戦ったらダークエルフってバレるかもしれんし、エドガーがまともに戦えるとは思えんし。


 廊下を走り、階段まで戻る。

 段差を全力で駆け抜ける。


「とりあえず帰るかどうかは向こうで考えるとして、馬車まで戻るか」


「ああ、さっさと地上階層まで走れぇっ!」



 階段の頂上が見えてきたところで、エドガーから安堵の息が漏れる。


「ふぅ、これでとりあえずは……って、テメェどういうことだこれはぁッ!」


「何か変なことあったか?」


「一階、こんなとこじゃなかっただろうが! 何だ、どこだここはぁっ! 何がどうなってやがるんだぁっ!?」


 なんだ、なんでエドガーはこんなに喚いてるんだ?

 一階? あ、ひょっとして勘違いしてんのか?


「オッサン」


「あぁ!?」


「ここ、地下六階だぞ」


 エドガーが無言で俺の頭部を強打した。

 完全に死角からの一撃だったため、まともにくらった。


「痛っ! 何すんだオッサン!」


「テメェこそ何してくれてんだ!? なんで途中で戻らなかったぁっ!」


「いや、思ったよりサクサク進めたし……結構アイテムとか拾ってたのに、デブゴブリンに襲われて落としたせいで、大したの残ってねぇーわ」


 デカイ剣とか、開かなかった宝箱とかそんまま持って帰ろうとしてたのに、ゴブリンの集団ともみ合ってる間にどっか行っちまったんだよな。

 探す間もなく変な奴来るし。

 小袋に入る分しか残ってねぇ。


 耳を澄ます。

 後ろから迫ってくる、虎二匹の足音。

 俺の方がギリギリ足早そうだから逃げる分には問題なさそうだけど、魔物に襲われたらその限りじゃねぇんだよな。


「せめて俺様が起きてから進めや! なんだ、俺様そんな寝てたのか!?」


「いや俺も、こんなに地下があるとは知んなかったからさ。どうせなら一番下まで行ってやろうと……」


「テメェの好奇心が底抜けなのはわかったが、俺様を巻き込まねぇときにやりやがれぇっ! 殺す気かぁっ!」


 大蜘蛛やら骸骨剣士を蹴っ飛ばしながら、全速力で上階層へと向かう。

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