第4章 銀の幻想曲(ファンタジア)~嵐の前の静寂
「王様、わたくしに何をご所望ですの?」
わたくしーテタルゥラは只今、エレオス王国【謁見の間】に呼び出された次第である。
「…そなたに話があってな。我はそなたを妻に迎えようと思うのだ。」
この国に用は無いので、早く故郷へ帰りたいのだが面倒なことになった。
「王様からそのような御言葉をいただけるとは真に光栄ですわ。しかし、お戯れが過ぎませんこと?」
「いや、我は冗談など言っておらぬ。本気だ…我はそなたに心を奪われてしまったのだ。妻になってはくれぬか?」
この王もやはり男なのである。他の殿方と同じように彼女に心を掴まれてしまった憐れな子羊……彼女以外の何者も、彼の目には映っていなかった。
「そのようなこと…わたくしよりも姉のほうが夜空に照り映える月のように美しく、優しい娘です。姉なら王様のお相手が務まります。国も栄えることでしょう。」
「そなたは大変聡明で、教養深いと聞く。正妃の座はそなたがふさわしい。」
…全ては彼女の策略どおり。
「王様、わたくしを妻に迎えたいのならば王子様と戦わねばなりません。わたくしにご執心なのは王様だけではないのです。」
「どうやって戦えばそなたを妻に迎えられるのだ?」
フトロポワン王国の当主といったら、勿論…
「わたくしと決闘とチェスをなさいませ。わたくしに勝った方がわたくしの夫となるのです。但し、負けたらお召し物をいただきます。」
こうして、宮中を騒がす嵐がやって来たのであった。