[love story1] 白蛇とカナリアの夜想曲~エレオス王国 満月と星空が綺麗なバルコニーにて
妖精VS妖精です。※剣を振り回すバトルシーンはありません。
「ごきげんよう、お兄様。」
妹は、バルコニーの手すりに座り、扇状的な瞳で此方を見つめている。月光が艶麗な美貌を引き立て、微笑みは何処か-妖しげである。
「おい、ニムエ。主人を置いて何故、此処にいる。」
「理由なんて無いわ。それに…わたくしに主人は居りませんことよ。」
ニムエは月姫にとって、死神のような存在。テタルゥラと並んで、『地獄の沙汰も彼女次第』という言葉がお似合いである。
「何の用だ。」
「祝福を授けにきたわ。」
笑顔の下に何か企んでいそうだ。
「断る、断る。拒否する。」
俺は口下手ながら全力で断った。
「えぇ~そう言わないで。ね、お・兄・様♪」
俺を誘惑し、説得しようとしているのだろうが意味が無い。テタルゥラは俺にどうやら気があるらしく、流し目を送ったりしてきたが、無意味である。
「断る。」
再度、俺は断った。祝福を受けたら…死ぬ。(俺のような不死身の妖精でも)
「……」
彼女の目の色が変わった。甘えた様子は遥か彼方に消えて、その身に纏うは大地を轟かし、夜空に瞬く星々たちを射落とすかのような殺気だった。
俺は思わず、レナを抱きしめる力を強めた。
「スー…スー…」
疲れているのか、彼女は凄まじい殺気の中でもスヤスヤと寝息を立てている。その様は無防備で、とても可愛らしい。
「レイス、貴方が選んだその娘の何処が好き?」
「テタルゥラのように完璧で無い。不器用、未完成。純粋…全部、好きだ。それにネシア姉の娘とあって美人だ。」
俺はレナの好きな所を上げてみせる。。
勿論、妹は俺をからかい、赤面した俺を見世物のように楽しんだ。(こういう風に愛を囁くのは性に合わないのだ。)
「では、行ってらっしゃいませ。」
白蛇が月とカナリアを喰らう音がした。