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 空をさえぎるような壁が視界に現れてから、大分時間が経った。

 見えた時点で、隊の間には安堵が広がっていたが、近づけば近づくだけ陽気さが増した。

 間もなく、待ちきれなくなったこどもたちが走り出した。

「着いたー!」

「俺が一番乗りっ」

「あ、ずるーい」

 こどもたちはきゃあきゃあと歓声を上げて、街を囲む壁に触れて喜んでいる。

 大人たちは、やれやれといった表情でそれを見つめながらも、隊列を離れたことを怒ろうとしない。

「やれやれ、門に着くまでまだ距離があるってのに、こどもは元気だねぇ」

「しかし無事についたじゃないっすか」

「そうそう、隊長倒れたときにはどうなることかと思ったけど」

 若者たちの言い分に、隊長は渋い顔で黙り込む。これに、女たちが追い討ちをかけるかのように次々に同意した。

「まったくだ」

「ほんとほんと」

「――ね、先生」

 話を振られた学士は、角が立たないよう慎重に言葉を選びつつ笑顔でうなずいた。

「ええ。無事にたどり着けて、何よりです」

「ほんとだよ。――先生は、これからどうするんだい?勉強しなきゃならないんだろうけども、具体的には何を?」

「一通り、街を回るつもりです。書物をあたってみて・・・それから、天使から話を聞いてみたい。あとは、行き当たりばったりです」

「そうかい。うちらは紹介してもらった宿に行くつもりだが、先生はどうすんだ?アテがないなら一緒に行ってみる?」

「宿・・・」

 言われて初めて、学士はそのことに思い至った。

「そういえば、そんなものも必要でしたっけ・・・・・・」

「なんだ、考えてなかったのか?賢いのに、変なとこで抜けてるなぁ」

 驚き呆れた様子で女が言う。もっともな言い分に、学士は苦く笑った。

「――すみませんが、ご一緒させてください」

「いいよいいよ、気にすんなって」

「お宿は歓楽街の中心らしいよ。人間が集まれば、情報も集まる。お互いに、重宝する場所だよねぇ」

「ええ」

「さあてと、着いたらまずは、かの有名な天使が奏でる〈音楽〉を聞こうじゃないか」

 女がにやりと笑って言えば、若者たちが一番に反応した。

「お、そうすると行き先は?」

「酒場だな」

「っしゃ!」

 歓声が荒野に響き渡った。







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