つかの間の夢。
ドサリ、と音を立てて前のめりになって僕は倒れこむ。
「…痛いんだけど」
手先にはその白い首がおさまっていて、親指がクロスされてその上に乗っている。 ついでとばかりに今は馬乗りだ。僕が上だが。
「話聞いてるの」
このまま絞めてしまえばいいのだろうか。 うるさいくらいの自分の胸部は、確実に寿命を縮めるために動いているだろう。
「……ねえ、人のお話聞いてます?」
手を動かす、温かい目の前の体温と、さらりとした手触り。
思わず強く力を入れたくなったけれど、自制する。
「…じゃあ、こうしようかな」
そういってキミは床に置いていた自分の腕を僕の首に抱きつくように回して、思い切り引き寄せる。
バランスを崩しかけて、思わず首から手が離れた。
そしてぐるり、と回転するように前後が入れ替わり、僕はキミに馬乗りにされた。
そして、同じように首に手を這わされる。
力加減がちょっと強いようで、声がちょっと漏れる。 それでもキミは楽しそうに笑うから、それもいいかなと思ってしまう。
――――ああ、このまま殺されてしまえば幸せなまま死ねるだろうか。
僕はそっとキミの腕を首から外すと、先ほどされたように引き寄せる。
そして一言、好きと言った後に長いキスをした――――。