表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平民の私が黒竜公爵様と婚約しましたが、彼は違う男を誘惑して来いと言います〜攻略相手の愛情が重すぎて逃げられない!?〜  作者: 穂村 ミシイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

09 光の乙女は舞う 2

 まだ春は来ない。

 …………なぜ?

 だって私がまだ祈りをあげていないから。


「創立神に捧げます。」


 これから踊るは春の舞。

 揺らめく花びらを模した篝火を燃やせ。


「私の心も、祈りも、全部。」


 燃やせ、天高く。

 あの空の、雲の隙間から星を駆けていけるように。我らの祈りが煙となり、届きますように。


「光の使徒が導きましょう。」


 炎よ、白く冷たい雪を溶かしておくれ。

 水よ、大地に眠る生命に目覚めの一杯を。

 風よ、国中に春が来ると知らせておくれ。

 闇よ、もうお役目は済んだ。長い夜をよく守った。

 光よ、さぁ芽吹きの時だ。

 

「我らに大いなる祝福の光よ降り注げ!」


 はっ、こんな清らかな言葉を並べているのが汚れきった娼婦の女だなんて、まるで滑稽。

 

 お前達の目に私はどう映る?

 清らかな乙女?

 憎悪渦巻く悪女?


 ――いいえ、違う。


 この指先も、脚も、まつ毛一本に至るまで、不純物なんてない。神が丹精込めて作り出した唯一の美。


「まさに、天使だ……。」


 誰かが思わず感嘆のため息を吐けば、もう止まらない。

 穢れの中にいながら、その心は真白に輝く泥中の蓮が如く。私の心は誰にも染まらない。染められやしない。

 

 揺れる純白だったドレス。

 裸足は泥に塗れて。

 頭に被った金の王冠は月光を一心に浴びて光を宿す。


 その歪な美しさこそ、唯一無二の純真さを表していた。悪を知らない天使の装いとして、これほど相応しいものはなかったと、一夜明けた新聞が一面で報じていたらしい。


 光冠祭の帰り道では、過去一番の出来栄えだったと興奮する人の列で溢れ返っていた。それと同時に私が大階段から突き落とされ、負傷していた事も知れ渡った。

 

 こういう時の噂話が広まるのは恐ろしく速い。それでいてありもしない尾ひれ背びれのおまけ付き。


 『大階段から転げ落ちる時まで金の王冠を守っていた』だの、『神官長の治癒魔法を断ってまで光冠祭で踊った』とか。全く虫が良すぎる。


 私は知らない内に『光の乙女』の異名を手にしてしまったのだった。


 結果としてハプニングはあれど、光冠祭は大盛況の内に幕を閉じたというのに、私は……、


「ティア、具合はどうだ?」

「…………最悪よ。」


 大階段から転げ落ちた時に身体全身を打ったせいで、寝返りも打てないほどの痛みに襲われ、冬の寒空のした薄着で踊った為、高熱に侵されるという二重苦を味わっていた。


「神官長が直々に治癒魔法をまた施しに来るとは、神殿は今回の件を大事にしたくないようだな。」

「そんな事、どーでもいいわよ。」


 大事にしたくないとは言え、あれだけの群衆がいたんだ。記者が嗅ぎつけるのも当然。フェリタ公爵家の前には私が何者なのか探ろうとする者達が躍起なっているそうだ。


「ティア、当分の間は窓から顔を出すなよ?」

「出したくても指一本動かせないわ。」


 当の本人は目的だったソルドン王立学院の入学式にも参加できず、伏せっているなんて。駄作の記事にも出来ないだろうに。


「まぁ、ティアが頑張ったおかげで当初の目的も達成された。やはり俺の見る目は間違ってなかったと言う事だ。」


 アルマの言う通り、ナポリック教授に掛けた魅了の魔法の効果は絶大だった。彼女自身が魔法に掛かりやすい体質だったのもあるだろうが、その後に見た祈りの舞で更に深く魔法が掛かったみたいだ。


 光冠祭の翌日には沢山のお見舞いの品と一緒に、推薦枠とAクラスの通知書を持って来た。更には選択授業を自身が担当する芸術クラスに強制的に参加させる職権濫用まだして見せた。彼女とはまだまだ関係が続きそうだ。


「入学式も無事終わった。光冠祭での事もあったから、ティアに関してはかなり考慮されている。熱が下がって万全になってからの登校で良いと許可が降りたぞ。良かったな。」

「こんなに苦しいのに、良くないわよっ!」


 今だって咳が止まらないし。頭が痛くて世界がぐるぐる回っているんだ。


「そうだな。せめて熱ぐらい、俺が引き受けるべきだな。」

「なにそれ? どう言う……ッ!?」


 アルマの顔が徐に近付いてきた。毛穴ひとつない肌に赤い瞳と長いまつ毛。男のくせに人形みたいな美しさ。ふわりと香る柑橘の香水。


「……んんっ!」


 思わず固まってしまった私の唇に、アルマの唇が重なった。強引に開かれる歯の隙間から差し込まれる分厚い舌が口内を侵食していく。

 訳が分からなくてアルマの肩を押して見たけれどびくともしない。その後も数分間、何度も何度も抜き差しされる舌に翻弄され、酸欠になりかけたところでようやく解放された。


「な、なに、すんの、よっ!!」

「風邪は他人に移せば早く治るっていうだろ?」

「そんなの、知らないわよ!」


 自分でも頬が真っ赤になっているのが分かる。こいつのせいでまた熱が上がったみたいだ。

 

「…………それにしても、遊女の割にキスが下手だな。」

「はァァァァアアっ!!?!!」


 私は身体を売らない遊女としてやって来たのよ。


「私のファーストキス返してよっ!!」

 

【お願いします!】

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただけると幸いです。


皆様のブックマークと評価が日々のモチベーションと今後の更新の励みになります(〃ω〃)

ぜひ、よろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ