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遊女の私に五匹の竜からの溺愛は重すぎますっ!!  作者: 穂村 ミシイ
第一章 光冠祭と入学編

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15 シャオンと二人の女子生徒

 シャオン・フレイブ。

 彼について分かった事は、生徒会所属の火竜の末裔で、パッと目を引く派手な外見。そして――、


「はぁー、最悪。女好きって聞いたからあわよくば結婚して公爵夫人になれると思ったのに。」


 さっき婚約を破棄され、泣きじゃくっていた女子生徒がスッと立ち上がった。その瞳からは涙の一滴も流れてなんていない。


「でも、これでシャオン・フレイブと関係を持っていたと社交界で言えば、そこそこの結婚相手が見つかるでしょう。あの美しいものに眼がないシャオン様が認めた華だって。」


 そう言い捨てて、女子生徒は家に帰宅するかと思いきや、逞しくも校舎へと歩き去って行く。やはり貴族であっても女はしたたかだなと、私は名前も知らない彼女に好感を抱きながら背中を見送った。


「ねぇ、あのシャオンってやつ。婚約破棄はこれで何度目?」

「シャオンがこのソルドン王立学院に入学してから婚約破棄したのはこれで五度目だ。」


 やっぱり。

 だからアルマはさっき〝また〟と言ったのね。

 

 シャオン・フレイブは女癖の悪さも有名だが、女運がない男としても有名らしい。彼にとっての婚約は、付き合うぐらい軽いものなのだろう。

 実際、こっ酷く婚約破棄された女子生徒も、先ほどの反応を見る限り、それが分かっているから形式的にあのような三文芝居に興じていたと考えられる。


「シャオンは生徒会の中でも一番分かりやすい。それに美しいものが大好きだ。彼が一番魅了しやすいだろう。」


 そうかも知れないが、問題は根深い。


「私の魅了の魔法は誰でもなんにでも掛けられるけど、それは私に好意があって成立するの。」


 アルマにあれほどの敵意を剥き出しにしていたし、その婚約者である私にも去り際、睨みつけるような視線を送ってきた。そんな相手が簡単に魅了の魔法を掛けられるとは思えない。


「私の魔法は万能じゃない。むしろ、脆いのよ。」


 精神魔法の弱点はここにある。

 条件を満たしていなければ発動すら出来ない。


「今の状態で彼に魅了の魔法を掛けるのは不可能。どうにか、シャオンって奴の関心を私個人に向けないと。」

「そうか。なら大丈夫だろう。」

「どういうこと?」

「ティアが俺の婚約者だから。」

「…………?」


 多くを語らない、いえ、語れない説明下手のアルマからこれ以上引き出すのは無理だと悟り、私はソルドン王立学院へ、ついに脚を踏み入れた。


 学院内はまるで迷路だ。

 だった一度の説明では覚えきれない広大な土地に、多種多様な教室が不規則に建ち並んでいる。どこも古い石造り。木造の増築に増築を繰り返していたマスカレードとは訳が違う歳月を経て生まれる歴史を感じた。


 そんな一角の教室。

 今年入学の優秀な生徒を集めたAクラスがある。

 室内には、十五人の生徒。その中の顔ぶれには、見覚えがある者がいた。


「ケルロッテ・エーベリア嬢。この問題の解答をお願いします。」

「承知致しましたわ。」


 先ほど晴れてシャオンの婚約者となったクリーム色の立て髪ロールが印象的なあの女子生徒だ。それからもう一人、


「では、アイリス・ラグラ嬢。こちらの答えをお願いします。」

「はい。」


 彼女は先ほど、無惨にもシャオンという婚約者に婚約破棄された紫色のサラサラな長髪が美しいあの女子生徒。

 

 …………まさか、あの二人と同じクラス、とは。


「お二人と素晴らしい、正解です。皆さんもお二人を見習うように。」


 二人を讃える温厚そうな教授の発言に皆が言葉を濁していた。それから皆が思っただろう。どうかあの二人が自分に矛先を向けて来ませんように、と。


「では次の問題を、セルティア・リリース嬢。お願い出来ますか?」

「………………分かりません。」


 シンと静まり返る教室に、クスクスと嫌に乾いた笑い声が鳴った。


「この程度の問題も分からないなんて。流石は自然と戯れて育った男爵令嬢だこと。」


 ケルロッテの辛辣な言葉が飛んでくる。

 彼女は私を田舎者と罵りたいのだろう。

 どうやら私を標的にしたいらしいけど、なにか気に触る事をしたかしら?

 

 全く覚えがないし、彼女が言う男爵令嬢でもない。

 女の園マスカレードで育ってきた私からすれば、残念ながらこれぐらいの嫌味、悪意だとも思わないわ。

 むしろ、子供が駄々を捏ねているみたいで可愛らしくまで思えてくる。軽く会釈と笑みだけ浮かべておいた。

 

 その後もいくつかのくだらない授業が続き、合間でケルロッテとその取り巻きにキャンキャン吠えられたのを無視し続けた。


「セルティアさん、少しお話よろしいですか?」


 そんな中、授業の合間で声を掛けてきたのは驚く事にアイリスだった。


「ええ。えーっと、なんとお呼びしたら?」

「アイリスで良いわ。」

「アイリスさん、分かりました。」

「同じ男爵家の産まれですもの、敬語は無しで行きましょう?」


 今朝、彼女の本性を見てしまった後だから、彼女の作り笑みが少し怖い気もするけれど、シャオンの役立つ情報が貰えるかも知れないし、仲良くして損はない。

 

「分かったわ。」


 私は差し出された手を取った。


「ここじゃあうるさいのがいるから、後で二人で話しましょう?」


 当然だが、アイリスはケルロッテが嫌いらしい。

 教室に響く声には敵意があり、皆がピクリと肩を振るわせた。


 アイリスは私までとはいかないけれど、とても美しい容姿をしている。紫の長髪は、光に当たるとその美しさが際立つ。陶器の肌と青いビー玉瞳も相まって神秘的にすら思える。


 ケルロッテが可愛いよりなのに比べると、アイリスがお姉さんと言われても納得するレベルだった。


「次の昼休憩に旧庭園まで来て。」


 耳元で囁かれた場所に相槌を打てば、クシャと崩れた本来の笑顔は年相応で愛らしかった。このギャップはずるい。


「じゃあ、後でね」

  

 それから、長い長い授業がやっと終わり、さっさと教室を出ていくアイリスの後を追おうと立ち上がり歩き始めた私は、ケルロッテの集団とすれ違った。


「…………男爵家の分際で、生意気なのよ。〝穢れた血〟の婚約者な癖に。」


 囁かれた悪意。それはどうでも良い。

 まただ。私の知らない〝穢れた血〟と言う言葉。


 その問いの答えを聞こうにも、ケルロッテ達が教えてくれるとは思えない。


「家に帰ってレビにでも聞いてみようかしら。」


 なぜか、アルマ本人には聞いてはいけないような気がした。


「あ、旧庭園に急がないと。」


 アイリスが待っているはず。

 私は疑問を押し込んで教室を出た。


「多分、ここ、よね……?」


 無駄に広い校舎では、旧庭園をみつけるだけでも骨が折れる。ようやくそれらしき場所に着いたけれど、昼時ともあって、食堂から一番遠いここに人の気配はない。

 それに旧庭園と言うだけあって、正門と比べて手入れは行き届いているとは言い難い。それでも美しい花と緑が茂る綺麗な所。一歩踏み出せば、背の高い草木に囲まれる。


「アイリスったらどこにいるのかしら?」


 迷路のように続く庭園を歩くと、ようやく見つけたベンチに、人の姿があった。


「アイリス……?」

「てめぇ、誰だよ。」


 木陰の黒で顔が見えずとも、そこにいる人がアイリス出ない事は分かった。だって帰ってきた声は野太く、明らかに男性のものだったから。


「ここは俺の縄張りだって知ってて入ってきたのか?」


 そして、この声、聞き覚えがあった。


「シャオン、様……?」

「ん? お前、穢れた血の婚約者か。」


 そこに居たのは今朝出会ったシャオン・フレイブ、その人だった。

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