01 遊女セルティアの災難 1
初めまして、穂村ミシイです!
久々の新作公開だぁーー٩( ᐛ )و
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まだ春は来ない。
寒気が戸を叩き、外はうんざりするほど雪が降り積もっていた。そんな中、私がいるここだけは、雪すら溶かす熱気と思惑で満ちている。
「セルティア、今夜の予約は金が一件だよ。」
〝金〟と言う事は、私に会う為に相当な額を積んだ金持ちが私を一晩買ったという事だ。
「ママ、ありがとう。」
私、セルティアには秘密がある。
「今晩の相手は……、新規ね。しかもお貴族様からの紹介だから期待出来るわ。」
コツンと鳴らすガラスの靴。髪と同じ黄金色のドレス。髪飾りには瞳の色と合わせたサファイアの蝶をあしらった物を。
「今日の私も完璧ね。」
「セルティア、今日も可愛いよ。あのさ、仕事終わりにご飯でもどうかな。僕、美味しい店を見つけたんだ。」
店に併設された自室から出ると店の黒服が、見え透いた下心と一緒に今日の乗客リストを渡してきた。
金を持ってない男になんて一欠片の興味もない。相手にするだけ無駄なのよね。
「黒服のあんたなんか興味ないから。退いてくれる?」
「そ、そんなぁ……。」
いつものようにしつこい男を蹴散らして客間へ向かう。私が店の廊下を歩けば皆が振り返り、感嘆のため息を漏らす。その視線は羨望の眼差しだ。私の一挙手一投足が注目を集めてしまう。
「私って、ほんとに罪な女ね。」
自身を飾り立てる服、靴、鞄、髪飾り、その全てがプレゼントされた物。平民の私では一生掛かってもこんな上等な品を買う事は出来ないだろう。
「お初にお目にかかります。平民なのでこのぐらいのカーテシーでお許しを。」
じゃあ、どうして平民の私が貴族のような格好をプレゼントして貰えるのか。
「私はセルティア。ただのセルティアです。どうぞよろしくお願いします。」
私が可愛いから?
美しい美貌の持ち主だから?
「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
もちろん二つもの兼ね備えている。
でも、それだけじゃない。
「ねぇ、もっと近くに来て私の目を見て?」
「…………やはりお前、魅了の魔法を使っているだろ。」
「――はぁ? 今なんて言った?」
平民街にある高級娼婦店『マスカレード』のトップに君臨する私、遊女のセルティアはもはや伝説だ。私は娼婦でありながら身体を売らない。それなのに客が途絶える事はなく、むしろ数分の会話だけでもと連日『マスカレード』に男が押し寄せる。
――何故だか分かる?
「な、なに言ってるんですか。平民風情が魔法なんて使えませんよ。」
だって私には絶対に男を落とす手札があるからよ。
「いや、嘘だな。お前、魅了の魔法を使っている。」
「…………。」
目の前の男は断言した。
確信を持った瞳は分かりやすい。そして、動揺した心の揺らぎはそれ以上に分かりやすい。
今まで誰にも気付かれずやりたい放題に男から金を巻き上げていたに。私の最大の手札であり、絶対的に王女に君臨出来たその秘密は、私が唯一無二の〝魅了の魔法使い〟だからだ。
「あんた、何者よ?」
客としてやって来たこの男、私の事を一目見ただけで魔法使いだと断定してピクリとも笑わない。まるで最初から知っていたかのような反応だ。
更に苛立つのは、顔に下卑た笑みが浮かんでいないこと。
最初から私の身体目当てならやり易いのに。目の前の男は何を考えているのかさっぱり分からない。こう言う男は厄介だ。私の長年の苦労を一瞬で水の泡にされてしまいそう。
いいえ、駄目よ。
私の立場を脅かされてたまるもんですか。
「いや、誰でもいいわ。とにかくあんた、私の目を見なさい。」
化けの皮が剥がれた今、こいつが貴族でもなんでも関係ない。こいつは私を脅かす敵だ。客でない男に敬語で優しくお話を聞いてあげる筋合いなんてない。
作り笑顔をやめて元来の鋭い目付きを武器に男の首に手を掛け、無理やりに顔を近づけた。そして私の瞳が男の瞳としっかりとかち合ったのを確認する。
私の魔法は瞳同士を合わせれば発動出来る。
ただ、色々と条件はあるのだけど……。
それでも、互いを深く知らない今なら魅了の魔法はまだ効果を発揮するだろう。
「あんた、私が魅了の魔法使いだって絶対に言わないでよね。出来るわよね?」
魅了した男は私へ絶対服従を誓う。そうなればもう、男達は私の手のひらの上で踊るだけ。今までだって何度も魔法使いだとバレそうになったけど、全てこの方法で解決して来た。
今回だってそうだ。
私の瞳は映る物全てを魅了出来るのだから。
「…………分かった。言わない。」
よし、勝った。
これで一安心だ。もうこいつは私の虜。
「そう。良い子ね〜」
「ただし条件がある。」
「はぁ!?」
なんでこの男、私に条件を突き付けてくるの!?
もしかして魅了が効いていない……?
いや、そんな事は絶対にないわ。私の魅了が効かなかった事なんて一度もないんだから。
「俺は魔法が効かない体質なんだ。」
「…………嘘、でしょ。」
「話を進めさせて貰うが、条件は二つ。」
「ま、待って。魔法が効かない体質ってなによ!」
咄嗟に男と距離を取るが娼婦店の個室がそれほど大きい訳がなく、腰掛けていたソファから飛び上がるも男は平然とこちらを見つめている。
「産まれた時からそういう体質なんだ。こればっかりは説明出来ない。諦めてくれ。」
「諦めるって、無理に決まってるでしょ!?」
頭が理解するのを拒んでいる。だって娼婦店にこの事実が知られれば、無断で魔法を使用した犯罪者として国に引き渡され罪に問われる。下手すれば死刑だ。
この国で自由に魔法を使うには、政府に魔法使いだと登録する必要がある。だが申請するにも金が掛かり、登録されれば魔法使いの証であるブローチを常に身に付ける義務が発生するのだ。
『魔法使いが魔法使いである事を秘密にしてはならない。』
これがこの国の法律で、魔法による犯罪の抑制力となっている。だから私にみたいに登録をしていない魔法使いが犯罪を犯す事が問題になっていた。そんな中で現れたこの男、黙っていてやる代わりに条件を飲めという。
一体何が目的なの?
私に何をさせるつもり?
「お前も犯罪者として殺されたくはないだろ?」
唾がごくりと音を立てて喉を通っていく。それから意を決して男の隣に座り直した。
「条件ってなによ……?」
「お前からすれば簡単な事だ。」
目の前の男はまだ若く、私と同じぐらいの青年に見える。いつも肥え太ったおじさま貴族を相手にしてきた私からすれば、まだまだ青二才に過ぎない。上手くすれば騙してこの場を収める事ができるかも知れないわね。
「ひとつ目は、俺と婚約してくれ。」
――………………ん?
「もう一つは、」
「ち、ちょっと待って!! こここ婚約っ!?」
「ああそうだ。特に問題はないだろう。」
この男、よくも真顔でそんな事が言えるものだ。爵位が低いのかも知れないけど、平民と貴族の婚約なんて聞いた事がない。愛妾にしたいの間違いじゃないの!?
「問題大ありよ! 貴族の貴方と平民の私が婚約なんて無理に決まってる。第一、私は貴方の名前すら知らないのよ?」
いつまで経っても無表情を崩さない男にこちらの心は掻き乱される。それが余計に腹立たしい。
「ああ、挨拶がまだだったな。」
改まった男がこちらを見る。
よく見ると顔はかなり整っていた。
漆色の髪は寝癖一つなく清潔に纏められ、赤い瞳は血を求めるヴァンパイアのよう。けれど畏怖ではなく神秘的な魅力を放つのは、彼の全身から放たれる真面目腐ったオーラからだろう。
「俺はフェリタ公爵家の長男、アルマ・フェリタだ。」
「え………………。こう、しゃく?」
今、公爵って言った?
数いる貴族の中で国に四つしかないあの公爵家の一つだっていうの!?
「嘘、でしょ……?」
「本当だ。これがその証明となるだろう。」
彼が腰に刺していた剣の柄をこちらに向ける。そこにはフェリタ公爵家を象徴する黒い龍の家紋が刻まれていた。
唖然とする私を置いて、アルマと名乗る公爵様は淡々と抑揚のない声で話を続ける。
「二つ目の条件だが、俺の通う王立学院に新入生として入学し、ある男達を魅了してもらいたい。」
「……………………はぁ?」
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