第6話
作戦会議の余熱がまだ体に残る中、カイトはテオの馬車に揺られ、トマヤの街路を進んだ。
馬車の車輪が石畳を転がり、湿った空気が頰を撫でる。
隣に座るリナが、地図を広げて指を這わせる。
「抜け道はここ。廃墟塔街を抜けて、火薬庫の周囲を回ろう。魔女軍の斥候が潜む可能性が高い」
テオがカイトの肩を軽く叩き、いつもの陽気な調子でリナに視線を投げかけた。
「いやあ、リナ殿の地図読みは感心するよ。俺たち男二人だけじゃ、この霧の街で抜け道見失って、待ち伏せに遭って火薬庫どころか港の酒場で道草食ってる羽目になってたぜ。なぁカイト」
「あぁ……そうだな」
馬車が湾岸港の喧騒を抜け、廃墟塔街に差し掛かる。
崩れた石壁がぼんやりと浮かび上がる。
馬車が止まり、工房街の入口に到着した。
カイトはクロスボウを構える。
鋼製の弦が微かに震え、溝彫りのボルトが鈍く光る。
テオが囁く。
「待ち伏せだな。俺は裏に回る。何人か残せ、話を聞きたい」
周囲は静かだが、遠くからかすかな響きが近づいてくる。
斥候部隊だ……十五名か。
カイトの指が引き金を握りしめ、冷徹な計算が彼の頭を駆け巡った。
リナに囁く。
「火薬壺を使う――爆発するから、耳を塞いで後退しろ。援護は任せた」
彼女が弓を構え直す――その瞳に、信頼の光が一瞬閃く。
突然、敵のリーダーが叫ぶ。
「今だ! 斬れ!」
カイトは剣の軌道を予測して横に滑る。
金属の風切り音が耳をかすめ、火花すら散らさず空を切る中、霧の陰から黒い影が反応するように飛び出す――魔女軍の使役獣、漆黒の狼一匹。
銃声と叫び声に刺激され、赤く輝く目がカイトを捉え、低い唸り声を上げて突進する。
狼はカイトの脇を掠め、鋭い爪が空気を裂くが、即座に身を翻して距離を取る。
リナが弓を放ち、敵の先鋒を喉元に射抜く。
敵が密集し始めるのを確認し、カイトは腰の鞄から火薬壺を素早く取り出した。
リナに素早くハンドサインを出す。
彼女は素早く伏せ、耳を防いだ。
カイトは壺を敵の先頭集団へ正確に投擲し、短銃を構えて即座に射撃。
バン!
弾が壺に着弾し、ゴウッ!
破片が飛び散り、敵四名が吹き飛ばされ、地面に転がる。
爆風の余波で敵の残りが反撃に転じ、数本の投石と矢が飛んでくる――爆音と煙に反応した黒い狼が、カイトの脚を狙って噛みつこうと躍りかかる。
カイトは身を低くし、短銃を素早く向け、バン! と一発を狼の肩に放つ。
狼は銃声の衝撃に反応して身を捻り、弾をかすめて地面を蹴り、即座に影へ逃げ込む。
リナの矢が狼の尾を掠め、獣の唸りが霧に溶ける中、カイトはバン! と投石手を沈黙させる。
硝煙の黒い雲が視界を覆う中、カイトは混乱を読み、次のポジションへ移動。
廃墟の崩れた壁を盾に、地形を逆手に取り、連射で残りの八名を薙ぎ払う。
バン! バン!
陣形が崩れ、敵リーダーが膝をつく――爆発のショックで目を見開き、命令を叫ぼうとするが声が出ない。
リナの矢が横から援護し、カイトの動きを邪魔しない角度から敵の肩を正確に貫く。
敵の悲鳴が上がり、動きが止まる。
敵の剣が迫るが、カイトは身を翻し、瓦礫の陰からクロスボウに持ち替え。
残りの五名が突進するのを待ち、ボルトの雨を浴びせる。
弧を描く射撃が敵の膝と肩を正確に貫き、悲鳴が上がった。
その時、廃墟の反対側から剣の風切り音が響いた。
テオが現れた――巨大な両手剣を軽々と振り回し、敵の重装兵二名を盾ごと真っ二つに切り伏せる。
鉄の盾が悲鳴のような軋みを上げ、血と破片が飛び散る音に反応した黒い狼が、テオの脇腹を狙って再び躍りかかる。
テオは剣を横薙ぎに振るう――狼は爪を立てて跳ね返すが、刃の風圧に押され、地面を滑って距離を取る。
カイトは振り返り、吐き捨てる。
「遅いぞ。全員俺がやるところだ」
テオの剣が敵の背後を薙ぎ、穏やかな声で言い返す。
「残念。裏には倍いたぞ」
敵のリーダーが振り返り、驚愕の表情を浮かべる。
「同盟の……犬め。天罰を受けろ」
だが、カイトの短銃が額を捉える。
男は膝をつき、震える声で懇願する。
「待て……すべて……話す……」
バン!
硝煙が再び広がり、敵リーダーの額をかすめ、額から血を流して気絶した衝撃に反応した黒い狼が、最後の突進を仕掛ける――リーダーの倒れる影に紛れ、カイトの喉元を狙う。
カイトは短銃を素早く構え、バン! と至近距離で撃ち抜く。
狼は胸を撃たれ、悲鳴のような咆哮を上げて転がるが、なおも這いずって逃げようとする――しかし、リナの矢がその背を正確に貫き、獣は霧の中に沈む。
カイトは銃口を下ろした。
カイトは周囲の死体を素早く確認する。
リナの視線が、カイトを捉える。
テオが彼女の肩を叩く。
「詳細は後ほど」
彼女は小さく頷いた。




