表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Abyss Eternal ; Golden Witch  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

第19話

 塔の残骸が崩壊する音が、カイトの耳に響いていた。

 ガルドが追ってくる。

 ドスン、ドスン。

 岩化した巨体が、瓦礫を踏み砕き、路地を埋め尽くす。

 人海が城壁を叩く叫びが遠く混じる。

 カイトは息を荒げ、短銃を握り直す。

「逃げるな、戦え!」

 巨漢の拳が、空を裂く。

 衝撃波が路地の壁を削り、岩の破片がカイトの頰を掠める。

 彼は身を翻し、廃墟の路地を駆ける。

 分断の渦中、岩の鬼の足音が、近づく。

 巨体が、路地の壁に突っ込む。

 ゴガァン!

 石壁が引き裂かれる音が響き、巨漢の両手が瓦礫ごと壁を剥ぎ取る。

 筋肉が膨張し、魔力の赤光が体を包む。

 剥ぎ取った壁の塊を、軽々と投げ飛ばす。

 ドン!

 瓦礫の山が広場を埋め、煙塵が立ち上る。

 逃げ道が、一瞬で失われた。

 カイトの背中が、冷たくなる。

「くそ……こんなところで」

 短銃を構え、振り返る。

 巨体が、路地を埋め尽くす。

「終わりだ!」

 拳が振り下ろされ、大地を震わせる。

 ドゴォン!

 衝撃波がカイトを襲い、体が瓦礫に叩きつけられる。

 息が詰まり、視界が揺らぐ。

 巨漢が、迫る。

 岩の皮膚が、赤く輝き、コアの熱が空気を歪める。

 カイトは這い上がり、引き金を絞る。

 バン!

 通常弾がガルドの膝を掠め、岩の欠片を削る――が、表面を滑り、跳ね返される。

 火花が散り、弾丸は無力に路地に転がる。

「ほら……もっとこいよ!」

 巨漢の拳が、再び振り上げられる。

「……想像以上に厄介だな」

 カイトの指が、シリンダーを開く。

 残りの貫通弾――これで、決める。

 命中させるには接近せねばならない。

 カイトは体を低くする。

 瓦礫の影を縫い、巨体へ迫る。

 接近戦だ。

 路地の狭さを逆手に取り、敵の質量を封じる。

 間合いを狭める。

 シリンダーに貫通弾を装填済み。

 ガルドのコアを、視界に捉える。

 巨漢の掌が、横薙ぎに振り抜かれる。

 カイトは身を屈め、風圧をくぐる。

「舐めやがって……すり潰してやる!」

 岩拳が、再び振り下ろされる。

 カイトは軌道を予測してかわす。

 衝撃波が空気を爆ぜ、路地の壁を削る。

 ドン!

 カイトは瓦礫の隙間に身を沈め、波を「受け流す」ように低姿勢を保つ。

 彼の指が、引き金を引く。

 バン! バン!

 貫通弾が、巨漢の膝を直撃。

 コアの光が一瞬揺らぐ。

 欠片が飛び散り、巨体の足元がわずかに沈む。

「ぐおっ……!」

 ガルドの顔が、初めて歪む。

 一発目で膝を削り、二発目でコアの外殻に亀裂を入れる。

 カイトの目は冷徹――これで動きが鈍る。

 巨体が、覆いかぶさる。

 コアの赤光が、路地を照らす。

 だが、カイトは既に動いていた。

 瓦礫の山を蹴り、死角から跳躍。

 第三の発射。

 バン!

 貫通弾が、ガルドの肩を貫き、岩化した筋肉を抉る。

 巨漢の腕がわずかに垂れ下がる。

「これで……動きが止まる」

 カイトは着地し、距離を取る。

 ガルドの巨体は、膝を折りかけ、息を荒げている。

 コアの熱が弱まり、空気の歪みが薄れる。

 その時、低い笑い声が、響く。

 聞き覚えのある、野太い声。

 路地の壁が、突然震え、ひび割れる。

 ゴガァン!

 壁が爆ぜ、破片が飛び散る。

 そこから現れたのは――タリアだ。

 彼女の目が、カイトを捉える。

 クックッと笑いが漏れる。

「あの時、邪魔した奴の魔力を感じて飛んできてみたが……見たことある顔だな」

 カイトの息が、止まる。

 ルプスの山岳、千剣との戦い。

 あの光景が、脳裏に蘇る。

 ガルドの咆哮が、爆ぜる。

「……なんだお前は! 邪魔をするなら容赦はせん!」

 ガルドの拳が、彼女に振り下ろされる。

 だが、彼女は動かない。

「悪いな。雑魚には名乗らない事にしてるんだ」

 ただ、拳を軽く構える。

 裏拳――一閃。

 ゴシャァ!

 鈍い音が響き、ガルドの頭部が、吹き飛ぶ。

 岩化した首が、折れ、血と脳漿が散る。

 コアの赤黒い塊が、地面に転がり、爆ぜる。

 ドゴォン!

 ガルドの巨体が、膝から崩れ倒れた。

 死体が、石畳に沈む。

 一撃で、終わった。

 カイトの目が見開く。

 彼女の微笑が、深くなる。

「お前に用がある。黄金の仔飼い」

 彼の背筋が、凍る。

 彼女の瞳が、底知れぬ闇を宿す。

 ドラゴンの咆哮が、再び響く。

 人海の混乱が、広がる。

 三大鬼の牙が、折れた今――新たな嵐が、迫る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ