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Abyss Eternal ; Golden Witch  作者: 川合 佑樹


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第14話

 タリアが地面を叩き、衝撃波で残剣を吹き飛ばす。

「邪魔者はいなくなったな! 楽しもうぜ!」

 シルヴィアのクールな瞳が、氷のように冷たくタリアを射抜く。

 膝をついた体を起こし、残りの魔力線を震わせる。

「あなた……人間に手を貸すなんて」

 タリアの目がカッと見開く。

 やんちゃな笑みが、怒りの歪みに変わる。

「は? 貸したのはお前が先だろ? モテないからってトカゲと乳繰り合ってよぉ。軟弱野郎が!」

 タリアがシルヴィアに突進する。

 巨体が風を切り、塔頂の地面を砕く。

 火蓋が切られた。

 シルヴィアの指が舞い、残剣が嵐のようにタリアを襲う。

 シュルルルルルルッ!

 千本の銀の軌跡が渦巻き、急所――首、目、関節――を精密に狙う。

 剣が螺旋に回転し、風を裂いて迫る。

 だが、タリアは笑う。

 フィジカルが爆発し、剣雨を回避・弾く。

 ガキン! ガキン!

 剣が皮膚に弾かれた。

 彼女は跳躍し、上空から鉄槌を叩き込み、衝撃波で剣の群れを逸らす。

 流れる身のこなし――剣を「受け流し」で回転させ、カウンターの蹴りでシルヴィアのドレスを裂く。

 剣の連鎖が再び迫る中、タリアは身を翻し、避けながら息を荒げて短く呟く。

「力、爆ぜ――体に纏え!《バースト・ストライク》」

 その詠唱が塔頂に響き、彼女の体が赤く輝き、魔力が筋肉に漲る。

 シルヴィアの表情がわずかに乱れ、剣の速度を上げる。

 銀の嵐が塔頂を蜂の巣にし、廃墟の壁を削り取る。

 剣がタリアの周りを螺旋に回り、関節を狙う連鎖攻撃。

 だが、タリアは予知めいた回避でかわし、拳を地面に叩きつけて衝撃波を起こす。

 ドゴン!

 塔頂が揺れ、剣の軌道が乱れる。

 衝撃波がシルヴィアの肩をかすめ、青の血を噴き出させる。

「相変わらず下品な詠唱ね!」

 シルヴィアがぼやき、唇を歪めて剣を増幅させる。

「下品に負ける上品はどんな味だ! 言ってみろ!」

 互角のラッシュ。

 シルヴィアの剣がタリアの腕を浅く斬り、血の線を引くが、タリアの手刀が魔力線を断つ。

 塔頂を破壊の渦に変える。


 高台の岩陰で、カイトはスコープ越しにそれを冷静に観察した。

 魔女弾の照準を合わせ、隙を待った。

「剣の生成パターン……シルヴィアの指が三回曲がるたび、魔力線が青く閃いてる」

 テオが地図の端にメモを走らせる。

 リナが弓を構え直し、頷く。

「剣が再生成する瞬間、渦が一瞬止まるわ。エラ、タイミングを」

 エラの小さな手が双眼鏡を握りしめ、興奮を抑えて声を絞り出す。

「了解! 今、タリアが剣を五本破壊……シルヴィアの指、曲がり始めてる。生成の予兆、青い閃光三回……二回……一回!」

 カイトの指が、引き金に軽く触れた。

 スコープの十字線が、シルヴィアの銀髪の隙間――額の中心――を捉えた。

 息を止め、練習のように何度も空撃ちした。

 カチ、カチ、カチ……。

 銃身の重みが、手のひらに馴染んだ。

 前の世界の荒廃した戦地で、何度も繰り返した動作を思い出した。

「次で決める。予備弾二発、即時フォロー準備――エラ、合図を」

 ポーチから魔女弾を一本、慎重に装填する。

 戦いが白熱する。

 タリアの掌打がシルヴィアのガードを砕き、残剣を次々と粉砕。

 ガキン! ガシャン!

 金属の破片が塔頂に降り注ぎ、シルヴィアの息が乱れる。

「この……力馬鹿が!」

 シルヴィアの魔力線が青く閃く。

 再生成の瞬間――渦が止まり、虚空に銀の芽が生えようとする。

「距離三百五十! 風速右から秒速三メートル、補正左から秒速二メートル! シルヴィアの頭、完全に露出――撃て!」

 エラの声が鋭く響く。

 カイトの指が、弾を放つ。

 パン!

 スナイパーライフルから、魔女弾が弧を描いて飛ぶ。

 弾丸は風を切り、シルヴィアの頭部を正確に貫く。

 血煙が爆発的に噴き出し、銀髪を青く染める。

 シルヴィアの瞳が見開かれ、魔力線が乱れ、生成途中の剣が霧散する。

 渦が崩れ、青い閃光が不規則に散る。

 セカンドショット、待機――カイトは構え直した。

 その隙を、タリアが見逃さない。

 巨体が跳ね上がり、拳を振り抜く。

 ゴフッ!

 衝撃波が空気を爆ぜ、シルヴィアの腹部を直撃。

 ドレスが裂け、内臓を抉るような一撃。

 青の血が噴き出し、シルヴィアの体が仰け反る。

「がはっ……タリア……よくも……!」

 彼女の膝が折れ、塔頂の地面に手をつく。

 だが、タリアの目は、弾丸の軌道を追っていた。

 小さな赤黒い影が飛んでくるのを、目で捉えていた。

「横から入ってきやがって……!」

 苛立ちが、彼女の笑みを歪める。

「チッ、面白くねえ。勝負は中断だ。次は俺一人で決着つけるぜ、シルヴィア!」

 タリアはとどめを刺さず、巨体を翻して塔頂を離れる。

 シルヴィアが咳き込み、血を吐きながら立ち上がろうとする。

 彼女の乱れた魔力線が遠隔信号を発し、虚空に青い閃光が一瞬広がる。

 だが、空が暗くなる。

 ゴォォォン!

 山頂にドラゴンの咆哮が響く。

 増援の二頭が、ルプス山岳民の騎士を乗せて降り立つ。

 炎の息が塔頂を焼き払い、熱風が剣の残骸を掻き消す。

「シルヴィア様! 退却を!」

 騎士の叫びが響く。

 ドラゴンの爪が彼女の体を掴み、翼を広げて空へ舞い上がる。

 高台で、四人は息を潜めてそれを見届ける。

 エラの双眼鏡が、ドラゴンを追う。

「撤退確認……シルヴィア、生存。増援二頭、完全脱出」

 リナの弓がゆっくり下り、テオが角笛を握りしめる。

「とどめはさせるか?」

 カイトはスコープを外し、首を振った。

「この状況では無理だ。撤退しよう」

 森道へ、四人は滑り込む。

 背後で、咆哮と炎の残響が山を震わせる。


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