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コメディー短編(現代社会)

勘違いが甚だしい女子高生

作者: 多田 笑
掲載日:2025/11/01

少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

ツッコミ不在のため、ツッコミながらお楽しみください。

「それじゃあ、この間のテストを返すぞ」


 先日行われた中間テスト。


 私は数学Ⅱの出来に、絶対の自信があった。おそらく──いや、確実に100点満点だ。


 きっとクラス全員が驚き、私の前にひれ伏すはず。


 そして今日から私は、“数Ⅱの女神”と呼ばれるのよ……ふふふ。


 あぁ、笑いが止まらない。ふふふ……ふふふ……


「はーはっはー!」


 やばい! 声に出ちゃった!


 みんなが私を見てる……きっと、私の満点を祝福しているのね。うふふ……


「はーはっはー!」


「うるさいぞ!! 平良(たいら)!」


「す……すみません……」


 先生に注意されてしまったわ……。


 でも、先生も照れ隠しをしているのね。私の満点を祝いたい気持ち、わかるわ。


 静まり返る教室。そして先生は、静かに言うのよ──。


 “平良は満点だった”と!!


 さすが先生、演出が上手いわ。私の晴れ舞台を整えてくれているのね。うふふ……


『わっしょい、わっしょい……平良さん、わっしょい!!』


 私の頭の中のクラスメート達も喜んでいるわ。


「はーっはっはー!!」


「平良!! うるさい!」


「す……すみません!」


「それじゃあ、テストを返すぞ。城部(じょうべ)」


「はい」


 いつも満点の城部くん。でも先生、今回は「満点だ」と言わなかった……。


 ということは──! 満点は、私だけ!? ついにこの時が……! “数Ⅱのゴッデス”誕生よ!!


「はーはっはー!」


「平良~! うるさい!!」


「はいっ! すみません!!」


 答案は次々と返されていく。まだ、満点の人はいない。


 そして──


「平良」


「はい!」


 ついに、私の番!!


 先生、わざと焦らしてるのね? ドキドキしちゃう……


「平良~、ミスが多い。ケアレスミス!」


 ……な、なんだと!?


 満点じゃ……ない!?


 答案を見ると──54点。


 み、ミス……ミスかぁ~。“ミス”って、未婚女性につけるあの称号よね? つまり、“ミス平良”。うん、響きは悪くないわ。


 それに先生がおっしゃっていた“ケアレ・スミス”って……


 確か、アメリカの伝説的ロックバンドの名前じゃなかったかしら?


 ということは──私は54点だけど、“ケアレ・スミス”のような存在ということね!


 うふふ……先生、わかってるわね。ロックだわ。うふふ……


「はーはっはー!」


「平良、うるさいぞ!! いい加減にしろ!」


 “良い加減”……つまり、“良い塩梅”にしろってことかしら?


 何を? 笑い声の大きさを? それとも……笑い方?


 きっと、“もっとロックに行け”って意味ね。アメリカのロックバンドに喩えられた私に、相応しい笑いを──!


「はーーーっはっはーーー!!!」


「平良っ!! もう黙れえぇぇぇぇ!!」


 先生がついに絶叫した。


 先生の手の中でチョークが粉々に砕け散る。


 ……ふふ。これも演出なのね。


 ロックには、激情と破壊がつきもの。先生も“ロック魂”の持ち主。そして──私の“ロック魂”に気づいたのね。


 いいわ。見せてあげるわ、私の“ロック魂”を!!


 私の伝説の始まり。


 私のテストの点数もロック──6×9(ロック)=54なのよ!!


「勝負です、先生!! どちらが本物のロッケンローラーなのか……ここで決着をつけましょう!」


「た、平良……何を言っているんだ……?」


「ふふ……とぼけるおつもりですか、先生……。私には分かっているのですよ。先生の握っている2本のチョーク──そう、それが……ドラムスティックのようになっていることを!!」


「な、何ぃ!? なぜ、俺がドラムをやっていることを知っている!?」


「ふふふ……先手必勝よ! 私のロック、魂の叫びを聞きなさい!!」


 そう。ロックンロールといえば、あの言葉──


「シェケナベイベー! 鮭(しゃけ)のベイビィィィィィーー!!! それってつまりィィィ!! イクラだろォォォォォォオ!!」


 ──シーン。


「へへっ……やるじゃねぇか、平良。今度は俺の番だ!! 聞け! 魂のリズム!!」


 先生はそう言うと、両手の掌で自分の胸を叩きはじめた。


 そう──天才ドラマーによる、“ドラミング”が始まったのだ!!


「ウホッ、ウホッ!」


 ドンドコドンドコ!!


「ウホッ、ウホッ!」


 ドンッドンッドンッ!!


 ──その時。


「ギュイイィィィィン!! ジャジャジャーン!!」


「じ、城部くん……!?」


「打楽器だけのロックバンドなんて、かっこがつかないだろ?」


 城部くんが箒をギターのように構え、エレキギターのような音を口で奏ではじめた。


 そう。これが、私たち──ケアレ・スミスの始まり。


「ギュイイィィィィン!! ジャジャジャーン!!」


「ウホッ、ウホッ!」 


 ドンドコドンドコ!!


「ウホホッ!!」 


 ドンッドンッドンッ!!


「シェケナベイベー!! 鮭(しゃけ)のベイビィィィィィーー!! イクラ最高だぜ!!!」



 ──キーンコーンカーンコーン。


 チャイムが鳴った。


「起立!」


 クラス委員の田辺くんが号令をかける。


「礼!」


 ──こうして、その日の授業は終わった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
ツッコミ不在の物語りは、こんな感じなんですね。 読みながら、「なんでやねん」と、セルフツッコミしていました。。新しい!文章の書き方ですね。今度私も書いてみよう。 多分、クラス皆は、心の中で「なんでやね…
田辺君が、しれっと挨拶するのが最高でした。 体育や音楽の授業でも「はーはっはー!」って女子高生は笑ってそうです。(それも見てみたい) 皆んなそろって暴走していく空気感が、とても面白かったです。 …
 多田 笑さん、こんにちは。 「勘違いが甚だしい女子高生」拝読致しました。  ツッコミながら読んで欲しいとの事。お任せ下さい。  今回の試験、絶対に100点だもんね。  ふふふ、みなのもの、私…
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