勘違いが甚だしい女子高生
少しでも笑っていただけたら嬉しいです。
ツッコミ不在のため、ツッコミながらお楽しみください。
「それじゃあ、この間のテストを返すぞ」
先日行われた中間テスト。
私は数学Ⅱの出来に、絶対の自信があった。おそらく──いや、確実に100点満点だ。
きっとクラス全員が驚き、私の前にひれ伏すはず。
そして今日から私は、“数Ⅱの女神”と呼ばれるのよ……ふふふ。
あぁ、笑いが止まらない。ふふふ……ふふふ……
「はーはっはー!」
やばい! 声に出ちゃった!
みんなが私を見てる……きっと、私の満点を祝福しているのね。うふふ……
「はーはっはー!」
「うるさいぞ!! 平良!」
「す……すみません……」
先生に注意されてしまったわ……。
でも、先生も照れ隠しをしているのね。私の満点を祝いたい気持ち、わかるわ。
静まり返る教室。そして先生は、静かに言うのよ──。
“平良は満点だった”と!!
さすが先生、演出が上手いわ。私の晴れ舞台を整えてくれているのね。うふふ……
『わっしょい、わっしょい……平良さん、わっしょい!!』
私の頭の中のクラスメート達も喜んでいるわ。
「はーっはっはー!!」
「平良!! うるさい!」
「す……すみません!」
「それじゃあ、テストを返すぞ。城部」
「はい」
いつも満点の城部くん。でも先生、今回は「満点だ」と言わなかった……。
ということは──! 満点は、私だけ!? ついにこの時が……! “数Ⅱのゴッデス”誕生よ!!
「はーはっはー!」
「平良~! うるさい!!」
「はいっ! すみません!!」
答案は次々と返されていく。まだ、満点の人はいない。
そして──
「平良」
「はい!」
ついに、私の番!!
先生、わざと焦らしてるのね? ドキドキしちゃう……
「平良~、ミスが多い。ケアレスミス!」
……な、なんだと!?
満点じゃ……ない!?
答案を見ると──54点。
み、ミス……ミスかぁ~。“ミス”って、未婚女性につけるあの称号よね? つまり、“ミス平良”。うん、響きは悪くないわ。
それに先生がおっしゃっていた“ケアレ・スミス”って……
確か、アメリカの伝説的ロックバンドの名前じゃなかったかしら?
ということは──私は54点だけど、“ケアレ・スミス”のような存在ということね!
うふふ……先生、わかってるわね。ロックだわ。うふふ……
「はーはっはー!」
「平良、うるさいぞ!! いい加減にしろ!」
“良い加減”……つまり、“良い塩梅”にしろってことかしら?
何を? 笑い声の大きさを? それとも……笑い方?
きっと、“もっとロックに行け”って意味ね。アメリカのロックバンドに喩えられた私に、相応しい笑いを──!
「はーーーっはっはーーー!!!」
「平良っ!! もう黙れえぇぇぇぇ!!」
先生がついに絶叫した。
先生の手の中でチョークが粉々に砕け散る。
……ふふ。これも演出なのね。
ロックには、激情と破壊がつきもの。先生も“ロック魂”の持ち主。そして──私の“ロック魂”に気づいたのね。
いいわ。見せてあげるわ、私の“ロック魂”を!!
私の伝説の始まり。
私のテストの点数もロック──6×9=54なのよ!!
「勝負です、先生!! どちらが本物のロッケンローラーなのか……ここで決着をつけましょう!」
「た、平良……何を言っているんだ……?」
「ふふ……とぼけるおつもりですか、先生……。私には分かっているのですよ。先生の握っている2本のチョーク──そう、それが……ドラムスティックのようになっていることを!!」
「な、何ぃ!? なぜ、俺がドラムをやっていることを知っている!?」
「ふふふ……先手必勝よ! 私のロック、魂の叫びを聞きなさい!!」
そう。ロックンロールといえば、あの言葉──
「シェケナベイベー! 鮭のベイビィィィィィーー!!! それってつまりィィィ!! イクラだろォォォォォォオ!!」
──シーン。
「へへっ……やるじゃねぇか、平良。今度は俺の番だ!! 聞け! 魂のリズム!!」
先生はそう言うと、両手の掌で自分の胸を叩きはじめた。
そう──天才ドラマーによる、“ドラミング”が始まったのだ!!
「ウホッ、ウホッ!」
ドンドコドンドコ!!
「ウホッ、ウホッ!」
ドンッドンッドンッ!!
──その時。
「ギュイイィィィィン!! ジャジャジャーン!!」
「じ、城部くん……!?」
「打楽器だけのロックバンドなんて、かっこがつかないだろ?」
城部くんが箒をギターのように構え、エレキギターのような音を口で奏ではじめた。
そう。これが、私たち──ケアレ・スミスの始まり。
「ギュイイィィィィン!! ジャジャジャーン!!」
「ウホッ、ウホッ!」
ドンドコドンドコ!!
「ウホホッ!!」
ドンッドンッドンッ!!
「シェケナベイベー!! 鮭のベイビィィィィィーー!! イクラ最高だぜ!!!」
──キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴った。
「起立!」
クラス委員の田辺くんが号令をかける。
「礼!」
──こうして、その日の授業は終わった。
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