【短編】杏莉と真由の異世界生活【スピンオフ】
★注意★
魔物や人間相手にも斬り合い殺し合い、命の奪い合いなんかが書かれます。暴力描写が駄目な方はそっと閉じてください。
剣戟の音が響き、打ち合わされた鋼同士が火花を散らす。
「くっ!」
杏莉は、盗賊の頭目が持つ幅広で分厚く重い剣の一撃を、何とか角度をつけて受け流した。
「ほう、今のを凌ぐか。噂に聞く【アンリ・マユ】も伊達じゃないか。だが……連撃だったらどうだ?」
頭目が、見るからに重大剣を軽々と振り回し、右薙ぎから左薙ぎに戻し、左薙ぎから逆袈裟に斬り落としと、次々に剣戟の雨を降らす。
対して杏莉は真面に打ち合う不利を悟り、体捌きでひたすら回避に回る。体力はある。気力もある。しかし打ち合えば凌げても腕にダメージが残る。長剣を保持する握力が尽きれば、無手か短剣を抜くしかない。
「砦は既に落ちている!アンタが最後なのよ!降参しなさいよ!」
杏莉が頭目に叫ぶが、頭目は左の口端を挙げて歪な嗤いを浮かべた。
「ならお前とそのお仲間を全部斬ってやらなきゃなぁ?生かした捕虜もいるんだろ?そいつらは解放してここの“掃除”をさせるとしよう」
頭目が大上段に構えても天井はなお高い。室内とはいえ自在に重大剣を振り回される部屋では構造物を使った立ち回りも出来ない。兜割に振り降ろされた重大剣を杏莉は体捌きで躱し、手にした直剣を右薙ぎに振るって胴に斬撃を入れた。
「ちっ、舐め過ぎたか?」
頭目は脇腹から正中線あたりまでの刃傷を手で拭い、杏莉を睨みつける。様子からするに杏莉がつけた傷は浅かったのだろう。
「討伐隊の応援が来る前に殺ってやるわ!」
杏莉は両手で幅広の長剣を握り直し、決意を込めて頭目を睨み返した。
◆◆◆◆
【伊藤杏莉】と【高橋真由】は保育園からの幼馴染で、いつも一緒にいる。小学校から中学校、高校と上がってきて全て同じ学校に進み、そして今に至っては何故か二人で異世界にいた。
転移して早々に鬱蒼とした森の中からはじまり、土地勘もなく獣の息遣いが聞こえてくる恐怖に身を竦めながらアテもなく歩き。スマホの電波も拾えなければ見覚えのある景色もありはしない。
正しく“遭難者”である。腹も減り喉も渇き、かといって原生林のような場所でサバイバルできるような技術など当然なく。
聞こえてきた人間の話し声らしきものに、助けを求められると杏莉と真由が顔を合わせて頷き合い、声のする方へと目指して走っていった。途中樹の根に足をとられて転んだりもしたが、泣き言など言っている場合ではない。
声の主、女性探索者だけのチームを見付けた時には鎧やローブなどのファンタジーな仮装をしていると一瞬思ったが、武装して抜き身の刃物は偽物にはみえず、若干の恐怖は感じつつも助けて欲しいと訴えた。
実際は言葉も通じなていなかったので、身振り手振りに通じない言葉を併用して必至に頼み込んだ。
その女性探索者のチームは魔物の出る森に非武装で戦闘の心得もなさそうな少女が二人、必死に何かを伝えてくる様子に遭難者と判断し、女性探索者チームが保護してくれた。
街へ案内されてからは紹介された探索者ギルドで掃除や洗濯、給仕など下働きをしながらこの世界のことを勉強させてもらった。言葉も碌に通じていないのに良く雇ってくれたものだと今でも感謝しかない。
言葉や常識、探索者としての身銭の稼ぎ方まで、本当に何から何まで色々と学んだ。そして冒険者として独立したのがつい半年前。高校一年生の春に一五歳で転移してきて、今は一七歳である。
異世界に来ることになった原因は時空間災害がどうこうという難しい説明を受けたこともあったが、要するに帰還の目途はないことだけは理解できた。
ならば異世界でどう生きるのか。
色々試したり考えたたりした結果、杏莉と真由は世話になった探索者ギルドの探索者稼業を選んだ。
異世界にきてはじめて分かったのだが、地球での生活では日の目をみることのなかったであろう杏莉の隠れた才能が開花した。
杏莉は近接戦闘の天稟を持っている。異世界独自の技術であり法則ともいえる【魔力】や【氣】にも適正があった事から、杏莉の戦闘力は常人の枠を軽々と超えていった。
一方、杏莉が近接戦闘の天稟であれば真由は【魔法】の天稟を持つ。
杏莉の指導で自己防衛ができる程度には近接戦闘も修練してはいるのだが、それよりも地球ではありえない不思議な現象を起こす【魔法】に魅了され、日々研鑽に励み実力を伸ばしていた。
魔法とはイメージであり、魔力を素にイメージにより具現化された現象を【魔法】と呼ぶ。
こちらの世界の人間は基本的な発想としてそこで終わってしまうところを、真由は一歩踏み込んで地球と共通する物理的な理論を掛け合わせることで独自性の高い魔法を行使する。
簡単な例を上げると、火を熾す魔法に酸素の供給を掛け合わせて火力を上げたり。また逆に酸素を遮断することで消化を可能としたり。
魔法は飲み水を出したり火種を熾したり、【消臭】や【清浄】などの魔法で清潔感を維持したりと簡単で民間人でも使えるような便利なものもあれば、逆に魔物や人間を殺傷する程の攻性魔法まで幅広くある。
そんなこんなで探索者ギルド所属の探索者となって、二人はあっという間に頭角を現した。
「おはよう、ディアーナ!」
「えとえと、おはようございます。ディアーナ」
異世界で生活しながら実地で覚えた異世界語はコミュニケーションが取れる程度には上達したが、イントネーションや癖は中々抜けないもので。難しい単語とか滅多に聞かない言い回しにも弱く、冗談や揶揄われているのに気付かなかったりするし自分から話す時にもそういう言葉を使えなかったりする。母国語レベルまでの道は果て無く遠い。
因みに杏莉は言葉遣いが粗いというか、高圧的ともとれるような尻上がりの強い語尾になり易く、真由は喋り出しの段階で考えるように言葉を選ぶ癖がついている。
「おはようございます、アンリさん、マユさん」
探索者ギルドの元同僚、看板受付嬢ディアーナが笑顔で二人を迎えた。
「今日は何かある?面白そうな噂とか賞金首の情報とか!」
小声で叫ぶが両立する妙な喋り方で杏莉がディアーナに聞いた。
「噂といえば、隣国の魔境で大氾濫が起こって、最後には大地の大幻獣が出てきたとか聞きましたよ。しかも討伐されたとか」
「大地の大幻獣!物語でしか見た事ないわね!」
「えと、それは見てみたかったです」
「それと、その噂の隣国から後ろ暗い仕事をしているゴロツキが次々とこちらの国に入国してきていると聞きます。アンリさん達みたいにエキゾチックで可愛いらしい女の子は人攫いに注意してくださいね。最近頻発してると衛兵からも通達がありましたから」
「不逞の輩の増加ね!見つけたらボコボコのボコにしてここに連行するわ!」
杏莉がディアーナに親指を立てて返事をするが、ディアーナは眉尻を下げて首を横に振る。
「そこは衛兵の詰め所に連れて行ってくださいね?賞金もそっちが出しますから、こっちに連れて来ても駄目ですよ?」
「分かったわ!衛兵からの不逞の輩狩りの依頼はきていないの?」
「注意喚起だけでしたよ。賞金首の情報はあっちで手配書をみせてもらえば分かると思いますが」
ディアーナの答えに頷く杏莉と真由。
「それと、依頼なら大規模な盗賊狩りの作戦がありますよ。明日の早朝出発なんですけど、受けますか?」
真由が杏莉と顔を見合わせ、頷き合うとディアーナに答える。
「えとえと、参加します。出発の時間帯と集合場所はどこになりますか?」
二人は詳しい話を受注票で受け取り、明日までの荷造りにギルドを後にした。
◆◆◆◆
翌朝、寝起きのストレッチや軽い準備運動をして荷物をまとめて着替え。二人は集合場所に指定されていた南門広場へと赴いた。
大規模な商隊を装った幌馬車の多い構成で、護衛として馬車の周りを見張る徒歩組と、戦闘時になったら馬車から出て来る戦闘待機組に分かれている。
御者すらも護衛が兼ねてやるらしい。
本格的なかなり本腰入れた盗賊狩りのようだ。杏莉と真由は幌馬車の中での待機組に周り、乗り合わせた探索者達に挨拶を交わす。
「げぇっ 【アンリ・マユ】」
乗り合わせた若い男所帯のチームが悲鳴をあげた。
「誰が関羽じゃい!」
杏莉のショートアッパーが悲鳴をあげた男の顎先で寸止めされた。
「カンウってなんだよ言ってねぇよなおい!」
力尽くのストレートな脅しに怯みつつ、若い男ハーラルが呻く。
「お前達には頼まれてもセクハラしねぇから勘弁してくれ!」
ハーラルのチームのリーダー、ウェンストンが二人の間に割って入った。
「ふん!大人しくしておくことね!」
杏莉が手を引っ込め、真由と一緒に馬車の後ろの方に陣取る。ウェンストンのチームにはギルドで給仕の手伝いをしていた頃に尻を撫でられ。激昂した杏莉がハーラルを椅子ごと蹴り倒し、床に転がったところで更に股間を執拗に蹴り潰したことがある。それ以来、探索者達には陰で【ナッツクラッシャー】と呼ばれ恐れられていた。
「えと、商隊の偽装はちゃんと出来ていると思うのだけれど。この規模の探索者達が集まって馬車に詰めてたら目立つよね?盗賊の斥候とかが街で見張ってて連絡したりしないのかな」
真由が気になることを挙げると、杏莉も手を叩いて何度も頷いた。
「実は討伐隊だとバレてたら、盗賊も出てこないわね!」
「あー、あれだ。今回は盗賊の根城も見つけてあるらしいから、道中で襲ってこなきゃ根城に乗り込むんじゃねぇかな?」
ハーラルがだらけた座り方で二人の会話に情報を追加する。
「それじゃ、根城ごと根絶するのね!盗品や攫われた人も助けられれば良いわね!」
杏莉はその情報を聞いて上機嫌になる。難しいことは真由や他の誰かに任せて、杏莉自身は肉体言語で会話する方が向いているのだ。商隊にみせかけたこの囮作戦が失敗しても根城への強襲が二段構えで用意されていると聞き、俄然やる気が湧く。
街を出て三時間程経過したころだった。
向かいからやってきた大所帯の商隊が、擦れ違い様に剣を抜いて御者や護衛に斬り掛かってきた。
「敵襲!!」
響く剣戟音に敵襲を知らせる叫び声。
杏莉達は直ぐに幌馬車から出ると、商人風だったり探索者風だったりする襲撃者へ反撃に出た。
「ひゃっはー!盗賊は斬首だぁ!!」
杏莉は幅広の直剣を抜いて他の護衛と戦っている盗賊を横から後ろから首を刎ね、正面からは心臓を突き刺し、脚を使って敵に捕まらないように機動力で攪乱している。
敵を攪乱、殺傷しつつざっと確認して賊は四〇名規模。こちらの討伐隊は三〇名規模で数では負けているが、実力は決して負けない。
数にモノを言わせて略奪を専門にするような者達は、実際大した実力はない。実力があるならまともに探索者をやるか兵士になるか、傭兵でもやれば良い。
ただ稀に実力者が混ざっていることもある。これは表の顔は別にあり、裏の顔で協力している者だったり、どこかでいざこざを起こして、ほとぼりが冷めるまで身を寄せている者などだ。
真由は負傷者の傷を治癒し、二体一などで苦戦しているところに足場を【泥沼】にするなり【樹縛】で蔦を生やして縛り付けるなりと、アシストして回る。敵部隊の後方に杖を持った魔法使いらしき男が居たので、そこに【氷槍】をこれでもかと連射し、杖持ちの魔法使いは穴だらけになって絶命した。
わらわらと幌馬車から出て来る探索者達に数で逆転され、盗賊が偽装した幌馬車商隊の御者は弓使いや魔法使いが全て倒し切り、一人も逃がさないつもりで囲いを狭めていく。
「げぇっ!【アンリ・マユ】がいるぞ!!」
盗賊からは悪評で名高い杏莉と真由。気付いた盗賊が叫んで及び腰になる。
「だから誰が関羽じゃい!」
杏莉は長い黒髪を編んで縛り上げた髪を躍らせながら、叫んだ盗賊の首に剣の切先を突き込み横に裂いて絶命させる。
幸いなことに今回の強襲部隊には目立った実力者はおらず、数人の捕虜を残して全て返り討ちにした。事前調査で把握している根城に頭目達が残っていることも、捕虜から聞き出せた。
裏付けも取れたことで、奪った馬車を御者をやれる者達が操って根城へと向かう。街道から進路を外れ、遠くに見える丘の裏側へと向かっていった。
◆◆◆◆
盗賊の根城は街道を挟んで丘の裏側にあり、天然の洞穴と丸太小屋を合わせた簡単な砦のようになっていた。戻ってきた馬車隊が同程度の規模の馬車を引き連れて帰ってきたのを確認したのか、砦から迎えの人員がぞろぞろと出てきた。出迎えだけで二〇名。いずれも荷の運び入れ役だろう。だとすると、頭目を含めた大物は砦の内側にいるはずだ。そこに幹部クラスが五人いるはずだ。
無防備に近付いてきた荷下ろし要員達が御者をみて顔色を変えだす。
「おい御者、誰だお前?デニムはどうした?」
「デニムは怪我して荷台で休んでまさぁ」
「怪我だと?というかお前誰だ?どういうことだ?」
幌馬車の行列を明らかに怪しんで、髭面の男が近付いてこない。完全に警戒態勢である。
「……この辺までかねぇ。出るぞ、野郎ども!!」
先頭の御者が大声を上げて合図をすると、幌馬車から次々に探索者が飛び出してきた。
「ッ!!敵襲ッ!!敵襲ッ!!」
御者を怪しんでいた髭面の男が大声を上げ、腰から剣を抜く。御者に扮していた探索者ことウェンストンが御者台に立ちあがると弓を射って、髭面の胸を見事に射抜いた。
そこからはもう乱戦である。討伐隊三〇名に荷下ろしに現れた盗賊が二〇名。数でも質でも勝った戦いである。襲う気で身構えていた討伐隊に、気の緩んでいた盗賊の荷受け係達。
あっという間に制圧が進み、何人もの盗賊が膝をついて武器を放り出し、頭の後ろで手を組んで抵抗を諦めていた。
抵抗を諦めた盗賊達を真由が魔法で拘束していく。その最中、杏莉の姿がみえないことに気付いた。
「杏莉……。まさか砦に飛び込んだ?」
真由は相棒の無茶に眩暈を感じつつ、手早く拘束を進めると砦に駆けこんでいく。
砦の中ではハーラルやウェンストンらの腕利きのチームが、幹部らしき男達と戦っていた。幹部ともなると腕も悪くない。現役の探索者相手に良い勝負を展開している。その盗賊の数は五名。
しかしこの場に杏莉の姿はない。事前情報では幹部五名に更に頭目がいるはずだ。
「あの、杏莉は?!」
真由が焦り気味に訊くと、ハーラルが振り返らず返事をした。
「頭目狙うって奥に行っちまったぞ!」
真由は更に焦りを募らせると、砦の奥へと駆けていく。
◆◆◆◆
「呵々ッ!どうしたどうした、避けてるだけじゃ俺は倒せないぞ?!踏み込みもあめぇ、時間稼ぎなのが丸わかりだぜ!!」
野党の頭目がニヤつきながら杏莉を相手に“遊んで”いる。
「アンタ!それだけの腕があれば真面な仕事もあったでしょ!なんで盗賊なんかやってんのよ!」
杏莉が頭目に叫ぶと、頭目は今までより深く踏み込み、殺すつもりでの兜割を振り降ろしてきた。
それを杏莉は体捌きで身を躱しつつ、剣身で角度を付けて滑らせる。直撃は防げたが、一の腕の筋肉が熱を帯びる程に疲労が重なり、無くなっていく握力に唇を噛む。
本気を出されたらかなり厳しい。多くの討伐隊が囲んでいるというのに諦めた様子がないのも気になる。隠し札があって討伐隊を突破、あるいは返り討ちにできる算段があるとみた。
「……何か切り札隠してるわね?」
「お、分るか。この重くてデカい剣はな、重量が売りじゃねぇのよ。この剣の真価は、氣の通りの良さだ」
頭目はニヤリと笑うと気配が変わる程強いに氣を熾し、剣先まで覆っていく。
「お前ら盗賊相手の討伐隊だろ?まさか神鉄鋼合金製の武器に氣使いまでいるとは思っていなかっただろ、んん?」
頭目のまとった氣の密度、練度、重大剣に漲る氣の気配。どれをみても先程までが本当の意味で“遊び”だったことを悟り、杏莉の背を冷や汗が伝う。
「……隠し札が自分だけとは思わないことね……」
杏莉は両手で構えた幅広の長剣を正眼に構え、呼吸を整える。
「ほう?嬢ちゃんも何かまだ手があるのか?いいぞ、どんどん出してみせろ!」
氣で強化された身体能力で頭目が一気に距離を詰めに来る。重大剣の軌道は大振りの左薙ぎ。下がって良ければ更に踏み込んで折り返しの右薙ぎが来ると予測し。
(ここっ!)
杏莉が氣を爆発させ、同時に魔力で限界まで身体能力を底上げした。それはほんの数瞬の出来事だった。横薙ぎに振られた重大剣を身を低く屈めながら前進して躱し、懐に潜り込まれた頭目が膝蹴りを繰り出すのを身を捩じって躱す。
そして地を這うように後ろに振りかぶっていた長剣を左下から右上へ。右斬り上げの軌道で頭目の首筋へと吸い込まれ--その首を刎ね飛ばした。
頭目が崩れ落ちるのを見ることなく、杏莉も両膝から崩れ落ちる。そこに頭目の手を離れた重大剣が降ってくるが、杏莉は全身を瞬間的に酷使したことで反応できずにいた。
「杏莉!!」
頼もしい相棒の声が聞こえた瞬間、杏莉の周囲を冷気が包んだ。地面に倒れ込みつつ、それが真由の【氷壁】によるフォローだったと気付く。
「杏莉、また一人で無茶して!!どうせ魔力と氣の爆発技使ったんでしょ?!フォローできない場所で使わないでって言ってるでしょ!!」
真由が杖で杏莉の尻を何度も叩きながら怒りを発散させる。
「痛い、痛いから。ごめんて。全身痛いんだよ?お尻が腫れる程叩かないで?」
「うっさい、この馬鹿ちん!!」
一際強く尻叩きをしてから、真由は杏莉の隣に座り込み【治癒魔法】をかけはじめた。
「う~ん、染みるわ~。さすが真由。魔法の天才だね!」
杏莉が雑に真由を褒めたがそれは逆効果となり、頭頂部に手刀をくらうことになった。
「あ~も~、近接戦闘の天才は良いことだろうけど、その戦闘狂ぶりはどうしたの?一緒に目覚めたの?剣の道とは死ぬことと見付けたりなの?」
「真由が治せるくらいの怪我は覚悟してるんだけど、死ぬのは嫌かな?とりあえず頭目の遺体は絶対確保だね。これは絶対良い賞金かかってるよ?」
「杏莉の命の方が高いと思うけどね?」
不機嫌です、というオーラを隠さずいつまでも真由がぷりぷりと怒り続けるのだった。
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