森の奥には
鬱蒼とした森が広がる地域。”森の奥には野獣が住んでいる城がある。”それはこの地方に住んでいる人々に伝わる古い古い言い伝えだった。悪役令嬢、リリス・ローズは身に覚えのない罪で断罪され、悪役令嬢の烙印を押された。王子の新しい許嫁、マリアを陥れた罰として森の野獣の生贄にされてしまった。彼女は森の奥へと目隠しをされ、ロープで拘束されたまま運ばれた。野獣の城の前に来てようやく目隠しと拘束が解かれる。
「じゃあな!くそ女!!」
「二度と姿を見せないで!」
「野獣に食われて死ね!」
散々な言われようだ。私は罪など犯していないと言うのに……。リリスはそう思いながら野獣の城を見つめる。
「どうすれば……。」
辺りはだんだんと暗くなる。リリスは暗闇に怯えていた。こんな森の深くに1人でいるなんて怖い。そう、思っているとリリスの匂いを察知したのか獣がやってくる。
「きゃ?!」
そこには飢えて腹をすかした狼の群れがリリスを取り囲んでいた。リリスは、殺される!そう思った。リリスに狼達が飛びかかる。リリスはなんとか逃げようとするが逃げ場がない。絶対絶命のピンチ。その時、城の扉が開いた。のそのそと何かが歩いてくる。そこにいたのは野獣だった。野獣は火を持っていてその火に怯えて狼達は逃げていった。
「あの、助けて、くれたの?」
「助けた?いや、俺の晩餐を横取りされるのが我慢ならなかっただけだ。」
そういうと野獣はリリスの腕を掴んで城へと連れてゆく。
「きゃっ!」
強い力で、引っぱられる。腕に痛みが走った。薄暗くて野獣の顔は見えにくかったが恐らく食べられるのだろう。リリスは恐怖で震えた。しばらく引っ張られて歩いていると野獣がある部屋の前で止まった。そこに放り込まれる。きっとこれから料理されて食われるのだろう。リリスは絶望した。でも、ただ食われるなんて嫌だ。抵抗してやる!そう思ったリリスは俯いていた顔をあげる。しかし、リリスにとって予想と違う事があった。そこにいたのは毛むくじゃらの物体だ。
「……」
「どうした?恐怖のあまり声もでないか?」
「かわ……」
「?」
リリスの目が輝いた。
「かわいいーー!!」
「?!」
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