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第九十九話:新たなる脅威の輪郭

陽介の分析を受け、一行は噂の一つを確かめるため、最も近い事件現場である「住民が消失した」という北の村へと向かった。数日後、彼らがたどり着いた村は、まさにゴーストタウンと化していた。家々には生活の痕跡が残されたままだが、人や家畜の姿はどこにもなく、不気味なほどの静寂に包まれていた。


「これは……本当に、人が消えたみたいだわ。争った形跡も、魔物に襲われた跡もない……」


リズが、息を呑みながら言った。


一行が村の中心部へと進むと、そこで異様な光景を目にする。村の広場の中央に、黒曜石のような、しかしどこか有機的な質感を持つ、高さ3メートルほどの黒い尖塔が突き立っていたのだ。その尖塔からは、これまで感じたことのない、冷たく無機質な魔力が、まるで心臓のように脈動しながら周囲に放たれている。


「なんだ、これは……? 魔王軍の遺物か?」


バルドが、大地の盾を構えながら警戒する。


「いいえ……これは、魔王の魔力とは全く質の異なるものです。もっと冷たくて……まるで、世界の理そのものを否定するかのような……」


ルーカスが、知恵の木の杖を握りしめ、震える声で言った。杖は、黒い尖塔から発せられる異質な魔力に反応し、警告を発するように明滅を繰り返している。


陽介が、聖剣カレドヴルフを手に尖塔へ近づこうとした、その瞬間だった。尖塔の表面が揺らめき、そこから半透明で、輪郭の曖昧な影のような人型の存在が数体、音もなく現れた。それらは、アンデッドでも魔物でもない、全く未知の存在だった。


「来るぞ!」


陽介の叫びと同時に、影たちが滑るように襲いかかってきた。アリアのエクスカリバーが影の一体を切り裂くが、影はすぐに元の形に戻ってしまう。物理攻撃がほとんど効いていないようだった。


「くっ……なんて奴らだ!」


「ヨウスケさん! あの影、光の魔法には少しだけ反応しています! それと、あの尖塔から魔力を供給されているみたいです!」


ルーカスの声に、陽介は活路を見出した。


「アリアさん、ルーカス、光の魔法であの影たちの動きを封じてくれ! 俺とバルドさん、リズで、あの尖塔を破壊する!」


陽介の的確な指示のもと、戦闘は新たな局面を迎える。アリアとルーカスが、エクスカリバーの光と聖なる魔法で影たちの動きを鈍らせ、その隙に、陽介とバルドが渾身の力で黒い尖塔を攻撃する。リズの矢もまた、尖塔の僅かな亀裂を的確に捉え、破壊を助けた。


数度の強力な攻撃の末、黒い尖塔は甲高い悲鳴のような音を立てて砕け散った。すると、影たちもまた、断末魔の叫びと共に霧のように消え去っていった。

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