表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/165

第九十六話:再会の森、戸惑いの勇者

皆既月食の夜、神隠しの山で陽介の身体を包んだ眩い光は、彼の意識を再び異世界へと運んだ。空間が歪むような感覚と、魂が引き延ばされるような浮遊感の後、彼の足はふわりと柔らかな苔の上に降り立った。


目を開けると、そこは月明かりに照らされた、静かで幻想的な森だった。見上げる夜空には、血のように赤い月ではなく、二つの穏やかな月が浮かんでいる。鼻をつくのは、懐かしい土と草いきれの匂い。


「……戻って……これたのか……?」


陽介は、呆然と呟いた。しかし、すぐに身体の異変に気づく。魔王を倒した時に感じた、あの万能感に満ちた力は消え失せ、聖剣カレドヴルフも手元にはない。そこにあるのは、元の世界でトレーニングを再開し、少しばかり体力がついた程度の、三十路の男の身体だけだった。


(力は……失われたのか。いや、あるいは、この世界に帰還するための代償だったのかもしれない)


だが、後悔はなかった。再びこの世界の空気を吸えたこと、仲間たちと再会できるかもしれないという希望が、何よりも彼を満たしていた。


その頃、王都で英雄としての務めを果たしていたアリアは、腰に差したエクスカリバーが、主を求めるかのように熱く脈動しているのを感じていた。剣は、大陸の東方、古くから「再会の森」と呼ばれる伝説の場所を指し示している。


「この感覚……まさか……」


アリアは、いてもたってもいられなくなり、馬を走らせた。彼女のただならぬ様子に気づいたバルド、リズ、ルーカスもまた、それぞれの場所から彼女の後を追う。彼らの心にもまた、同じ予感が宿っていたのかもしれない。


そして、月明かりの森の中、アリアは信じられない光景を目にする。そこに立っていたのは、一年前に別れたはずの、見慣れたスーツ姿ではない、旅人風の服を着た男。


「……ヨウスケ……?」


震える声で名を呼ぶと、男はゆっくりと振り返り、懐かしい、少し困ったような笑みを浮かべた。


「……よぉ、アリア。久しぶりだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ