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第九十五話:サラリーマンの新しいプロジェクト

元の世界で陽介が新たな希望を見出していた頃、アリアたちは、平和を取り戻した世界で、それぞれの道を歩み始めていた。魔王が倒されたことで、世界は急速に復興し、人々には笑顔が戻っていた。アリアは「救国の英雄」として称えられ、バルドは故郷のドワーフたちに新たな技術を伝え、リズとルーカスもまた、それぞれの故郷で人々のために尽くしていた。


しかし、彼らの心には、常に陽介の不在が大きな影を落としていた。平和な日常を送れば送るほど、あの三十路の男がもたらしてくれた、刺激的で、かけがえのない日々を思い出してしまうのだ。


「……ヨウスケ。あなた今、どうしているのかしら……」


アリアは、夜空を見上げながら、そっと呟いた。彼女の持つエクスカリバーは、時折、主を求めるかのように微かな光を放つことがあった。


そして、元の世界。


陽介は、全ての準備を整え、皆既月食の夜、例の「神隠しの山」の山頂に立っていた。手には、博物館から半ば強引に借り受けてきた古代の遺物を握りしめている。


彼は、自らの仮説と計画に基づき、地面に古代ルーン文字を組み合わせた魔法陣を描き、その中央に立った。冷たい夜風が、彼の頬を撫でる。


(失敗すれば、ただの馬鹿な男の、壮大な勘違いで終わる。だが、万に一つの可能性があるのなら、俺はそれに賭ける)


月が、ゆっくりと地球の影に隠れ始め、世界が不気味な赤色に染まっていく。陽介は、目を閉じ、仲間たちの顔を一人一人思い浮かべた。


アリア、バルド、リズ、ルーカス……。


(待っててくれ、みんな。俺は、必ず帰る。お前たちのいる、あの世界へ!)


陽介は、魔法陣の中央に古代の遺物を置き、聖剣の力をイメージしながら、ありったけの想いを込めて叫んだ。


その瞬間、遺物と魔法陣が眩い光を放ち始め、陽介の身体を包み込んだ。空間が歪み、視界が白一色に染まる。


三十路リーマンの、人生を賭けた最大のプロジェクトが、今、始動した。その先に待つのが、再会か、それとも永遠の別れなのか、まだ誰も知る由もない。

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