第九十四話:微かな共鳴、一筋の希望
陽介が、出所不明の古代遺物に近づいた、その瞬間だった。
彼の身体の奥底で、ほんの微かに、しかし確かに、懐かしい感覚が蘇った。それは、聖剣カレドヴルフが共鳴する時に感じた、あの魂が震えるような感覚に酷似していた。あまりにも微弱で、すぐに消えてしまいそうなほどだったが、陽介はそれを聞き逃さなかった。
(この感覚……間違いない! あの世界と繋がっている……!)
絶望の闇の中に、一筋の光が差し込んだかのようだった。陽介は、学芸員に頼み込み、その遺物の詳細な記録を見せてもらった。記録によれば、その遺物は数年前、ある山中で行われたダム建設の際に、偶然発見されたものだという。発見された場所は、古くから「神隠しの山」として地元の人々に恐れられており、発見日には、奇しくも大規模な流星群が観測されていた、と。
神隠し、流星群、そして古代の遺物。
点と点が、ゆっくりと繋がり始めていく。陽介は、いてもたってもいられなくなり、その日のうちに有給休暇を申請し、遺物が発見されたという山へと向かう準備を始めた。
仲間たちに、もう一度会えるかもしれない。
その可能性だけで、陽介の心に再び火が灯った。諦めるのはまだ早い。元の世界で培ったリーマンとしてのスキル――情報収集能力、分析力、そして目標達成への執念――を、今こそ最大限に発揮する時だ。
彼は、図書館に通い詰め、古文書や郷土史を読み漁った。インターネットを駆使し、天文学のデータや、オカルトフォーラムの書き込みまで、あらゆる情報を収集した。その姿は、まるで新たなプロジェクトに挑む、一人の熱心なサラリーマンそのものだった。
数週間後、陽介は一つの仮説にたどり着いた。あの山は、二つの世界の境界が不安定になる特異点であり、特定の天体の配置――例えば、次の大規模な皆既月食の夜――に、あの遺物を触媒として使えば、再び異世界への道が開かれるかもしれない、と。
それは、あまりにも荒唐無稽で、何の保証もない賭けだった。しかし、陽介には、それしか道は残されていなかった。




