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第九十一話:エピローグの世界、一人の男のプロローグ

魔王を貫いた究極の合体奥義「ファイナル・クロス・レイド」。その凄まじい光が収まった時、玉座の間にあったのは完全な静寂と、塵一つ残さず消滅した魔王の気配だけだった。


そして、仲間たちの中心で、世界の救世主となったはずの神谷陽介の姿もまた、その光と共に掻き消えていた。


「ヨウスケ……?」


アリアのか細い声が、広大すぎる玉座の間に虚しく響く。彼女の手の中に残されたのは、陽介から託された月光の竪琴と、彼のものだった聖剣カレドヴルフが淡い光の粒子となって消えていく、その残滓だけだった。


「嘘……でしょ……? どこに行ったのよ、ヨウスケ!」


リズが叫び、ルーカスは「ヨウスケさん!」と泣きじゃくりながら、陽介がいた場所へと駆け寄るが、そこにはもう何もなかった。


バルドは、砕け散った玉座を見つめ、全てを察していた。

「……帰ったのやもしれん。彼奴が元いた、別の世界へとな……」


その言葉は、残酷な真実として仲間たちの胸に突き刺さった。魔王を倒した歓喜は、一瞬にして、かけがえのない仲間を失ったという深い喪失感に塗り替えられていく。


ゴゴゴゴ……。


主を失った魔王城が、最後の悲鳴を上げるかのように激しく揺れ動き始めた。天井から巨大な瓦礫が降り注ぎ、床には亀裂が走る。


「いかん! 城が崩れるぞ! ここから脱出する!」


バルドが叫び、悲しみに打ちひしがれる仲間たちの腕を掴んだ。アリアは、涙を堪え、唇を噛みしめながら、リーダーとして最後の指示を出す。


「……ええ。行きましょう。そして、生きなければ。彼が……ヨウスケが命を懸けて守ってくれた、この世界で」


一行は、互いを支え合い、崩壊する魔王城を後にした。城の外に出ると、世界は一変していた。大陸を覆っていた不吉な暗雲は晴れ渡り、空からは何年ぶりかという、温かい太陽の光が降り注いでいた。その光は、まるで世界の再生を祝福しているかのようだった。


世界は救われた。しかし、その中心にいたはずの英雄は、もうどこにもいない。


彼らの戦いは終わった。しかし、それぞれの心には、陽介という一人の男が遺した、大きすぎる空洞と、決して消えることのない温かい記憶が刻み込まれていた。それは、一つの物語の終わりであり、そして、残された者たちが紡いでいく、新たな物語の始まりでもあった。

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