第八十三話:バルドの死守・死霊の軍勢
暗く湿った地下水路で意識を取り戻したバルドは、無数のアンデッド系の魔物に囲まれていた。スケルトン、ゾンビ、グール……それらは、かつてこの魔王城で命を落とした兵士や、あるいは罪のない人々の成れの果てなのかもしれない。そして、そのアンデッドたちを操るかのように、禍々しいオーラを放つ骸骨の魔術師が、水路の奥の高台に佇んでいた。彼こそ、魔王軍四天王の一人、「死霊の王ネクロード」だった。
「ククク……ドワーフの生き残りか。その頑強な肉体、我がコレクションに加えるにはちょうど良い。お前も、我が忠実なる僕となるのだ」
ネクロードが、その骨張った指を振るうと、アンデッドたちが一斉にバルドへと襲いかかってきた。数は圧倒的で、しかも一体一体が強力な怨念を纏っている。
「フン、骸骨風情が、粋がるな。俺のこの大地の盾の前に、貴様ら亡者の群れなど敵ではないわ」
バルドは、大地の盾を構え、アンデッドの群れへと突進した。盾から放たれる大地のオーラが、アンデッドたちの邪気を払い、その動きを鈍らせる。バルドの剛剣が唸りを上げ、次々とアンデッドを薙ぎ払っていく。
しかし、ネクロードの魔力は強大で、倒しても倒しても新たなアンデッドが地面から湧き出してくる。終わりが見えない戦いに、さすがのバルドも徐々に疲労の色を見せ始めた。
(ちっ、キリがない……! このままでは、体力が持たんぞ……! なんとかして、あの本体の骸骨を叩かねば……!)
バルドは、アンデッドの波状攻撃を捌きながら、ネクロードへと近づく隙を窺っていた。しかし、ネクロードは巧みに距離を取り、強力な死霊魔法でバルドを攻撃してくる。地面から無数の骨の手が伸び、バルドの動きを封じようとし、呪いの言葉が彼の精神を蝕もうとする。
「無駄だ、ドワーフよ。お前は、この無限に湧き出る死霊の軍勢の中で、力尽きる運命なのだ。仲間もいないお前に、何ができるというのだ?」
ネクロードの嘲笑うような声が、地下水路に響き渡る。
(仲間がいない……? フン、それはどうかな)
バルドの脳裏に、陽介、アリア、リズ、ルーカスの顔が浮かんだ。彼らと共に戦ってきた日々の記憶が、バルドに新たな力を与える。
「俺は一人ではない! 俺の背中には、信じる仲間たちがいる! そして、この大地の盾には、ドワーフの誇りと、仲間を守るという誓いが宿っているのだ!」
バルドが雄叫びを上げると、大地の盾が黄金色の輝きを増し、その表面に刻まれた精霊の紋様が脈動し始めた。盾から溢れ出す大地のエネルギーが、バルドの全身を包み込み、彼の傷を癒し、失われた力を回復させていく。それは、大地の盾に秘められた、持ち主の不屈の闘志に応えて発動する、自己修復と能力増幅の力だった。
「な、なんだと……!? その盾、まだそんな力が……!」
ネクロードが驚愕の声を上げる。バルドは、漲る力でアンデッドの群れを強引に突破し、一直線にネクロードへと迫る。
「覚悟しろ、骸骨野郎! お前の魂ごと、この俺が砕いてくれるわ!」
死霊の王との戦いは、バルドの不屈の魂と大地の盾の力が試される、壮絶なものとなろうとしていた。




