第七十五話:魔王城への道、ついに開かれる
幻惑の妖姫リリスを打ち破り、魔王軍最後の砦「幻影城」を陥落させた陽介たち一行。三つの古のアーティファクトの力と、仲間たちとの揺るぎない絆が、最も厄介とされた幻術使いを打ち破る鍵となった。
リリスが消滅した後、幻影城の最深部には、魔王城へと続く唯一の道を示す、古びた転移魔法陣が静かに輝きを放っていた。その魔法陣は、リリスの幻術によって巧妙に隠されていたが、彼女の魔力が消え去ったことで、その姿を現したのだった。
「ついに……魔王城への道が開かれたのね……」
アリアが、感慨深げに魔法陣を見つめる。長かった旅も、いよいよ最終局面を迎えようとしていた。
「ああ。だが、ここから先が本当の戦いだ。魔王は、これまでのどの敵よりも遥かに強大だ。そして、奴の側近である四天王もまだ健在のはずだ」
バルドが、気を引き締めるように言った。
陽介は、聖剣カレドヴルフを握りしめ、仲間たちの顔を見渡した。それぞれの表情には、疲労の色と共に、これから始まるであろう最後の戦いへの覚悟と、そして微かな不安が浮かんでいた。
(終末のビジョン……。あれを覆すためには、俺たち全員の力が必要だ。そして、俺自身の選択も……)
陽介の脳裏には、魔王を倒した後に自分がどうなるのか、そして元の世界へ帰るという願いと、この世界で得た仲間たちとの絆の間で揺れ動く、複雑な想いが去来していた。
「みんな、準備はいいか? この魔法陣を起動させれば、もう後戻りはできない」
陽介の問いかけに、仲間たちは力強く頷いた。
「当たり前よ、ヨウスケ。私たちは、最後まであなたと一緒だわ」
アリアが、陽介の手をそっと握った。その手の温もりが、陽介に勇気を与える。
「おう! 魔王だろうが何だろうが、俺たちがぶっ飛ばしてやるぜ!」
リズも、いつものように威勢よく言った。
「僕も、全力で戦います! みんなとなら、きっと勝てます!」
ルーカスも、小さな胸を張って言った。
「フン、死に場所は、お前たちと一緒ならどこでも構わん」
バルドもまた、静かに闘志を燃やしていた。
陽介は、仲間たちの言葉に深く頷き、魔法陣の中央へと進み出た。聖剣カレドヴルフを掲げ、三つのアーティファクトの力を解放する。月光の竪琴が清らかな音色を奏で、大地の盾が力強いオーラを放ち、竜の宝玉が生命の輝きを増す。そして、星詠みの護符が、それら全ての力を束ね、増幅させる。
魔法陣が眩い光を放ち始め、陽介たちの身体を包み込む。次の瞬間、彼らの姿は幻影城から消え去り、魔王が待ち受ける最終決戦の地、魔王城へと転移していた。
世界の運命を賭けた、三十路リーマンと仲間たちの最後の戦いが、今、まさに始まろうとしていた。そして、その戦いの果てに、陽介はどのような選択をするのだろうか――。




