第六十八話:剛力の将軍ブルドー・圧倒的防御力
陽介たちの奇襲は、見事に成功した。訓練中の魔族兵たちは不意を突かれ、混乱に陥る。その隙に、陽介とアリアがブルドー将軍へと斬りかかり、バルドが他の魔族兵たちの進攻を食い止める。リズとルーカスは後方から的確な援護射撃と魔法攻撃で敵の数を減らしていく。
「何奴だ! 我が鉄壁の要塞に忍び込むとは、いい度胸だ!」
ブルドー将軍は、巨体に似合わぬ素早さで陽介たちの攻撃を回避し、その手に持った巨大な戦斧を振り回して反撃してきた。その一撃は、風哭の砦のゲイル将軍の風の刃とは異なり、純粋なまでの破壊力を持っていた。戦斧が床に叩きつけられるたびに、地響きと共に衝撃波が広がり、立っていることすら困難になる。
「くっ……! なんという馬鹿力だ……! まともに食らったら、大地の盾でも防ぎきれんかもしれんぞ!」
バルドが、ブルドーの戦斧を受け止め、呻き声を上げる。大地の盾はブルドーの攻撃を防いではいるものの、その衝撃はバルドの全身を揺るがす。
「私が前に出るわ! ヨウスケ、援護を!」
アリアがエクスカリバーを構え、ブルドーの懐へと飛び込む。光の刃がブルドーの鎧に何度も叩きつけられるが、甲高い金属音を立てるだけで、ほとんどダメージを与えられない。ブルドーの鎧は、特殊な鉱石で鍛え上げられているらしく、並大抵の攻撃では傷一つ付かないようだった。
「無駄だ! 我が『魔鋼鉄の鎧』は、いかなる攻撃も通さん! そして、我が力の前には、貴様らなど赤子同然よ!」
ブルドーは嘲笑い、戦斧を横薙ぎに振るった。アリアはかろうじてそれを避けるが、その風圧だけで数メートルも吹き飛ばされてしまう。
(なんて防御力だ……。これでは、聖剣の力をもってしても、決定打を与えるのは難しい。何か、あの鎧を貫く方法を見つけなければ……)
陽介は、聖剣カレドヴルフを構えながら、ブルドーの動きと鎧の構造を冷静に観察していた。元の世界で、難攻不落のセキュリティシステムや、複雑な契約条件の抜け穴を見つけ出してきた分析力が、ここでも試されている。
「ルーカス! あの鎧、何か魔法的な弱点はないか!? 熱に弱いとか、特定の属性に脆いとか!」
「調べてみます! ……ダメです! あの鎧、強力な魔法耐性も持っています! 物理攻撃も魔法攻撃も、ほとんど効果がありません!」
ルーカスの報告に、一行の間に絶望の色が広がりかけた。しかし、陽介は諦めていなかった。
(どんな完璧に見えるシステムにも、必ずどこかに脆弱性はある。あの鎧も、全ての攻撃を完全に無効化できるわけではないはずだ。関節部分、あるいは……鎧の内部か?)
陽介は、ブルドーの攻撃パターンの中に、ほんの僅かな隙間と、鎧の特定の箇所が他の部分よりも薄くなっていることを見抜いた。それは、常人では気づかないほどの微細な違いだったが、鋭敏になった陽介の五感と、聖剣の共鳴がそれを捉えていた。
「アリアさん、バルドさん! あの将軍の右肩の付け根と、左膝の裏側! あそこが比較的装甲が薄い! そこを集中して狙うんだ! リズ、ルーカス、俺たちが隙を作る! その瞬間に最大火力の攻撃を叩き込んでくれ!」
陽介の的確な指示に、仲間たちは再び闘志を取り戻した。剛力の将軍ブルドーの圧倒的な防御力を打ち破るための、困難な戦いが続く。




