第六十六話:次なる砦へ・鉄壁の将軍の情報
風哭の砦を陥落させ、囚われていた人々を解放した陽介たち一行は、しばしの休息の後、魔王城へと続く第二の砦に関する情報収集を開始した。解放された人々の中には、魔王軍の内部事情に詳しい者や、他の砦から逃れてきた者もおり、彼らから断片的ながらも貴重な情報を得ることができた。
「次なる砦は……『鉄壁の要塞』と呼ばれております……。その名の通り、あらゆる物理攻撃を寄せ付けぬ、難攻不落の城塞だと……」
かつて魔王軍に徴用されていたという老兵は、恐怖に顔を歪ませながら語った。
「その砦を守るのは、『剛力の将軍ブルドー』。岩をも砕く怪力と、鋼鉄の如き肉体を持つ、魔王軍でも屈指の猛将です。疾風のゲイル将軍とは対照的に、小細工を嫌い、ただひたすらに圧倒的な力で敵を蹂躙するとか……」
「剛力の将軍ブルドー……。力自慢の相手というわけか。バルドさんの出番かもしれないな」
陽介は、傍らで大地の盾の手入れをしているバルドに目をやった。バルドは、無言で力強く頷いた。その瞳には、強敵との戦いを前にした武者震いのようなものが感じられた。
アリアは、月光の竪琴を奏でながら、情報を整理していた。
「鉄壁の要塞は、山岳地帯の奥深く、巨大な鉱山と一体化するように築かれているそうです。内部は入り組んだ坑道が無数に走り、強力なゴーレムや土のエレメンタルが守りを固めているとか。そして、ブルドー将軍自身も、大地の力を利用した強力な防御魔法を使うと……」
(鉱山と一体化した要塞……。閉鎖的で、視界の悪い場所での戦闘が予想されるな。ブルドー将軍の防御力も厄介だ。力押しだけでは、こちらの消耗が激しくなる。何か、奴の防御を崩す策が必要だ)
陽介は、元の世界で担当した難攻不落と思われたプロジェクトを、様々な角度から分析し、突破口を見つけ出した経験を思い出していた。どんな鉄壁にも、必ずどこかに弱点や構造的な欠陥があるはずだ。
「リズ、ルーカス、お前たちには、今回も重要な役割がある。リズ、坑道内の罠の解除や、敵の配置を探る偵察を頼めるか? ルーカス、ブルドー将軍の防御魔法の属性や、ゴーレムの動力源など、魔法的な弱点を見つけ出してほしい」
「任せて! こういう細かい作業は得意なのよ!」
「はい! 僕の魔法と、この杖の力で、必ず弱点を見つけ出します!」
リズとルーカスも、それぞれの役割を理解し、力強く答えた。
一行は、解放された人々から食料や情報を分け与えられ、彼らの感謝の言葉を背に、鉄壁の要塞へと向かった。道中、陽介は終末のビジョンが再び脳裏をよぎるのを感じた。仲間たちが倒れていくあの光景……。それを打ち消すように、彼は聖剣カレドヴルフを強く握りしめた。
(必ず、未来を変える。そのために、俺たちは進むんだ)
魔王軍第二の砦「鉄壁の要塞」。そこに待ち受ける剛力の将軍ブルドーとの戦いは、陽介たちの知恵と力、そして仲間たちの絆を再び試すことになるだろう。




