第六十話:最後のアーティファクト・魔王城への道、開かれる
陽介が「竜の宝玉」を手に取ると、宝玉は彼の身体に吸い込まれるようにして融合し、温かい生命力が全身に満ち溢れるのを感じた。これまでの戦いで蓄積した疲労が癒え、身体の奥底から新たな力が湧き上がってくるようだ。そして、エルミールから授かった「星詠みの護符」もまた、竜の宝玉と共鳴し、その輝きを増した。
『竜の宝玉は、持ち主の生命力を高め、傷を癒し、邪気を払う力を持つ。じゃが、その真の力は、持ち主の「生きる意志」の強さと共鳴する。お主のその強い意志がある限り、宝玉は無限の力を与えてくれるじゃろう』
古竜は、静かにそう告げた。
これで、魔王城の結界を解くための三つの古のアーティファクト――「月光の竪琴」「大地の盾」「竜の宝玉」――が全て揃った。それぞれのアーティファクトが互いに共鳴し合い、陽介たちの身体に宿る聖剣や魔法の力を、さらに高めているのが感じられた。
「ついに……三つのアーティファクトが揃ったのね……!」
アリアが、感極まったように言う。エクスカリバーもまた、アーティファクトの力に呼応し、清浄な光を放っている。
「これで、魔王城への道が開かれるはずだ。長かったが……ようやくここまで来たな」
バルドも、感慨深げに呟いた。彼の大地の盾もまた、力強い鼓動を刻んでいる。
『うむ。三つのアーティファクトの力が合わされば、魔王城を覆う古の結界を打ち破ることができるじゃろう。じゃが、心せよ。魔王城には、魔王軍最強の将軍たち、そして魔王自身が待ち受けておる。これまでの戦いとは比較にならぬ、真の死闘となるじゃろう』
古竜は、一行に最後の警告を与えた。
「覚悟はできています。私たちは、必ず魔王を倒し、この世界に平和を取り戻します」
陽介は、力強く答えた。その瞳には、もはや迷いはなかった。
古竜は、満足げに頷くと、陽介の脳裏に、魔王城への具体的な道筋と、そこに待ち受けるであろう魔王軍の布陣、そして魔王自身の弱点となりうる可能性のある、古の伝承に関する知識を送り込んできた。
『……行け、勇者たちよ。お主たちの戦いが、この世界の未来を決めると言っても過言ではない。影の勇者が果たせなかった願いを、そして、多くの魂の想いを、その剣に宿して……』
古竜の言葉を最後に、一行は竜の巣を後にした。外に出ると、火山地帯を覆っていた不吉な噴煙はいくらか収まり、空にはわずかに青空が覗いていた。それは、まるで彼らの前途を祝福しているかのようだった。
三つのアーティファクトを手にし、聖剣の力を完全に引き出し、そして仲間たちとの絆を確かなものとした陽介たち。彼らの表情には、これまでにないほどの決意と自信が満ち溢れていた。
「さあ、行こう。魔王城へ。そして、全てを終わらせるんだ」
陽介の言葉に、仲間たちは力強く頷いた。世界の命運を賭けた、三十路リーマンの最後の戦いが、今、まさに始まろうとしていた。彼らの旅は、最終局面へと突入する。




