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第五十七話:炎の試練とリズの決意

魔王軍の斥候部隊は、火山地帯の地形を巧みに利用し、陽介たちを苦しめた。溶岩の噴出を利用した奇襲や、熱風に紛れての攻撃など、その戦術は洗練されていた。しかし、二つの聖剣の力と、これまでの旅で成長を遂げた仲間たちの連携の前には、敵ではなかった。


陽介のカレドヴルフが敵の指揮官らしき魔物を一刀両断すると、残りの魔物たちは恐慌をきたして逃げ去っていった。


「ふぅ……なんとか撃退できたか。だが、奴らがここにいたということは、この先の竜の巣にも、魔王軍の手が伸びている可能性が高いわね」


アリアが、剣についた魔物の体液を振り払いながら言った。


斥候部隊を退けた一行は、さらに火山地帯の奥深くへと進んだ。やがて、巨大な溶岩の滝が流れ落ちる、広大な洞窟の入り口にたどり着いた。洞窟の奥からは、凄まじい熱気と共に、何か巨大な生物の息遣いのような音が聞こえてくる。ここが「竜の巣」の入り口に違いない。


しかし、その入り口は、燃え盛る炎の結界によって固く閉ざされていた。そして、結界の前には、体長10メートルはあろうかという巨大なサラマンダーロードが、まるで門番のように立ちはだかっていた。その体は純粋な炎でできており、周囲の岩をも溶かすほどの高熱を放っている。


「グルオオオォォッ! 我が主の眠りを妨げる者は、何人たりとも通さぬぞ!」


サラマンダーロードが咆哮し、灼熱のブレスを吐き出す。


「こいつが……竜の巣の門番か! なんという熱気だ……! ルーカス、氷の魔法で援護を!」


陽介が叫ぶ。ルーカスは即座に氷結系の魔法を放つが、サラマンダーロードの炎の力はあまりにも強大で、魔法は瞬時に蒸発してしまう。


「ダメです! 私の魔法では、あの炎を抑えきれません!」


ルーカスが悔しそうに声を上げる。


「私が前に出るわ! エクスカリバーの光の力なら、あるいは!」


アリアがエクスカリバーを構え、サラマンダーロードに斬りかかる。光の刃はサラマンダーロードの炎を切り裂くが、決定的なダメージには至らない。逆に、サラマンダーロードの放つ高熱によって、アリアの動きも徐々に鈍っていく。


その時、これまで炎の熱気に苦しみ、後方で弓を構えることしかできなかったリズが、意を決したように一歩前に出た。


「……私がやるしかないみたいね。こんなところで、足手まといになっているわけにはいかないもの」


リズは、弓を構え直し、深く息を吸い込んだ。彼女の瞳には、これまでにないほどの強い決意の色が宿っていた。彼女は、幼い頃、火事で両親を失ったという辛い過去を抱えていた(という設定がもしあれば、ここで活かせる)。そのため、炎に対して強い恐怖心を抱いていたが、仲間たちが苦戦しているのを見て、その恐怖を乗り越えようとしていたのだ。


(怖い……でも、ここで私が何もしなければ、みんなが……! ヨウスケが、いつもみたいに何とかしてくれるって信じてるだけじゃダメなんだ!)


リズは、精神を集中させ、矢に自らの魔力を込めた。それは、彼女がこれまでの旅の中で密かに編み出していた、新たな技だった。矢の先端に、氷の魔力が凝縮され、まるでダイヤモンドダストのようにキラキラと輝き始める。


「喰らいなさい! 私の全力……『氷塵閃ひょうじんせん』!」


リズの放った矢は、一直線にサラマンダーロードの核と思われる胸の炎へと突き刺さった。瞬間、凝縮された氷の魔力が爆発し、サラマンダーロードの炎の勢いを大きく削いだ。その一撃は、戦況を覆すのに十分な威力を持っていた。


「リズ! すごいじゃない!」


アリアが驚きの声を上げる。


「ふん、まあね! いつまでもやられっぱなしじゃないってことよ!」


リズは少し息を切らしながらも、誇らしげに言った。炎への恐怖を克服した彼女の瞳は、自信に満ち溢れていた。


サラマンダーロードの力が弱まった隙を突き、陽介とアリアの聖剣が同時にその核を貫いた。サラマンダーロードは断末魔の叫びを上げ、炎の結界と共に消滅した。竜の巣への道が開かれたのだ。

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