第四十八話:王都の廃墟・魔王軍の拠点
アンデッドの群れを退けた陽介たちは、さらに失われた王国の奥深くへと進んでいった。荒廃した大地を数日進むと、やがて巨大な城壁に囲まれた、かつての王都の廃墟が見えてきた。城壁は所々崩れ落ち、建物は半壊し、街全体が深い静寂と絶望に包まれている。しかし、その廃墟の中には、明らかに人の手が入った痕跡と、そして禍々しい魔力の気配が漂っていた。
「ここが……失われた王国の王都……。そして、魔王軍の拠点の一つになっている可能性が高いわね」
アリアが、城壁の隙間から内部の様子を窺いながら言った。廃墟の中には、魔王軍の紋章が描かれた旗が掲げられ、武装した兵士や魔物たちが巡回しているのが見える。
「正面から突入するのは無謀だな。まずは潜入して、内部の状況を探る必要がある。聖剣の破片のありか、そして魔王軍の目的……。何か手がかりが見つかるかもしれない」
陽介は、元の世界での企業内での情報収集や、競合他社の動向調査などの経験を思い出し、冷静に作戦を練り始めた。
(この規模の拠点となると、必ず警備の薄い場所や、物資の搬入路などがあるはずだ。まずはそこを見つけ出し、少人数で潜入するのが定石だろう。内部の構造や兵力の配置を把握できれば、有利に事を進められる)
「リズ、お前の俊敏さと隠密行動のスキルが活かせるかもしれない。俺とリズで、夜間に城壁の周囲を偵察し、潜入経路を探ってみよう。アリアさん、バルドさん、ルーカスは、ここで待機し、万が一の事態に備えてくれ」
陽介の提案に、リズは得意げに頷いた。
「任せなさい! 私の足にかかれば、どんな厳重な警備だって、あってないようなものよ!」
その夜、陽介とリズは月明かりを頼りに、廃墟と化した王都の城壁沿いを慎重に偵察した。リズは、まるで影のように音もなく移動し、警備兵の配置や巡回ルートを的確に把握していく。陽介もまた、鋭敏になった五感を駆使し、魔力の流れや微かな物音から、隠された通路や警備の死角を見つけ出そうと試みた。
数時間の偵察の末、二人は城壁の崩れた一角に、比較的警備の薄い、地下へと続く隠し通路のようなものを発見した。
「ここなら、気づかれずに内部へ潜入できそうだわ。でも、中は罠だらけかもしれないわよ?」
リズが小声で言う。
「ああ、覚悟の上だ。だが、リスクを冒さなければ、情報は得られないからな」
陽介とリズは、アリアたちに合図を送り、隠し通路から王都の廃墟内部へと潜入した。通路の先は、かつての王城の地下牢か、あるいは秘密の通路だったらしく、薄暗く、カビ臭い空気が漂っていた。
慎重に奥へと進むと、やがて広い空間に出た。そこは、魔王軍の兵士たちが詰所として使用しているらしく、数人の兵士が雑談をしたり、武具の手入れをしたりしていた。そして、その部屋の隅の机の上には、王都の内部構造を示すと思われる地図と、何やら怪しげな計画書のようなものが広げられているのが見えた。
(あれは……! チャンスかもしれない!)
陽介は、リズと目配せをし、息を潜めて兵士たちの隙を窺った。この廃墟の奥に眠る聖剣の破片と、魔王軍の陰謀を暴くための、危険な潜入作戦が始まった。




