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第四十七話:滅びの地の入り口・絶望の残滓

数日間の旅を経て、陽介たちはついに「失われた王国」の国境線に到達した。かつては豊かな緑に覆われていたであろう大地は、今や不毛の荒野と化し、空は鉛色の雲に厚く覆われ、陽の光すら届かない。時折吹き抜ける風は、まるで死者の呻き声のように不気味な音を立て、腐臭と硫黄の匂いを運んでくる。


「ここが……失われた王国……。噂通りの、呪われた土地というわけか」


バルドが、その光景を前に顔をしかめる。彼の屈強な精神をもってしても、この地の重苦しい雰囲気は堪えるものがあるようだった。


「空気が……重い。まるで、大地そのものが嘆き悲しんでいるみたいだわ」


アリアもまた、胸を押さえながら呟いた。彼女の光の勇者の血が、この地に満ちる負のエネルギーに強く反応していた。


一行が荒野を進んでいくと、やがて朽ち果てた村々の残骸や、風化した白骨が散乱しているのを目にするようになった。それらは、かつてこの地で起こったであろう悲劇の凄惨さを物語っていた。


(一夜にして滅んだ王国……。一体、何があったんだ? ただの天災や戦乱だけでは、これほどまでの荒廃は考えにくい。何か、もっと根源的で、恐ろしい力が働いたとしか……)


陽介は、元の世界で読んだ歴史書や、災害の記録などを思い浮かべながら、この地の異様な状況を分析しようと試みた。


その時、リズが何かに気づき、鋭い声を上げた。


「待って! あれを見て! 地面に……何か新しい足跡があるわ! それも、かなりの数よ!」


リズが指差す方向には、確かに真新しい、そして人間のものではない異形の足跡が、王国の中心部へと向かって続いていた。


「魔物のものか……? いや、この足跡は統率が取れている。まるで軍隊のようだ。魔王軍の斥候か、あるいは……」


陽介が警戒を強めた瞬間、周囲の瓦礫の影から、黒い瘴気を纏った異形の魔物たちが姿を現した。それは、まるで死体が蘇ったかのようなアンデッド系の魔物で、その数は数十体に及んだ。そして、その中にはひときわ大きな、騎士の鎧を纏ったアンデッドナイトの姿もあった。


「ちっ、待ち伏せか! どうやら、歓迎の挨拶は手荒いようだな!」


陽介は聖剣カレドヴルフを抜き放ち、仲間たちに指示を出す。


「アリアさん、バルドさん、前衛を頼む! リズ、ルーカス、後方から援護を! あのアンデッドナイトが指揮官のようだ! まずはあれを叩く!」


戦闘が開始された。アンデッド系の魔物は、通常の魔物とは異なり、痛みを感じず、恐怖も知らないため、非常に厄介な相手だった。アリアの双剣がアンデッドの骨を砕き、バルドの大剣がその群れを薙ぎ払うが、倒しても倒しても次々と新たなアンデッドが襲いかかってくる。


陽介は、聖剣の浄化の力をアンデッドナイトに集中させた。聖剣の光がアンデッドナイトの纏う黒い瘴気を打ち消し、その動きを鈍らせる。


「ルーカス、今だ! あのナイトに最大火力の魔法を!」


「はい! フレイム・バースト!」


ルーカスの放った炎の魔法がアンデッドナイトを直撃し、その鎧を溶解させる。動きが止まったアンデッドナイトに、陽介が聖剣でとどめを刺すと、他のアンデッドたちもまるで糸が切れた人形のように崩れ落ち、塵となって消えていった。


「ふぅ……なんとか切り抜けたか。しかし、この王国は、想像以上に危険な場所のようだな」


陽介は荒い息をつきながら言った。この滅びの地には、まだ多くの絶望の残滓と、そして魔王軍の影が深く根を張っているに違いなかった。


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