第四十六話:失われた王国への道・不穏な噂
忘れられた聖域に光を取り戻し、聖剣カレドヴルフに新たな力を宿した陽介たち一行は、エルフの長老エルドリンや里のエルフたちに丁重な別れを告げ、次なる目的地「失われた王国」へと旅立った。聖剣に新たに浮かび上がった紋様が示すのは、大陸中央部に広がる、かつては大陸一の繁栄を誇ったが、百数十年前に謎の災厄によって一夜にして滅びたとされる広大な王国だった。
聖域の森を抜け、再び街道に戻った一行は、道行く商人や旅人から「失われた王国」に関する情報を集め始めた。しかし、得られる情報は断片的で、不吉な噂ばかりだった。
「失われた王国……? ああ、あそこは呪われた土地だ。近づく者は生きては戻れんという話だぜ。なんでも、亡霊や魔物が跋扈し、空は常に暗雲に閉ざされているとか……」
ある行商人は、顔を青ざめさせながらそう語った。
「最近では、あの辺りで魔王軍の不気味な紋章を掲げた者たちを見かけたという噂も聞く。奴ら、あの滅びの地で何かを企んでいるのかもしれないな」
別の旅人は、声を潜めてそう付け加えた。
「魔王軍……。やはり、奴らも聖剣の破片を狙っているのか、それとも別の目的があるのか……」
アリアが厳しい表情で呟く。彼女の腰の双剣が、微かに共鳴するように震えた。
陽介は、集めた情報を地図に書き込みながら、慎重に分析を進めていた。
(失われた王国……歴史から消えた王国か。滅亡の原因も謎に包まれている。魔王軍が関わっているとすれば、聖剣の破片だけでなく、何か別の重要なものがそこに眠っている可能性もあるな。いずれにせよ、これまで以上に危険な場所であることは間違いない)
「この先の大きな街で、もう少し詳しい情報を集められないかしら。失われた王国に関する書物や、あるいは生き残りの末裔のような人がいれば……」
リズが提案する。
「うむ、それがよかろう。闇雲に進むのは得策ではない。敵の情報を少しでも多く手に入れることが肝要だ」
バルドも同意した。一行は、失われた王国へと続く街道沿いにある、比較的大きな商業都市を目指すことにした。
旅の道中、陽介は聖剣カレドヴルフの新たな力に慣れるため、アリアやバルドとの模擬戦を繰り返した。聖剣は、陽介の意志に応えるように、より鋭く、より力強い斬撃を繰り出すようになっていた。影の勇者の記憶も、以前より鮮明に流れ込んでくるようになり、陽介の剣技は日増しに洗練されていった。
しかし、同時に、魔王軍の影もまた、確実に彼らに忍び寄っているのを感じていた。時折、遠くの空に不吉な魔力の波動を感じたり、街道の脇に魔物が潜んでいた痕跡を見つけたりすることがあった。
「どうやら、のんびりしている暇はなさそうだな」
陽介は、仲間たちと顔を見合わせ、気を引き締める。失われた王国への道は、決して平坦なものではなさそうだ。そして、その先に待ち受けるものは、想像を絶する困難と、世界の運命を左右する大きな謎なのかもしれない。




