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第十八話:灼熱の砂漠と、リーマンの知恵

ドワーフの古都から数日、山脈を越え、一行はついに灼熱の砂漠の入り口に到達した。目の前に広がるのは、どこまでも続く黄金色の砂丘。陽光は容赦なく照りつけ、陽炎が蜃気楼のように揺らめき、遠くの景色を歪ませている。空気は極度に乾燥し、一歩足を踏み入れるだけで、喉がカラカラに渇いた。時折吹き抜ける熱風は、まるで巨大なドライヤーのようで、肌の水分を容赦なく奪っていく。


「うへぇ……見渡す限り砂、砂、砂。本当にこんなところに聖剣の破片があるのかしら……。賢者の森とは大違いだわ。あの瑞々しい空気が恋しい……」


リズが手で日差しを遮りながら、うんざりしたように呟く。彼女の額からは、早くも汗が流れ落ちていた。


「地図が示している以上、進むしかない。だが、水と食料の管理は徹底する必要があるな。この暑さでは、水の消費も激しくなるだろう。無駄な消耗は避けねばならん」


バルドが水筒の残量を確認しながら言った。ドワーフたちから分けてもらった水と食料も、無限ではない。この広大な砂漠を横断するには、計画的な資源管理が不可欠だった。


陽介は、この過酷な環境を前に、かつて読んだサバイバル関連の書籍や、出張で訪れた中東の砂漠地帯の気候を思い出していた。あの時も、現地のガイドから砂漠での行動の注意点を色々と教わったものだ。まさか、その知識がこんな形で役立つ日が来るとは。


「昼間の行動は極力避けて、比較的涼しい早朝や夜間に移動するのはどうだろうか。それと、日差しを遮るために、この布を頭から被るのはどうかな。肌の露出を抑えるだけでも、体力の消耗はかなり違うはずだ。ドワーフの皆さんがくれたこの布、丈夫で通気性も良さそうだし」


陽介は、ドワーフからもらった丈夫な麻の布を取り出し、ターバンのように頭に巻き、さらに首筋や顔を覆うようにして見せた。その姿は少々滑稽だったが、実用性はありそうだ。


「なるほど、確かにその方が良さそうね。砂埃も防げるし。ヨウスケ、あなた、意外とサバイバル知識があるのね」


アリアも陽介の提案に頷き、他のメンバーもそれに倣った。リズは少し不満そうだったが、背に腹は代えられないとばかりに、陽介に手伝ってもらいながら布を巻いた。


陽介の提案通り、一行は昼間の最も暑い時間帯は、わずかな岩陰や、自分たちで掘った浅い穴などで休息を取り、比較的気温の低い早朝や月明かりを頼りに夜間に移動することにした。それでも、砂漠の厳しさは想像以上だった。照りつける太陽、どこまでも続く単調な景色、足を取られる砂地、そして何よりも喉の渇きが彼らを苦しめる。時折現れる巨大なサソリ型の魔物や、砂の中から音もなく襲いかかってくるサンドワームとの戦闘も、体力を容赦なく奪っていった。


そんな中、陽介はまた一つ、現代知識を活かすことを思いついた。それは、簡易的な太陽熱蒸留器の作成だ。元の世界で、災害時のサバイバル術として紹介されていたのを覚えていた。地面に穴を掘り、そこに汚れた水や、わずかに水分を含んでいそうな砂漠の植物を入れ、ビニールシート(幸い、陽介のリュックサックの防水カバーが代用できた)で覆い、中央に小石を置いて水滴を集めるというものだ。


「ヨウスケさん、これは何をしているんですか? 砂遊び……ではないですよね?」


ルーカスが不思議そうに尋ねる。


「まあ、見ててくれ。うまくいけば、飲み水が手に入るかもしれない。元の世界では、こういう原始的な方法で水を確保することもあったんだ」


陽介は、以前テレビで見た知識を頼りに、見よう見まねで装置を組み立てた。半信半疑だった仲間たちも、数時間後、ビニールシートの裏に水滴が集まり、中央に置いた小さな容器に、透き通った綺麗な水がポタポタと溜まっていくのを見て目を見張った。


「すごい! ヨウスケ! どうやったんだ!? まるで魔法みたいじゃないか!」


リズが興奮して叫ぶ。彼女は早速、溜まった水を指ですくって舐めてみた。「うん、ちゃんとした水だわ!」


「太陽の熱で水分を蒸発させて、それを冷やして集めるんだ。元の世界では、こういう科学的な知識も時には役立つんでね。まあ、効率は悪いけど、ないよりはマシだろう」


陽介は少し得意げに説明した。量はわずかだったが、この極限状況では貴重な真水だ。仲間たちの陽介を見る目が、また少し変わったのを感じた。彼の持つ知識は、剣技や魔法とは異なる形で、確実にパーティーの生存率を高めていた。


数日後、一行は巨大なサソリ型の魔物「デスストーカー」の群れや、砂の中から音もなく襲いかかってくる巨大なサンドワームとの戦いを経て、ようやくオアシスらしき場所にたどり着いた。そこには、小さな泉と数本のヤシの木があり、旅商人と思われる一団がラクダのような生物と共に休息を取っていた。泉の水は澄んでおり、ヤシの木陰は涼しく、まさに砂漠の楽園のようだった。


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