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第百二話:消えゆく魔法の輝き

賢者エルドリンが住まう「忘れられた聖域」を目指し、一行は再び旅を始めた。しかし、世界の異変は、彼らが考えていた以上に深刻な速度で進行していた。


道中、いくつかの村や街を通り過ぎたが、その多くが以前よりも活気を失い、人々の顔には漠然とした不安の色が浮かんでいた。そして、以前は一つしか見なかった黒い尖塔が、今や大陸の各地に、まるで不吉な墓標のように突き立っているのが遠目にも確認できた。


「なんてことだ……。あの黒い尖塔、明らかに数が増えているぞ」


バルドが、苦々しい表情で呟く。


「『浄化プロセスをフェーズ2に移行する』……。あの時の声は、こういうことだったのね」


アリアもまた、唇を噛みしめた。


ある日、一行は黒い尖塔が比較的近くに立つ平原を横切っていた。その時、ルーカスが突然、苦しげな声を上げてその場に膝をついた。


「うっ……! ヨウスケさん……魔法が……! 魔力がうまく練れません……!」


ルーカスの顔は蒼白で、その手から知恵の木の杖が滑り落ちそうになる。彼は、簡単な治癒魔法を試そうとしたが、その手から放たれる光は普段よりもずっと弱々しく、すぐに消えてしまった。


「なんだって!? ルーカス、しっかりしろ!」


陽介が駆け寄り、ルーカスの体を支える。


「あの黒い尖塔が……原因です……。あそこから発せられる無機質な魔力が、この一帯の自然な魔力の流れを乱し、魔法そのものの存在を希薄にしているような……そんな感じです……」


ルーカスの言葉は、一行に衝撃を与えた。彼らの力の源である魔法が、この新たな敵の前では無力化されてしまうかもしれない。それは、魔王との戦いとは全く異なる、根源的な恐怖だった。


アリアも、腰に差したエクスカリバーに手をやった。聖剣の輝きもまた、普段より心なしか弱まっているように感じられた。光の力を源とするエクスカリバーもまた、「調律者」の影響と無縁ではいられないのだ。


(まずいな……。このままでは、俺たちは最大の武器を失うことになる。俺自身は魔法が使えないから影響はないが、仲間たちがいなければ、俺一人では何もできない)


陽介は、この新たな脅威の厄介さを改めて痛感した。力で戦うのではなく、戦うための土台そのものを崩してくる。あまりにも理不尽で、そして効果的な攻撃だった。


「今は、あの尖塔から離れるのが先決だ。ルーカス、歩けるか?」


陽介はルーカスを背負い、一行は足早にその場を離れた。仲間たちの間には、これまでにない重苦しい沈黙が流れていた。

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