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第百一話:新たなる戦争会議

「世界の調律者」と名乗る、冷たく無機質な声。その言葉は、陽介たちの心に、魔王と対峙した時とはまた質の異なる、底知れない恐怖を植え付けた。一行は、住民が消失した村を後にし、近くの森に身を隠して緊急の作戦会議を開いていた。


「一体、何がどうなっているんだ……? 『世界の調律者』だなんて、まるで神様みたいな口ぶりだったじゃないか」


リズが、混乱した表情で言った。彼女の明るさも、この得体の知れない脅威の前では影を潜めていた。


「魔王とは明らかに違う。破壊や支配が目的じゃない……。奴らは、自分たちの行動を『浄化』や『調律』と呼んでいた。まるで、システムのエラーを修正するような……」


陽介は、焚火の炎を見つめながら、冷静に状況を分析していた。元の世界で、複雑なプロジェクトの問題点を洗い出し、対策を講じてきた経験が、彼の思考を助けている。


(敵の目的、行動原理、そして弱点。まずはそれを特定しないことには、戦いようがない。今回の敵は、感情で動くタイプじゃない。だとしたら、その行動には必ず一貫したロジックがあるはずだ)


陽介は、地面に木の枝で図を描きながら、仲間たちに自分の仮説を説明し始めた。それは、さながら異世界でのプロジェクト会議だった。


「俺の仮説だが、奴ら『調律者』は、この世界の安定を維持するための、一種の安全装置のようなものじゃないかと思う。魔王という巨大なバグが消滅したことで、世界の魔力バランスや、人々の感情の起伏といった『不確定要素』が、奴らの許容範囲を超えてしまった。だから、奴らはそれをエラーと見なし、強制的に『浄化』、つまり削除しようとしているんじゃないか」


「だとしたら、村人たちが消えたのも……」


アリアが、息を呑んで問いかける。


「ああ。おそらく、村に満ちていた人々の生活や感情そのものが、奴らにとってはエラーだったんだろう。そして、魔法という不確定な力も、奴らのターゲットになっている可能性が高い」


陽介の言葉に、ルーカスは顔を青ざめさせた。


「そんな……。じゃあ、僕たちの魔法も……?」


「今のところは大丈夫だったが、油断はできない。俺たちがこの世界の理から外れた『イレギュラー』な存在である以上、奴らは俺たちを最優先の排除対象として認識しているはずだ。まずは、奴らのことをもっと詳しく知る必要がある。こんな途方もない話を知っているとすれば……」


陽介の視線の先を、仲間たちも追った。その視線の先にあるのは、賢者たちが住まう、古の知恵が眠る場所だった。


「……賢者の森のエルミール様か、忘れられた聖域のエルドリン様ね」


アリアが、決意を固めたように言った。


「ああ。彼らなら、この『世界の理』や『調律者』について、何か知っているかもしれない。俺たちの次の目的地は決まったな」


陽介たちの新たな戦いは、まず情報収集から始まることになった。相手は、力だけでなく知恵と分析力が試される、未知の敵だった。

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