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わたしを召喚したのは金髪碧眼の騎士様でした  作者: RUNA
第3章 わたし、聖女になる
26/40

26,温かい目

 わたしはその後、子どもたちとパーティのご飯を食べたり、お喋りを楽しんだ。


 本当の舞踏会は、さっきのような貴族がたくさん来るものなのだろうけど。

 わたしは、身内でわいわいするこっちのほうが好きだな。今は身分も立場も関係なく、ハーシーたち護衛士や王様、近衛兵たちも、みんな楽しそうに話している。



「あの……ひよさん。花畑、見ました!」


 ラッセルが、わたしにきらきらした目で言った。


「見たこともない花がたくさんあって、すごかったです……!」

「確かに、日本に生えてる植物ばっかりね」

「あの、名前を教えてもらってもいいですか……!」


 わたしが「いいよ」と答えると、ラッセルは意気揚々と花をつんできた。

 子どもたちは、わたしとラッセルの周りを取り囲んだ。彼がつんで来たのは、あの黄色い花だった。


「これはね、たんぽぽっていうの。

 今は黄色いけど、時間が経つと白い綿毛になって、種を飛ばすのよ」

「種を? どうやって?」

「風にのせて。懐かしいなぁ。子供のころ、よく息で吹き飛ばして遊んでた」


 ラッセルは「これが綿毛になるのかぁ!」と、たんぽぽを見て感嘆していた。

 彼の好奇心があれば、説明したこと全部覚えてしまうだろう。興味津々で、わたしの話を聞く彼は、本当に植物が好きなんだと思った。


 アビーはその顔を見つめながら、静かに話を聞いている。

 ラッセル、アビーの温かい目に気づいて……。



 わたしがぱっと顔を上げると、少し離れたところで、椅子に座り談笑しているハーシーの姿があった。


 すると、向こうも視線を感じたのかこちらを見た。彼と、バチッと目が合ってしまった。わたしはつい、にこっとして、彼に向けて手を振った。


 すると彼は、ふっと顔をほころばせて、ぶんぶんと手を振り返してくれた。

 お酒も入って、テンションが高そう……なんだか、大きいわんちゃんみたい。


 ハーシーは、護衛士さんたちに「このやろう、いちゃつきやがって……!」とイジられていた。


 何だろう、この幸せな気持ち……推しにファンサをもらえた人って、こんな気持ちなのかな。

 だけど、興奮すると言うよりは、温かいものが胸に広がっている。


 この温かさを、言葉にしてはいけない気がした。



「わたしも、混ぜてもらっていいかしら」


 その時、子どもたちの後ろから、王妃様に声をかけられた。わたしが「どうぞどうぞ!」と言うと、子どもたちは、彼女に席を譲った。


「まぁ、いいの?みんなありがとう。

 あのね、あなたと話したいと思って……」


 アレクサンドル様は、ラッセルに言った。


「……ねぇ、王様に、王宮に来ないかって言われていたじゃない?」


 彼は、遠慮がちにうなずいた。黄土色の髪が、さらさらと揺れて、長めの前髪から、綺麗な瞳がのぞいた。

 いつもは隠れているけど、ラッセルもかなりイケメンだ。今は弱々しいイメージがあるけど、大人になったらめちゃくちゃかっこよくなると思う。


 だけどその瞳は、何か迷っているような色が浮かんでいた。


「あの時は、ハーシーが止めてしまったけど……わたしがもう一度、王様にお願いしましょうか?」


 わたしは、王妃様を援護するように言った。


「そうだよ!王宮に行けば、ラッセルのやりたい勉強が、たくさんできるかもしれないよ?」

「……ぼくも、そう思いました。

 王様が言ってくれたこと、とても嬉しかったんです」


 彼は照れながら、「でも……」と付け加えた。


「それ以上に……ハーシー様が止めてくれたのも、嬉しかったんです」


 わたしは、素直にそう打ち明けたラッセルが、とても可愛く見えた。


「そうね。ラッセルは、護衛士の宝だって。

 あそこまで言ってもらえるの、本当にすごいよ」

「いえ……ぼくはアビーみたいに強くないから、護衛士見習いとして、何も役に立てていません。ただ植物が好きなだけで……」

「そんなことない!」


 声を上げたのは、アビーだった。頭の高い位置で結んだポニーテールが、ふわふわと揺れている。

 彼女は、可愛らしい黄色のワンピースの裾を、ぎゅっと掴みながら言った。


「ハーシー様が言ってた。護衛士は、強さだけじゃないって。頭の良さとか、どんな状況でも生き抜けるしたたかさも必要なんだって。

 あたしはラッセルみたいに本は読めないし、頭良くないから……」


 その後の言葉を飲み込んだ彼女に、わたしは助け舟を出した。


「じゃあ二人が協力したら、一人前の護衛士になれるね」


 二人は顔を見合せて、嬉しそうにはにかんだ。神様、今日も推しカプが尊いです……ありがとうございます。


「それじゃあ……二人で一人前の護衛士さん。

 あなたたちに、お仕事を頼みたいのだけど、いいかしら」


 アレクサンドル様の言葉に、わたしたちはえっと声を漏らした。


「ほ、ほんとですか!?」

「ど、どんな仕事ですか……?」


 怖がっている様子のラッセルを見て、王妃様はふふっと笑いながら言った。


「王宮の地下迷宮で、聖女様を守るお仕事よ」


 その言葉に、わたしの頭に、はてなが浮かんだ。

 地下迷宮? 聖女様って……わたし?


 首を傾げたわたしに、アレクサンドル様が微笑みかけた。


「さっきは言いそびれてしまったのだけど……。

 あなたが元の世界に帰る前に、聖女として、やってほしいことがあるの」




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