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わたしを召喚したのは金髪碧眼の騎士様でした  作者: RUNA
第2章 わたし、成長する
13/40

13,魔物

はじめまして。評価を頂いたことがとても嬉しくて、この場を借りてお礼を申し上げます。


毎回のように、字下げ機能をし忘れて投稿してしまいます。読みにくくて申し訳ありません。


物語も佳境にさしかかっていますので、感想も良かったらお待ちしています。

 久しぶりにひとりで帰ると、出迎えてくれたメリッサは「まぁ、寂しいですね」とつぶやいた。


「そういえばハーシー様。少し気になることがあるのですが」

「なんだ?」

「ひよさん、なくし物をされたとかで。子どもに戻る前は毎朝、屋敷を抜け出しては、森に探しに行かれていたのですよ」


 それは知らなかった。

 どうしてひよは、おれに言ってくれなかったんだろう。


「何をなくしたのか、聞いたのか?」

「えぇ、ネックレスだそうですよ。でも小さいものだから、見つからなければ諦めると……そう言われていましたが、こちらに来てからというもの、1日も欠かさず」


 ということは、おれが仕事の日も、休みの日も変わらず朝早く起きて、探しに行っていたのだろう。

 ひとりで抱え込んでしまっていたから、よけいに心の余裕がなかったのかもしれない。


「でも、見つからなかったんだよな」

「えぇ、わたしも探しに行きましたが、それと言ったものは……もう誰かに拾われているか、もしくは……」

「魔物が持っているかだな」


 魔物まものは今でこそ、王の魔力を恐れてこの王都には近づかない。けれど夜な夜な、村や隧道ずいどうをうろついているとの、目撃証言がでている。


 魔物は光り物が好きだ。

 光り物には魔力があるらしく、それを手に入れると、彼らは強くなると思っているらしい。


 ……命をかけるほどのことでもないかもしれない。

 けれど彼女が、どうしても見つけ出そうとしていたものだ。きっと大事なものなのだろう。


「メリッサ、教えてくれてありがとう。

 ちょうど、討伐依頼が来ていたから、明日探してみるよ」



「それで、わたしが呼び出されたのか。ふざけるのも大概にしろ」


 そう言いながらも来てくれたのは、クラウスだった。彼は目深にマントを被って、極力王様だと気づかれないようにしている。

 だって知り合いの魔法使いは、彼しかいないから……。


「討伐依頼だ。国民が困ってるんだぞ、ほったらかしたら、王様の名が廃るんじゃないか?」

「国王はそもそも、前線に出ない。捜し物なら、適当な魔法使いにでも頼めよ」

「戦闘ともなると命を預けられる信頼と、相性が大切だろう?おれと手を組めるのは、相棒のお前だけだから」

「はいはい、説得してくれなくて結構だ。さっさと終わらせて、わたしは可愛い妻の元に帰る」


 真面目な顔でさらっと言えるほど、彼は愛妻家だ。まだクラウスが護衛士で、アレクサンドルがリバティ家の公爵令嬢だった頃。2人は主従関係にあったけれど、本当に仲が良かった。


 徐々にに惹かれていき、やがて夫婦となった二人を見ていて、うらやましく思うこともあった。

 おれにも、そんな風に愛し愛せる人が見つかったらとーー。


 おれとクラウスは、ジギス家の裏山に入り、ひよを召喚した場所辺りまで来た。


「とりあえず、ここら辺に魔物の通った気配があるか、見てくれないか」

「……あるな。こんなところ、以前は魔物なんて来なかったはず……ネックレスを落としたことで、寄ってきたんだろうな」

「じゃあやっぱり、ネックレスは魔物に……」

「その可能性が高い。奴らの巣に行ってみるか」


 クラウスの言葉に、おれは固唾を飲んだ。


「生きて帰れる可能性は……?」

「……ないにも等しい」

「わかった。覚悟していこう」


 ーーそんな会話をしたのにもかかわらず。

 彼に導かれて来たのは、自然にできた洞窟の中。そこは、たくさんのスライムの巣窟になっていた。


 彼らは思考を持たないどろどろの半液体で、本能のままに地面をうろついて生きている。

 つまり、よっぽどの事がない限り無害だ。巷の魔法使い、いやただの護衛士のおれでも倒せる。


「……さて、派手に暴れるか」

「な、なあ……ネックレスを持っているやつだけ、倒せばいいんじゃないのか?」

「何を言ってる。そんな甘いことを言って、こいつらが集まったら……」


 そんな会話をしている間に、スライムたちは危険を察知して合体し、ひとつの大きな魔物となった。

 よくみると、その透き通った体の中に、きらきらと輝くものがあった。


「あった!」


 おそらく、ひよのネックレスだろう。この国では見たことの無い、四つ葉のような形をした装飾がついている。


「まぁ、合体してくれて良かったな。探す手間が省けた」

「おれは核を探す、お前は援護を頼む」


 手短かに伝えると、おれは走りだした。どこかに、スライムの核があるはすだ。


 むやみにスライムを切っても、下手に分裂したり、体にまとわりついてきたりする。

 核を潰せば、どろどろに溶けて倒せるはずだ。


 スライムの反対側に行ってみたものの、それらしいものは見つからない。


「核がない!どうしてだ!」

「落ち着け、よく見ろ!」


 クラウスの言葉に、おれは気がついた。

 ネックレスの影に核がある……ということは……。


「核を潰せば、ネックレスも壊れる……」


 そんなの、本末転倒じゃないか。どうしたらいい?

 ネックレスを壊さず、スライムを退治する方法なんて……。


「ハーシー!お前に保護膜を張る。

 スライムの中にもぐれ!」


 その瞬間、体が光り始めた。クラウスの言葉どおり、おれはスライムに向かっていった。


 しかし、スライムの中に入ることは叶わず、体が弾かれた。保護膜を張っているからか?


「クラ、保護膜を解いてくれ!」

「ばかいえ、生身で入ったら窒息死するぞ!」


 スライムは人の鼻や口などの穴から入り、窒息死させることで危険とされている。そんな中に飛び込むなんて、自殺行為だとは分かっている……。


「ハーシー、下がれ!」


 スライムが突然、形を変えて波のようにおれに覆いかぶさってきた。

 そのとき、クラウスの持っている杖が光った。


 熱で、スライムを焼いているようだ。スライムは身悶えて、音を立てながら蒸発していく。


 そのとき、スライムは逃げるようにおれの身体に迫ってきた。おれは逃げず、スライムの中に手を伸ばした。


 光線に灼かれ、スライムは熱湯のように熱い。

 肌が灼けていくのを感じながら、おれはネックレスまで溶けないように、その手に掴んで外に出した。


 これさえなければ、あとは簡単だ。

 おれは腰の剣を引き抜いて、スライムごと地面に突き刺し、核を潰した。その瞬間スライムはどろどろになり、足元で蒸発して消えた。


 倒れるおれの体を、クラウスが抱きとめてくれた。

「無茶しやがって……」と言いながら、彼は泣いている気がした。おれは、こんな王様がいる国にいれて幸せだと思う。


 体がじんわりあたたかい光に包まれて、腕の激痛がやわらいでいく。

 おれは手の中にあるネックレスが、壊れていないのを確認して安心すると、そのまま意識を失ってしまった。



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