表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その41~期間限定

作者: 天海樹

「期間限定で付き合ってみない?」

唐突にそう提案してきたのはユミのほうだった。

「何かあった?余命いくばくもないとか??」

「ドラマじゃあるまいし、そんなことあるわけないでしょ」

と言って笑った。

するとアツシは

「だからと言って、“わかった”って言うほど軽くないだろ?」

と言って理由を尋ねた。

「何か、このままでいいのかな、って」

子供ができずしまいで50歳前。

もう作ることはとうの昔に諦めるてはいたが、

それ以来スキンシップもなくなり愛情も薄れた気がして

ただのルームメイト同然化している。

まだ二人の夢や目標があれば

男女の関係がなくても前途が明るいけれど、

これから何十年もこんな毎日を過ごして

何が楽しいんだろうかと最近思うようになり

「とりあえず恋でもしようかな」

と思ったからだと説明した。

離婚して独り身で彼女すらいないアツシは

そんなユミにとって恰好の相手だった。

「こんなの頼めるの、幼馴染のアツシしかいないからさ」

ユミの頼みとはいえ簡単に応じられる問題じゃないと

抵抗はしていたアツシだが、

押し問答の末、結局アツシが折れて承諾することになった。


期間は、夫が出張でいない1週間。

その間二人は、手をつなぎ、抱き合ったりして

普通の恋人がするようなデートを繰り返した。



4日目。

「キスでもしてみる?」

ユミは唐突に言った。

「何言ってんだよ」

アツシが驚くと

「付き合ってんだからキスぐらい当然でしょ。

これでもアツシのこと少しはいいなって思ってたんだよ。

なのに、少しは気づけよー!!」

といってユミは笑った。

アツシは小ばかにされたようだったので、

ユミの腕をつかんで引き寄せキスをした。

唇が離れると、ユミの顔に笑顔が生まれた。

そして無言のまま見つめ合っていると、

今度はユミからキスをした。

それは長く熱いキスだった。

そこに愛情があったのかどうかはわからないが、

二人は流れのまま最後までした。


「ありがとう」

全てが終わった後、ユミは言った。

「まだ女性として多少なりとも魅力があることがわかって

少し自信になった」

アツシはユミの目が少し潤んだように見えた。


それからユミの雰囲気がちょっと変わったように思えた。

関係を持ったからかわからないが、

昔のユミに戻ったように見えた。

二人は残りの2日間とも同じようにデートを重ねたが、

あの日以来どちらからとも求めることがなく

体を重ねることは一切なかった。

何事もなかったように

いまも変わらずに幼馴染でいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ