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8 加護を持つ青年


「へぇ、「どの神から得た加護か分からない」か。中々、面白い事をする神様もいるもんだね」


目の前に、長髪の緑髪の男性が目を細め、ソファに腰掛け、こちらを品定めするように見ている。……とても居心地が悪い。



私とテオドールは、あの場所で話すのも何だからと、男性の屋敷へ招待された。屋敷の中には使用人もおり、皆男性が通ると、仕事を止めて彼へ頭を下げた。今は屋敷の中の応接室で、男性に旅の理由を話している所だ。確か男性は……ヨゼフといったか。


「アンタは豊穣の神に、この国の守護者になれとでも言われたのか?」


家主よりも威張った姿でソファに座るテオドールが、目の前のヨゼフに質問をする。こいつ、100年以上生きている癖に礼儀を知らないのか。だがヨゼフは気にしていない様で、その質問に微笑みながら頷く。


「僕が転移する際、豊穣の神は、このユヴァ国の守護を頼んできてね。まぁ、僕もいきなり転移されたから、やる事もないし、指示に従ったってわけさ」

「……ヨゼフさんは、豊穣の神に会ったんですか?」

「ああ、会ったよ。この髪の色も瞳の色も、加護を受けてから変わったんだ」


そう言って自分の髪先を触るヨゼフを見て、だからテオドールもヨゼフも、髪色も瞳もこの世界の人間達の中でも異質だなと、疑問に思っていたが、納得した。……私は、前の世界と全く変わらないが。


テオドールはそんな私を一瞬横目で見て、再び目の前のヨゼフの方を向く。


「……アンタ、「赤色の魔法陣」を使う神は知ってるか?」

「赤?……いや、知らないな」


赤色の魔法陣とは、私が呪文を唱えた際に出てきた魔法陣の事だろうか?そういえば、テオドールが魔法を使うと、私とは違う青色の魔法陣だった。テオドールはこちらを見て、小さくため息を吐く。


「神の使う魔法ってのには、それぞれ神ごとに色がある。それは加護を得た存在も同じく、その色の魔法陣を出す。俺は時の神と同じ、青色の魔法陣」

「僕は、緑の魔法陣を出すよ」

「………じゃあ、赤い魔法陣は?」

「……100年以上生きている俺でも、「赤色の魔法陣を持つ加護持ち」は見たことがない」


私は思わず、自分の手を見てしまう。……私は、赤色の魔法陣を出した。けれどそんな加護を持つ者は、テオドールでも見たことがないと言う。ヨゼフは顎に手を添えて、少し考えるそぶりをする。


「今まで加護を持つ存在を、呼ばなかった神か………」

「ああ、古い文献でも見た事がない存在だ。もしかしたら、マヨイが初めての加護持ちかもな」

「それはそれは、中々珍しい存在を見たものだ」


………だからって、空から落とす神からの加護はごめんだが。


「……もしかしたら、この国の王族が持つ禁書庫なら、その神の存在が分かるかもしれない」


ヨゼフの言葉に、テオドールは呆れた表情を向ける。


「はぁ?王族の禁書庫なんざ、俺達が入れるわけねぇだろ」

「僕と一緒に行けばいい。何せ僕はこの国の唯一の魔法使いだからね。禁書庫くらい問題ない」


ヨゼフは、笑顔で自分の両手を合わせながら私達を見る。テオドールはその表情を見て、顔を引き攣らせながら彼を見た。


「……………何が望みだ?」

「流石、長年魔法使いをしている君は、話が早い。……でも僕の願いは簡単だよ、一緒に「古城の悪魔」を狩ってほしい」

「古城の悪魔?」


私はその名前を声に出して復唱した。ヨゼフはこちらを見て頷き微笑む。


「大層な名前がついているが、魔物だ。国のはずれの古城に住み着いていてね、僕が独りで狩ってもいいが、僕はまだ「若造」の魔法使いだ。……かの有名な魔法使いテオドールが居てくれた方が、安全に狩ることができるだろう?」

「………」


テオドールは見る見るうちに不機嫌そうに眉を寄せる。……あ、これ、多分さっき商店街でテオドールが言った言葉、気にしてるやつだ。

テオドールはヨゼフをしばらく無言で見つめて、そして表情そのままで、大きくため息を吐いた。


「………ったく、アンタといいマヨイといい、若い奴らは度胸があるな」

「それは了承、ととっていいかな?」


ヨゼフの言葉に、テオドールは手を腰に添えて口を開く。


「だが、その魔物にかかっている報酬、それは何割か寄越せ。……あと、マヨイは連れて行かないからな」


だから何でそんなに偉そうなんだお前は。ヨゼフは返答を聞いて、嬉しそうに笑う。


「勿論、そうと決まれば早速、明日にでも古城の悪魔を狩りに行こう」


ヨゼフの明るい表情とは裏腹に、テオドールは変わらず、不機嫌そうな表情で彼を見る。

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