表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

12 禁書庫へ



禁書庫の閲覧時間は夕方まで。それまでの間に少しでも情報を手に入れる必要があった。……この広大な本の中で、自分が求めている本など、そう簡単に見つかるのだろうか?


するとテオドールは、一枚の魔法陣の書かれた紙を私に差し出す。無言で渡されたものをそのまま受け取り、その紙を見る。


「これ持って、探したい本を思い浮かべろ」


言われるがままに魔法陣の書かれた紙を見ながら、……神、加護持ちの事が記された本を思い浮かべる。魔法陣はそれに応えて赤く光り、そのまま手から離れて中に浮く。……その紙は浮いたまま勝手に折り曲げられていき、紙飛行機の形になる。私は隣にいるテオドールを見る。


「これって!?」

「そのままちゃんと見てろ、飛んでくぞ」


テオドールが言った通り、紙飛行機は吸い寄せられる様に本棚へ向かう。私は慌てて紙を追いかける。……そのまま紙は奥の本棚の、一冊の本に貼り付く。

その貼り付いた本を本棚から抜き出し、表紙を見るとそこには『神と加護と歴史』とタイトルの書かれた本があった。それを見ていたヨゼフは感心したようにテオドールを見る。


「「探しの鳥」か、随分古い魔法を使うね」

「何だよ文句あるのかよ?」

「いいや?流石長く生きてるだけあると思ってね」


ヨゼフに笑いかけられたテオドールは、再び不機嫌そうな表情を浮かべる。私は本を持ってテオドール達の元へ戻り、側のテーブルに本を置く。その本はかなり古い物のようで、ところどころに苔のようなものが生えている。


「かなり古い本みたいだね、所々腐ってる」

「見れねぇ事はなさそうだな、開けようぜ」


私は頷き、本の表紙を開いて中を見る。




_________________


神は加護を与えうる存在を別世界より呼びよせる

加護を与えられた存在は、神の言葉での魔法を使う

その言葉を理解できるのは上位精霊のみ、しかし神の言葉は使えない

_________________




書かれている内容は、前にテオドールに教えてもらった内容と同じだ。私はページを捲り、他の内容を見る。……何ページがめくると、加護を持った存在の魔法陣の色が書かれていた。




_________________


予言の神 金

時の神 青

戦いの神 黄

豊穣の神 緑

天候の神 黒

■■■■ ■

__________________




「……テオドール、この最後だけ」

「ああ、塗り潰されてるな」


おそらくこの部分には、「赤」が入るのだろうか。それとも全く異なる存在なのかもしれない。……だが、塗り潰されて、そしてその部分だけ腐ってしまっているので、解読はできない。

ヨゼフは塗り潰された箇所を見ながら、顎に手を添える。


「塗りつぶす必要のある、神様という事かな?」

「ただ単に、そうなっただけかも知れねぇけどな」


……いや、ヨゼフのいう事も分かる。自分が加護を受けるに値する存在と決めた相手を、空から落として殺そうとするような神なのだ。絶対他の人にも何かやっているだろう。むしろやっててほしい、自分だけとか嫌だ。


その後もページをめくるが、どれもテオドールに聞いた内容と同じだった。他の本も見てみるがそれは同じで、そうこうしている間に夕刻の鐘の音が鳴り響いた。









……結局、塗り潰された6番目の神の存在がある事しか分からずじまいだった。私達は城でヨゼフと別れ、宿泊地に向かうために道を歩く。……目の前を付かず離れずで歩くテオドールは、昨日の魔物の件から、話はするが、何だか他人事のように接してきている。……流石に、このままじゃこの先の旅が思いやられる。


「テオドール」

「……どうした」


すでに商店街は閉まり、静かな夜道に私とテオドールの声が響く。


「昨日は、ごめん……危険な事に手を出して」

「………………」


テオドールは真剣な表情でこちらを向く。……長い沈黙の後に、彼は空を向いて大きくため息を吐いた。その後にこちらを見る目は、いつものテオドールらしい優しいものだった。


「アンタは、まだこの世界にきたばっかの赤子だ」

「うん……ごめん」

「……今はまだ、俺に守られてればいい」


そう伝えるテオドールの目を、私は逸らさないように見つめる。


「それは嫌だ、私はテオドールと対等になりたいし、助けになりたいし……守りたい」


テオドールは驚いたような表情をしながらこちらを見る。……その後すぐに目線を逸らし、頭を掻いている。耳が少し赤いのを見ると、照れているのだろうか。


「………随分な口を叩く小娘だな」

「そんな小娘と旅をこれからもするんだから、慣れて!」


強めの口調で告げる言葉に、耳を赤くしたままテオドールは吹き出した。………なんか、前も同じような事があったな。段々と私の表情が険しくなる。それを見て彼は、さらに笑う。


「ああ!本当に面白い女を拾ったもんだ!」

「面白い女ぁ?」

「アンタだよアンタ。………ああ、困ったな、いつかアンタと離れるのが、こんなにも辛い」

「………しばらく離れないでしょ」


そう伝えると笑うを止め、……再びため息を吐く。


「…………アンタ、それ計算か?」

「はぁ?」


何を言っているのかと思ったが、それを伝えるよりも先にテオドールが道を進み始めるので、私はそれに着いて行く。



………後ろから、耳が赤くなっているのが見えるが、どうかしたのだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ