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それは、幻想の様な世界

 草原での出来事から一時間程経過し、俺達は無事王都まで帰還した。


 火に関しては俺が銘創魔術で水流を生み出し、何とか消火する事に成功した。


 あの時気が付いておいて本当に良かった。あのまま放置しておけば、危うく緑溢れる草原が俺達の不始末で焦土に変わり果てるところだった。 


「先程はご迷惑をお掛けしました……」


 普段は立っているエトレの尻尾が地面に擦れる程垂れているのを見ると、相当ショックを受けているのが伝わってくる。


「あれは戦う場所が悪かったから仕方ない……。いや、それでは済まない規模の火事だったな……あれは」


「うぅ……」


 今度はエトレの耳も顔も下がってしまった。それを見たルルフィが何とか慰めようと頭を撫でている。


「次からは気をつけよう。ね?」


「はい……」


 魔術による他者への被害という点では、俺も他人事ではない。万が一誤射などしない様にも、魔術を使用する際は常に周囲に対して気を配らなければならない。


 が、反省は一旦ここまでにしておく。


 周りへの弊害は大きかったものの、エトレは立派に自分の役割をこなしてくれた。


 エトレだけじゃない。俺達三人は皆、自分がやるべきことをやった。


 ここからは、いよいよお待ちかねの報酬を受け取る時間だ。


 街中の喧騒を感じながら、俺達は王都で最も人の出入りが激しい場所へと足を運ぶ。


 通常より大きな自由扉を潜った先は、まさに幻想ファンタジーの様な世界だった。


 各所に置かれたテーブルを埋め尽くす人の数。それもただの人ではない。巨躯を身に持つ者、獣の血を引く者、翼が生えた者。それはもう様々な種族が席を共にしている。


 壁には一際大きな掲示板があり、そこに集まる人々は貼られた無数の紙を真剣な眼差しで見つめている。


 そして中央、ずらっと並べられたカウンターでは掲示板から剥がした紙を持つ人や、紙と一緒に魔物の一部を持ち込む人の相手をして忙しなく従業員が動き回っている。


 ここはギルド。魔物討伐に関する様々な情報と設備が集まる場所だ。


 内装は木材を主体としていて、大きさは体育館くらいはあるだろうか。かなり立派な建物だ。


 ギルドには依頼の受付と管理、魔物素材の換金、そして魔物討伐を主な生業とする、所謂「冒険者」の為の情報交換の場としての機能がある。


 これ程の機能を併せ持つ複合施設の為、これくらいの大きさは必要なのだろう。

 

 今回用があるのは正面の受付と建物左奥にある換金所なので、まずは正面の受付へと向かう。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」


「依頼を終えて来たので、報酬を受け取りに来ました」


「では、依頼内容を確認させていただきますね。依頼書と冒険者カードの提示をお願いします」


 俺は手元に用意しておいた二つを受付へと提示する。


 冒険者カードとはギルドの会員証の様な物で、本人の名前や性別の他にも修めた武術や使用可能な魔術などが記されており、これを見ればその人の実力が大まかに判断する事が出来る。


 依頼を受ける際にはこの冒険者カードと依頼書の内容を受付の人に確認され、もし実力と依頼の内容が釣り合っていないと判断されれば依頼を受けることは出来ないルールになっていると、最初にギルドを訪れた時に説明された。


「はい、確認しました。では、魔心の提出をお願いします」


 俺は机の上に翡翠色をした五つの水晶を置く。これが「魔心」だ。


 魔心というのは魔物の心臓部にある魔力の結晶のことで、これは魔物の体内にしか存在しない。故に、こうしてきちんと魔物を討伐したかの証明にも一役買っている。


「少々お待ちくださいね」


 受付の人が魔心を持って奥へと入っていく。おそらく魔心が本当に標的である猛走の猪(ガング・サングラー)の物なのか確かめているのだろう。


 しばらくすると、受付の人は魔心の代わりに小さな袋を持って帰ってきた。


「これにて依頼は完了です。こちらは報酬の銀貨一枚と銅貨二十枚になります」


「ありがとうございます」


 これが……俺達の初給料。


 受付の人から受け取った袋は小さいながらも、確かな重みがあった。


 依頼の報酬を受け取った俺達は、次にボーナスを受け取るべく、ギルドの更に奥へと進んだ。


「すみません。魔物の素材を買い取ってもらいたいのですが」


 換金所の受付へ行くと、こちらも忙しそうに何人もの従業員が動き回っていた。


「分かりました。そこに置いておいてください」


 受付の人は机に置かれた木製のトレイを作業の片手間に指差した。


 俺は言われた通り、魔物の素材が入った袋をトレイに置く。すると受付の人は一瞬で袋とトレイの間に何かを挟み、これまた木製の札をこちらへ差し出してくる。


「番号が来たらお呼びしますので、それまで周辺で待機しておいてください」


 札には番号が振られており、俺に渡された札には「3」の文字が記されている。


 というか、このやり取り……どこか既視感を感じざるを得ない。


 だってこれ、どう考えてもリサイクルショップでは……?


 冷静になって考えてみると、物を査定してもらってお金を得るという点では換金所とリサイクルショップは非常に酷似していると言える。


 異なる世界であっても、最適化された手段というのは自然と似たような形になってくるのだろうか。

 

 

 

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