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僅か数人の英雄が何百人を相手に戦うという物語を読んだことがあるだろうか?強大な敵に立ち向かうとても熱くそして、飽きるほど語られた剣と魔法の物語だ。しかし現実では一人の人間がどんなに強かろうと大人数を相手に戦いそして勝つなんてことは起きるわけがない...
私はそう思っていた。
だが私の目の前でそれは起きていた。広い荒野に響く悲鳴、怒声、そしてそれをかき消すように鳴る爆発音。この吹き荒れる嵐は死者の無念によるものだろうか。
私の部隊は総勢342名選りすぐりの精鋭たちだ。対して敵はたったの「四人」本来なら負けるはずのない戦、勝ってしかるべき戦。それなのに我々は押されていた。
彼ら四人の名は知らぬがこう呼ばれていた、転生者と。私たちとは本来、関わり合うはずのない世界から来た者たちだ。一人は一振りの大きな剣を振る黒髪の男、一人は強大な魔法を無尽蔵に放つ黒髪の女、一人は筒状の武器から不可視の攻撃をする黒髪の女、一人は兵士たちが人生をかけて与えた傷を一瞬の内に直す黒髪の女。別々の特徴を持った四人組によってこの地獄は作られていた。
「隊長!このままでは我々の部隊は!」
「分っている!」
そんなことは、わかっているんだ。だがこの最悪な状況いかなる指揮官でも覆せるはずがない。もうすでに兵士たちの約3割は死んでしまっている。負傷者は多数。部下たちは不安そうに私の指示を待っている。撤退しようにも進軍速度は少人数であるあちらのほうが圧倒的に早い、逃がしてはくれないだろう。
「ナターシャ、いるか?」
「は、はい此処に」
直属の部下の一人を呼びつける。短めに切りそろえられたブロンドカラーの髪の毛に、碧色の瞳、我々の部隊の紋章が描かれた大き目のローブ、そして魔術師を象徴する宝石を埋め込まれた杖を持つこの少女は部下でもあり唯一の弟子だ。今はまだ弱いが私以上に才能がある。それにこの戦いはこいつにとっての初陣だったのだ、こんな所で使いつぶして良い人材ではない。
「お前は帝都に帰れ」
「んなっ!私に逃げろっていうんですか!?私だって軍人の端くれ、最後までお供させて下さい!」
小さい頃はこいつもびくびく私の後ろをついてくることしか出来なかった小娘が言うようになったもんだ。できればもう少し見守ってやりたかったものだ。
「違う!この戦いの敗北を伝える者が要る。それがお前の役目だ。」
「わかり、ました...」
「他に戦えるものを三人連れて行け、馬は使い潰しても構わん」
ナターシャは直ぐに準備を整え馬にまたがった。
「師匠、今までありがとうございました。」
「早く行け」
ナターシャが馬を蹴るとその馬は鳴き声をあげ勢いよく走りだした。馬の足音が遠ざかっていく。嵐が降っているおかげでこの顔を濡らすものが涙か雨かわからない。
「アンバー様...」
部下の一人が悲しそうに見つめてくる。そんな、そんな顔をするなよ、私も逃げたくなるじゃないか...
「私が出る、あれを持ってこい」
私が指示を出すと待っていたかのように直ぐに持ってきてくれた。この黒光りする拳ほどの大きさの石は魔石と呼ばれているものだ。この大きさともなれば人が一人死ぬまで生きていくのに苦労しないほどの額はするだろう。それを私は服の内側にしまう。
「さあ、行こうか。一人ぐらいは道ずれにしてやろうじゃないか。」
私はフッと笑うと前線に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆
前線に近づけば近づくほど先ほどいたところよりも死の気配が色濃く広がっていた。ここに到着するまでの数分の間に更に兵士は減り残り半数ほどになっていた。だがもうやるしかない、残りの兵士を集めて一気に攻め込む。黒髪の剣士を突破して後衛を殺せれば、勝機を見出せるかもしれない。各分隊の隊長たちにはここに来るまでに合図を教えておいた。
「正面から戦っても勝ち目はないぞ!」
「回り込め!回り込んで常に死角を狙い続けるんだ!」
兵士たちが黒髪の男を取り囲み包囲しようとするが敵の魔法がそれを許さない。指示を出していた部下は不可視の攻撃によって撃ち抜かれ部隊はさらに統率を失う。
「なあ~こいつら倒しても倒しても沸いて出てくるんだけど~」
「油断しないで下さい!そろそろ何かしかけてきてもおかしくない頃です!」
四人組の会話がうっすらときこえてくる。一人はあの男に声だろうがもう一人は三人のうちの誰なのかは分からない。敵を視認、どでかいのを一発かましてやろう。手に持った杖に魔力を集中させる。
「炎よその姿、龍となりて我が敵を焼き殺せ!『火式魔術 猛り狂う龍の顎』」
杖を前に突き出し呪文を唱える。すると集まった魔力が炎へと変わり龍を模っていく、出来上がった巨大な炎の龍は叫び声を上げると│転生者共に向かって地面を抉りながら食らいつく。黒髪の女三人は直撃を免れたが剣士の男はもろに受けていた。吹き荒れる嵐などものともしない火力、常人ならこれを受ければただでは済まない直撃しようものなら骨も残さず塵と化す。いくら化け物だろうとこれをまともに受けて無事ではないだろう...
そう簡単にはいかないか。土埃の中から奴は再び姿を現した。多少ダメージは負ったみたいだが瞬く間に回復されてしまう。
「やっと隊長さまのご登場か?」
黒髪の男はこちらをキリッと睨んできた。
「魔術師アンバーの秘術とくとご覧あれ!無事で帰れると思うなよ転生者共」
大声で名乗り上げ奴らの気を引く、合図は出したここからがほんとの戦いだ。
「「「全軍、突撃ー!」」」
残りの兵士全員が一気に押し寄せる、流石にこの数は捌き切れまい。私は先ほどの魔術の代償で魔力詰まりを起こしたので暫くの間は魔術は使えない。魔力詰まりとは自分の身の丈に合わない魔術を使ったり、連続で使い続けることによって起きる魔症の一種だ。今の私は何もできないので次の一手のために準備をしておくとしよう。
「みなさん、ここが正念場ですよ!」
回復術師の女が声を上げる。白い修道服に身を包む女が行っている回復魔術だが普通は戦闘中に使えるような代物ではない。回復魔術とは祭壇を設置した上で生き物の血などを使って行わなければならない、それをあいつはいともたやすく魔力だけで使っている。
「分かってるわ!あれをやるから少し時間を稼いで!」
魔術師の女は、黒いローブに身を包みとがった帽子をかぶっている。あれだけの魔術を連続で放ち続けているのに依然として魔力切れや魔力詰まりを起こす気配がない。それに何かをしてくるつもりのようだ、最大限に警戒しよう。
岩陰に隠れて懐ろから小さな瓶に入った便獣の獣の血を取り出す。この獣の血は魔力をよく通すため魔法陣を描くのによく使われる代物だ。だが嵐吹き荒れるこの状況だと魔法陣一つ描くのにも一苦労だ、幸いその岩は風上にあるので少しは雨風を防げる。瓶のふたを外すと独特の血の匂いが漂ってくる、失敗は許されない。獣の血を垂らし魔法陣を描いていく。今まで27年魔術を極める為に色々なことを捨てその全てをその研究に捧げてきた、その集大成がこれだ。大規模殲滅魔術『閉ざされた小世界』これは一定範囲の空気を一時的に失わせる魔術、あの転生者共といえど空気がなければ生きてはいられまい。ここに来る前に部下から受け取った魔石を取り出そうとしたその時、急に岩の向こうから膨大な魔力を感じた。
「わが敵からこの身を守れ!『空式魔術 絶対城壁』」
目の前に魔力の壁が現れる。次の瞬間、今までにないほどの巨大な爆発音と共にに私以外の私以外のすべてが吹き飛んだ。
「くっ、、」
目の前の岩もなくなり土埃も晴れてきて視界が広がる。あの女だ、あの黒髪の女がやったんだ。土埃の向こうに見えるそいつを睨んだ。
「あれえ、生き残りがいるじゃーん。まさか私の魔法を耐えたのー?」
四人もこちらに気づいたようで私をを見ている。その中の一人、黒髪の男がこっちへとゆっくり近づいてくる。
「ち、近づくな!」
そう叫ぶと男は歩みを止めた。
「君、降参してくれないかな?」
男は剣を仕舞って私に向けてそう言ってきた。
私もよい作品が書けるように努力してまいりますので応援よろしくお願いします。<(_ _)>




