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「あ。乗り物です、乗り物! こうやって」
ターシャがバイクに跨がって見せた。
女が、眼を見張る。
「何とも勇ましい娘よな」
ターシャが大胆に脚を開いたことを言っているのだ。
ターシャは、いつもは平気なはずなのに、急に恥ずかしくなって、顔を赤らめた。
「これで走るのです」
ターシャが説明した。
「ほうほう」
女が頷く。
「馬のようなものか?」
「そうです、そうです」
ターシャも頷く。
「ちと、乗せてくれ」
女が言った。
「ええ!?」
ターシャが驚く。
隣で、奏も戸惑っている。
「駄目か?」
女が悲しげな表情を浮かべた。
心底、残念そうだ。
「いえいえ!!」
ターシャが慌てて、首を横に振る。
「もちろん、良いですよ。どうぞ、どうぞ。私の後ろに乗ってください」
「そうか!」
女が、ぱあっと笑顔になった。
まるで子供のようで、かわいらしい。
ターシャの後ろの席に、女が横座りする。
奏が、女の両手をターシャの腰へと回させる。
「しっかりと持っていてくださいね」
奏の言葉に、女が頷く。
ターシャがバイクを動かした。
「おお!!」
女が歓声を上げた。
ターシャはバイクのライトを点け、山道をゆっくりと何往復かさせる。
「こんな感じですね」
ターシャが言った。
「面白い」
女が笑う。




