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顎の辺りまでの銀髪。
肌は抜けるように白い。
美しい瞳と眉の間に、紫の染料を塗っている。
整った顔立ち。
紫の牡丹をあしらった、藍色の着物をすっきりと着こなしている。
浅葱色の帯の上には先ほどターシャが見た、赤い華。
両手には西洋の黒いレース手袋をしている。
右手にはキセルを持っていた。
女はターシャのバイクに視線を向けた。
その瞳が大きく見開き、好奇心に輝く。
「そこな、娘」
何とも言えず、耳障りが良い声でターシャに呼びかけた。
「は、はい!!」
ターシャが驚きつつ、答える。
女がターシャの側に寄り、バイクの座席に手を伸ばした。
そっと触れる。
「これは何?」
女の口元が笑っている。
ひどく興味を惹かれている様子だ。
「これはバイクという物でして」とターシャ。
「バイク…とな?」
女が、さらにしげしげとバイクを観察する。
「何をする物?」
女が訊いた。




