9/143
9
黒い楽器には細い帯が付いており、紅がそこに自らの肩を通す。
左手で棒の部分を握り、弦を指で押さえた。
右手で楽器の板から伸びた長い紐の先を掴み、うなじのほくろのひとつに荒々しく差し込んだ。
右手が板の上の弦に触れる。
紅が両手の指を素早く動かした。
ギュギュギュギュ。
楽器が甲高い音を響かせる。
紅が背中を後ろへ反らした。
ギュイイイイーーーンッ!!
呆気に取られていた骸造が我に返る。
「殺せ!!」
骸造が怒鳴った。
再び、魔雑兵が進みだす。
四人が一斉に紅に襲いかかる。
紅は向かってくる四本の刃を巧みにかわした。
恐ろしく速い動き。
紅は黒い楽器の帯を抜き、棒状の部分を両手で握り、振りかぶった。
一気に振り下ろす。
楽器の板の部分が一人の魔雑兵の兜に当たり、その下の頭ごと粉々に砕いた。
この楽器は、いかなる素材で出来ているというのか?
異常な硬度である。
紅は軽快な動きで疾り、次々と魔雑兵を打ち倒した。