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すさまじい銃撃音と共に黒楽器の弾丸が、刃八へと雨あられと降り注いだ。
黒山の魔雑兵を、あっという間に撃ち殺す黒楽器の銃弾である。
しかし。
刃八は両手の刀を素早く動かし、殺到する弾丸たちを叩き落とした。
両手をすり抜け、刃八へとたどり着いた銃弾も目的を達成することは叶わない。
刃八の胴体より生えた、無数の白刃が折れることなく、弾丸を弾き返すからであった。
恐るべし、刃八の刀の硬度。
「ぎゃはははっ!! 痺れる、痺れる!! 何て激しい女だ!! ますます惚れてきたぜ!!」
刃八が歓喜の声をあげる。
興奮で、てらてらと光る双眸が紅の顔、身体を舐めるように見つめた。
紅は太鼓を乱打し続けるが、やはり刃八には、かすり傷ひとつ負わせられない。
それどころか、刃八は紅たちに向かって歩を進めてくる。
紅が両手を止めた。
「お」
刃八が言った。
「何だ、終わりか? 諦めて、オレと抱き合う気になったのか?」




