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慌てて、黒楽器を刃八の刀から離す。
「くっ!!」
紅が、うめく。
黒楽器の刃が全て欠け、破損していたからだ。
「あっははは!! さあ、観念しろ!!」
笑うやいなや、今度は刃八の魔具足の胴体前面から、無数の刃が飛び出した。
通常の刀の半分ほどの長さの刃が、大量かつ不規則に並んでいる。
「最高に熱い抱擁をしようぜ!!」
刃八の身体が、紅に向けて跳んだ。
両腕を広げ、紅を自らの胸に抱きしめようとする。
黒楽器を吹き消した紅は後方へ退がって、この致命の愛の告白をかわした。
「おいおい、つれないじゃねえか!!」
刃八が、舌をべろりと出す。
紅が着物をはだけ、背中を露出させた。
「どどどどっ!!」
「おい、今度は何だ!?」
刃八が驚きの声をあげた。
しかし、何やら余裕で、楽しそうではある。
「弩羅武!!」
紅と響が、黒楽器の台の上に跳び乗った。
紅が太鼓の後ろに座る。
両手の木の棒で、おもむろに太鼓を乱打し始めた。




