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「義躱鴉!!」
黒楽器を掻き鳴らす紅が、魔武士の前へと立った。
「お!?」
魔武士が瞠目した。
「オレとやるつもりか?」
楽しそうに笑う。
「ますます、気に入った!! それでこそ、オレの女に相応しい!!」
魔武士が両腕を勢いよく振った。
すると。
瞬時に、その両腕が両刃の刀の如き形状へと変化した。
魔武士が両手を振り上げ、紅に突きかかる。
黒楽器より飛び出した刃が、高速で回転し、魔武士の刃を受け止めた。
両者の刃の威力は互角か。
激しい火花が散った。
「やるな、女!!」
魔武士が笑う。
「この刃八の刀と張り合うとは!! 女、名を教えろ!!」
「紅」
刃八の問いに、紅は短く答えた。
「紅か! 良い名だ! オレの女になれ!!」
紅が、かっと刃八をにらむ。
「うるせー!!」
吼えた紅が、黒楽器を押し込むと。
激しい異音が響いた。
紅は、はっとなった。




