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そこには、すでに魔武士たちの姿は無く、紅と正雪の折り重なった動かない身体だけが映っている。
「なるほど」
武丸が言った。
「復讐というわけか」
紅はあえて、自らの心情は語らなかった。
黙って武丸を見つめる。
武丸の口元が、やや緩んだ。
「お前は強い心を持っている。私の姉上を思い出す」
「………」
「いいだろう」
武丸が頷いた。
「お前に魔武士たちと渡り合える力を与えよう。そうだな…」
武丸が、顎に右手を当てる。
何かを思案しだした。
「私がこの前、別の時代で観てきたものを取り入れ、お前に授けよう。新しい身体と、その力で存分に魔武士と戦うがいい」
「………さん」
「………」
「紅さん」
「………」
「紅さん、どうしました?」
ターシャの呼びかけに、紅は現実へと引き戻された。
ターシャが紅の顔を心配そうに覗き込んでいる。
「そうだね…」
紅が口を開いた。
「簡単には説明できない」
「そうですか…」




